ダイの大冒険二次・捏造魔界編 第二十七話 ラノの疑問

 オーシャンクローの一族を上げての引っ越しは意外に早く片付いた。古い棲み処を処分したあとなので、荷物も多くはなかった。
 ラノは、むしろワクワクしていた。もともと家族はなく、故郷の島では似たような境遇の獣人たちとつるんでいたが、この隠れ家ほど人口が多くにぎやかなところに住むのは初めてだった。
 隠れ家は、隠れ家と呼べないほど大きかった。避難のために集まった種族の中で土木系の技術を持った者たちが、地底の空間を大きく広げてくれたという話だった。同じ種族がドックを拡張して、箱舟は今、主にそちらで造っているとラノは聞いていた。結果として、島の中の地底海の周辺には家々が立ち並び、小さな町ほどの人口が住むようになっていた。
 この避難民の町にはクロコダインの言った通り、さまざまな種族が集まっていた。魔界育ちのラノでさえ知らなかったような住民も見かけた。
 ラノが歩いていたのは、あちこちから来た避難民が出身地から持ち込んだ品物を路上に並べて物々交換をする、一種の市場だった。呼び込みや値切りの交渉の声が飛び交い、かなりやかましかった。
 値切りと言えば聞こえはいいが、チカラに物を言わせて商人から品物を奪い取ろうとする者も多い。
「まあここも魔界だからな」
と、ラノはつぶやいた。
 どこからか、太い声が聞こえた。
「んっ、ふふ、思ったよりうまくいったようだ」
 クロコダインだ、とラノは思った。通りを一つ曲がると、思った通り鎧を着けた巨体が目に入った。連れと話しながらこちらへ向かってくる。
 クロコダインが話している相手にラノは見覚えがあった。
「あいつ、ポップとかいう魔法使いだ」
 クロコダインもポップもラノがいることに気付いてないようだった。ラノは路地の間に身を隠した。
「ごめんよ、ポップ、おれが手伝いに行かれればよかったんだけど」
 もうひとり連れがいた。ポップと同じくらいの年格好で、ニンゲンの男らしかった。
 ポップは顔の前で手のひらを振った。
「ムリムリ、ゲートキーパーが魔界の出入りを人数日数フリーにしてくれたのは、竜の騎士の元に集うなら、って条件付きじゃねえか。おめぇが地上へ行っちまったらそれがだいなしになるんだ」
 クロコダインは爪先でキメラの翼をはさんで持ち上げた。
「このキメラの翼の行先は、ダイ、おまえが持っている目印なのだからな。おまえが地上へ出たら、オレたちが魔界の隠れ家へ戻れなくなる」
とクロコダインは言った。
 ダイと呼ばれた若者はやっとうなずいた。
「わかったよ。地上のみんな、元気だった?」
 ははっとポップは笑った。
「あっちこっち飛び回ってたんで、みんなの顔はあんまり見てねえんだ。でも地上は変わりなさそうだ。アバン先生はあいかわらずカールで会議だし」
「あれ、キメラの翼で地上へ戻る時は、先生が持ってる目印が目標なんだよね?」
「今はマトリフ師匠が預かってるってよ」
「そうなんだ」
 ときに、とクロコダインが言った。
「集めてきた……コレのことだが、どこへ保管するつもりだ?」
 クロコダインは二人のニンゲンの前に、大きな手のひらを広げてみせた。ポップがぎくりとしてあとずさった。
「わっ、うわっ、おっさん、用心してくれっ」
「おお、悪い、悪い。なに、落としはしないさ」
 遠目で見る限り、クロコダインは手のひらに金属の筒のようなものをいくつか載せているようだった。
――魔法の筒だ。
 この隠れ家の町で暮らしているとしょっちゅう目にする。驚くほど大量の荷物を収納して持ってくることのできるアイテムだった。
「この状態で落としたって、いきなりドカンはないはずだ、理論上は。影響があるのは、物理より魔法力だからな。でも、とにかく心臓に悪いぜ」
そう言ってポップはつばを飲み込んだ。
「とりあえず、岩堀の魔族が預かってくれることになってる。三人いるんだから、二つずつ持ってこうぜ」
とポップが言い出した。
「おれが二個、ダイも二個だ」
「残りはオレが持っていこう」
 三人とも妙にぎくしゃくした足取りで歩いていった。
「あ、手汗ですべる」
「バカおまえっ、ふざけんなよっ」
「いざとなったら竜闘気で……」
「縁起でもない、やめんか」
――なんだ、ありゃ?
 心の中でつぶやいたつもりが、声に出てしまっていた。クロコダインが振り向いた。
「おお、ラノか」
 あ?とポップが言った。
「いつぞや絡んできたリカント野郎じゃねえか。そっか、おまえも魔界脱出組か。ダイ、こいつがラノだ。前に岩堀の里で勝負したやつ」
 ようやくラノの中で、うわさの竜の騎士とダイという若者が結びついた。
 戦士の体格の持ち主でポップより少し背が高く、やや硬そうな黒髪と大きな目をしている。本当は竜魔人になれるはずなのに、なぜかヒトの姿をしていた。魔界の常識から言えば、わざと“なめられる”ような外見をとることにほとんど意味はない。侮られても不思議はないのに、竜の騎士ダイは堂々としていた。
 それじゃあ、とラノは言った。
「おまえの最高の友だちは、竜の騎士なのか?」
 ダイは明るい笑みを浮かべた。
「そうだよ!おれがダイ、ポップの友達なんだ。ラノ、今度ゆっくり話したいね」
「さすがに今はやめとけ」
「そうだね。今日は手の離せない用事があるんだ、また今度ね」
そう言って二人は背を向けた。クロコダインも、喉の奥で低い笑い声をたてて、行ってしまった。
「おい、あいつらと知り合いなのか?」
 いきなり声をかけられて、ラノはふりむいた。
 この隠れ家には、魔界脱出希望者がすべて集められている、とラノは聞いていた。
 オークのオークス、オックスベアのウマル、サイ男のブルートそしてグリズリーのマット。
 以前つるんでいた獣人仲間がそこにいた。オークスたちは、にやにやと笑っていた。その笑顔におぼえがあった。誰かいじめてやろう、何か取り上げてやろう、そんなことを企んでいる表情だった。
――あらためて見るといやなツラだ。
「おまえらか。久しぶりだな。別に知り合いってほどじゃねえよ」
「そうかあ?やけに親しそうだったじゃねえか」
 熊のマットは上目遣いになった。
「あいつら、本気で魔界からオレらを逃がす気なのかね?」
「そうらしいぜ?」
 獣人たちはいっせいに笑い出した。
「いやいや!そりゃねえだろ」
「何の見返りも無しにか!」
「ねえよ、ねえ!」
 マットは息がかかるほど顔を近づけた。
「なんか、あんだよ、見返りが」
「知らねえな」
 マットは舌なめずりした。
「ほんとか?ラノ、ほんとは知ってんじゃねえのか?」
「しつこいな。知らねえって」
 ラノはうんざりしていた。だが、この魔界ではおそらく獣人たちの感覚の方が正常なのだと思い当たった。ある意味自分は“毒されて”いるらしい。
「オレたちの仲じゃねえか。教えてくれよ」
 ねだるような甘えるような口調で、だが目をぎらつかせてマットは言った。
 そうだ、そうだ、とオークスがあおった。ねっとりした声でブルートが言い始めた。
「オレたち、ずっと仲良くやってきたじゃねえか。甘い汁の独り占めはよくないぜ」
 こいつらと最後に会ったのはぬすっとうさぎの村でのことだった。そして、そのとき武闘家の女に全員ぶちのめされ、やつらはラノを残して逃げ出していた。
「仲良くやった?ふざけんなよ」
そう吐き捨てた。
 マットがいきなり肩をつかんだ。
「逃がしゃしねえよ。いいか?あいつらが何を目当てにしてるかわかれば、オレたちにも甘い汁のおこぼれが回ってくるはずだ!」
 ラノはマットの手を振り払った。
「じゃ、一生おこぼれを待ってんだな。オレの知る限り、あいつらの目的は正々堂々の魔界脱出、それだけだ」
そう言ってラノは背を向けた。後ろから獣人たちはまくしたてた。
「そんなん、信じられるかっ!」
「もし違ったら責任取れよてめぇ!」
「すっかり地上もんにたぶらかされやがって!」
 フン、とラノはつぶやいた。
「そうかもな。けど、オレはあいつらを信じてるんだ」
 背後からマットの大声が追いかけてきた。
「おまえ、だまされてんだよ!ほんとにあいつら、信じられんのかっ!!?」
ラノは無視して歩き続けた。
「おまえがあいつらのことを信じたって、あいつらはおまえのことを信じてくれんのかよ!」

 その日から数日のあいだ、ラノはずっと考えていた。
――ほんとにあいつら、信じられんのか?
 自分の頭がいつのまにか、魔界ではなく地上の感覚になじんでいたのは本当だとラノは思う。最初はポップだった。それからクロコダイン、そしてその仲間たち。あいつらは信じていい、魔界の住人をだましたりしていないと、思っているのだが、なぜかラノはこの件が頭から離れなかった。 
「考えて見りゃ、竜の騎士のことはよく知らないんだな、オレは」
 結果、ラノは毎日避難民の町をうろうろして、ダイを探すようになった。探してどうこうするわけではないのだが、ラノは、自分は間違っていないと納得したかったのだ。
 ダイはこのごろポップと一緒に隠れ家から出かけていることが多かった。なんでも“罠を仕掛けている”らしい。朝出かけて、暗くなってからへとへとになって戻ってくる。
「トベルーラを使えないと、疲れるよな」
「うん。ラーハルトがドラゴン貸してくれてよかった」
「やつが地上から戻ってきたら礼を言っとくわ。あ~、明日から『川』の仕上げだ」
「おれも行くよ」
「おいおい、竜の騎士様がふらふら出かけていいのか?」
「ちょっとの間だよ。岩堀の人たちといっしょに行くんだろ?」
「大仕事だからな。岩堀たちと、その手伝い連中」
「それじゃなおさら、用心棒がいるだろ」
 そんな話をしながら宿舎に引き上げていくのを見たことがあった。
 何日かたって、ラノは町中でブルートとマットを見つけた。というよりも、身体も大きければ声もでかい二人がさかんに怒声をあげていたので、いやでも目に入った。
「ふざけんじゃねえぞっ」
「てめえがノロマなんだよっ」
 ブルートがでかい足を高く持ち上げ、何か踏みつけようとした。悲鳴があがった。誰かが両腕で頭を抱えてうずくまっていた。
「あいつら!」
 だがラノより一瞬早く、何か飛び込んできてブルートの足を下からすくいあげた。
 伸縮する長い棒だった。その得物と持ち主にラノは心当たりがあった。
「まーたてめえらかっ。この避難所で騒ぎ起こすんじゃねえっ!」
 魔法使いのポップだった。
 背中から引くりかえったブルートがわめき、マットがその後ろから罵倒している。あれ、とラノは思った。ブルートとマットにどつきまわされていたのは、同じ獣人仲間でオックスベアのウマルだった。
――仲間割れかよ。
 そう思ってラノはうんざりした。
 誰かがうずくまるウマルに声をかけた。
「大丈夫?」
 ウマルは目をぱちくりして、相手を見上げた。ダイがその前に腰をかがめ、手を差し出していた。
「ああ、その」
 もごもご言いながらウマルはダイの手をつかんで立ち上がった。
「ポップ~、このひとにも頼んでみようよ!」
 はあ?と言いながらポップが振り向いた。
「おまえ、よりによってこんな」
と言いかけて肩をすくめた。
「まあ、いいや。ダメでもともとだ」
「おいシカトこいてんじゃねえぞっ」
 後ろでマットたちが、まだがなりたてていた。
 その大声で、ダイたちの声がよく聞こえなかったが、ニンゲンたちはその罵声をほぼ無視していた。
「……もしやってくれたら、何かお礼をするよ」
 ぬっとブルートが顔を突き入れた。
「なにっ、儲け仕事か?オレたちも」
「あ~、いいぜ?」
とポップが言った。
「真っ先に見つけた奴に、次に地上から来る物資の中から好きな食い物をやるよ」
 その宣言に、あたりにいた魔界の住民たちが目の色を変えた。わらわらとダイとポップの周りに集まってくる。その中に見慣れた姿もあった。
――ぬすっとうさぎじゃねえか。
 黄色いあらくれマスクをかぶったぬすっとうさぎたちが、ダイたちを取り囲んでいた。身長差のために、ダイたちは子供たちの真ん中にいる大人のように見えた。気まずい気がしてラノは一歩引っ込んだ。
「じゃあ、あとでニンジンあげるよ」
 その条件でぬすっとうさぎたちは了解したらしい。四方八方へ散っていった。
「あいつら、ちゃんと探すかな」
 そばでポップが腕組みして立っていた。
「疑う理由はないだろ?それに、探すなら人手が多い方がいいよ」
 あどけないほど天真爛漫な表情でダイはそう言った。相棒のポップでさえ、呆れたような表情になっている。
「魔界でも毒気抜きまくりだな、おまえ」
 陰でいきさつを見ていたラノも同感だった。
――ほんとにあいつ、竜の騎士なんだろうな……?
 オレの知ってる伝説と違う、とラノは思っていた。
「とりあえずやつら、何か探してるみたいだな」
 数日後、その結果がラノ目の前に現れた。
 黄色いマスクのちびが、けっこうな勢いで通りを走っていく。そのあとをダイとポップが追っていた。
 街角を指さして、ぬすっとうさぎが興奮している。そこにいたのは暗赤色の魔女服と魔女帽子の、ひからびた女の魔族だった。大きなわし鼻の上の細い目が、じろりと動いた。
「やっと見つけたぜ。なあ、おれたちの話を聞いてくれよ」
 ずかずかとポップが近寄り、話しかけた。後ろからダイがついてきた。
「メドナさん、あなたは特別な呪術を使えるって、ヒムに聞いたよ。おれはダイ。ポップがその術のことを知りたがってるんだ。教えてくれませんか?」
「ふ~ん、竜の騎士様ってのは、あんたかい」
とメドナというらしい魔法おばばは言った。
「あんたになら教えてやってもいいが、ニンゲンはお断りだよ」
「どうして?」
 はぁ?とメドナは大声を出した。
「どうしても何も、なんであたしがニンゲンなんぞに大事な術を教えてやらなきゃならないんだい」
 それは魔界の常識だった。たぶん、ダメだろう、そう思ってラノは首を振った。
「おれたちには必要なんです」
そう言いながら、ダイはちらっとポップを見た。
 こほん、とポップは咳払いをした。
「魔界脱出のために、その技を教えて欲しいんだ、頼むよ……」
そう言ってからやや間をおいてポップは付け加えた。
「……お嬢さん」
 ん、とメドナはつぶやいた。へんな咳をひとつして、言い出した。
「そ、そうだね、まあ、必要だって言うんなら、教えないでもない」
 よそのほうを向いて、メドナはさかんに咳払いをしている。その目の下のあたりが赤くなっていた。
 魔族の年齢は、見た目よりずっと年上であることが多い。成人になった時点でもう二百年ぐらい生きていたりする。逆に、見た目よりずっと若い種族もいる。この魔法おばばもその一種なのだろう、とラノは思った。
「ほんとかっ?」
 ダイとポップは顔を輝かせた。
「身代わりの術だよな?モシャスの応用にメダパニを上乗せした感じか?」
 早口にポップはたたみかけた。
「そんなとこさね。誰の身代わりを造りたいんだえ?」
 あ~、と言いながら、ダイとポップは顔を見合わせた。
「あのメドーサボールにとって苦手、とか怖い、みたいな相手の幻を作り上げたいんだ。それを見せればあいつが逃げ出すくらいの。そうすればおれたちの船団が離水発進しやすくなる」
 メドナは首を傾げた。
「メドーサボールが怖がるだって?そんな相手が魔界にいたかね?」
 ポップが左手のひらに右手の拳をうちつけた。
「そうだ、あれだ、あれ。大魔王バーン。これなら絶対効くはずだ」
 ひぇっとメドナは首をすくめた。
「なんて畏れ多いことを……。第一、あたしの身代わり術には、幻の本体、この場合バーン様の体の一部が必要なんだよ、血とか涙とか、そうでなけりゃ髪の毛、爪の切りくずみたいな」
「冗談じゃねえ、そんなもん今さら残ってるわけねえだろ!」
 天を仰いで嘆きかけて、ポップは急に振り向いた。
「ダイ、おまえが今持ってるパプニカのナイフ、たしかバーンの血を吸ってなかったか?」
 ダイはベルトから、刃渡り長めのナイフを取り出した。
「これのこと?たしかにそうだけど」
 あ、あんた、とメドナが口走った。
「おっそろしい……竜の騎士ってのは……。ああ、バーン様の血があればしっかりした幻が出せるよ。若いの、あんたに教えてやる」
「ありがとな!ば……お嬢さん。けど、このナイフで大魔王に斬りつけたのは、ダイじゃなくてお姫様だぜ、たしか?」
「とんでもないおてんばだえ」
 あ~、とダイは言った。
「もしかして、呪術に使っちゃったら、このナイフもとに戻らないんじゃない?おれ、レオナにこれを返すって約束しちゃったから」
 ポップはかるく頭をかいた。
「そうか、それじゃ、呪術に使うわけにいかないな。それに今思ったんだが、このナイフの血をつかったら、あのバーンの幻が出てくるよな?」
 ダイはうなずいた。
「あのメドーサボール、あのバーンは見たことないよね、たぶん」
「だよなあ。あいつが怖がるのはまず老魔王のバーン、それとミストバーン、次点で、ダイ、おまえだ」
「おれ?怖がってくれるかなあ。でも、おれだったら、髪の毛ぐらいすぐにあげられるよ」
 メドナは肩をすくめた。
「話がついたんなら、さっさと始めようじゃないかえ」
 メドナはぶつぶつ言いながらパプニカのナイフをのぞきこんだ。
「おや、これは……どっかで見たことがある」
「ほんとかぁ?」
 ポップは疑いの口ぶりだった。
「そいつは世界に三振りしかないナイフのひとつなんだぞ?市販品といっしょにすんな」
「やかましいガキだね!でも、見たことがあるよ。この魔石の色が違うけどね」
「メドナさん、それ、何色だった?」
 妙に真剣にダイが尋ねた。
「たしか、青かったね」
 ポップ!とダイが叫んだ。
「真魔剛竜剣にぶつけて壊しちゃったナイフが赤の“太陽”、今持ってるのが緑の“風”だ!でも青は」
 ポップが続けた。
「先代パプニカ王の持ってた“海”か!メドナさん、あんたそれ、いつ、どこで見た?」
 メドナは記憶を探る表情になった。
「だいぶ前さね。まだ黒い海もそれほど上がってこなかった時分さ。山ン中に、冥界と魔界の重なる場所があったんだよ。時々そこへ行くと死者の持ちものが転がってるんで拾いにいったのさ、値打ち物が見つかることもあったからね……でも一族に見つかって取り上げられたよ。まだあいつらが持ってるかもしれないねえ」
 なあ、とポップが聞いた。
「なんであんたは一族に捨てられたんだ?」
「ああ?理由なんてないさ。魔女たちは、必ず一人仲間外れを造らないとお互いやっていけないんだよ。たまたまあたしがその仲間外れになっただけさ。しょうがないだろ、魔界だもの」
へっとメドナは笑った。
「だから、あたしという仲間外れがいなくなって、魔女の一族は別の仲間外れを造らなきゃならなかったはず。そうやって仲間内でず~っといがみ合ってきたのさ。あいつら、避難した先でどうなったかねえ?」