るどまんさん

DQ版深夜の真剣文字書き60分一本勝負(第七回) by tonnbo_trumpet

 サラボナで自営業を営む既婚男性です。妻とは幼なじみで、お互い納得の上で結婚しました。子供は女の子の双子です。と言ってももう年頃で、下の娘は縁があってとある若者と結婚することになりました。
 私は、その、わかっていますとも。いつまでも親が元気でいられるわけじゃない。信頼できる若い世代にかわいい娘を託して安心したいと思っている……と思っていたのです。それなのに、いざ娘婿候補が現れると、私がやったことは正反対でした。
 屋敷に呼びつけてお茶も出さない、ペットを家につれてはいるのを禁止(娘の飼い犬はOKなのに)、質問無視、相手の人格疑いまくり(「どこの馬の骨~」)の暴言連発……。極めつけはとんでもないところにある水のリングと、確実に死にそうなところにある炎のリングを取りに行かせたことです。
 下の娘は、黙々と仕事をしてくるその若い旅人に好感を持ったようですが、私は悶々としていました。とうとう上の娘に「パパ、ばればれ」と冷たく言われてしまったり。
 婿候補はちゃんと二つのリングを持ってきました。ついでに、美人の幼なじみを引き連れてきました。
 どうすりゃいいんですか、私は!
 娘が結婚しちゃったら、私じゃなく婿があの子と幸せや悲哀を分かち合うんです。もうあの子が苦しいときに助けてやるのは私じゃないんです。
 ふと魔が差したのは、そんな苦悩の為せる業にちがいありません。
「そちらのお嬢さんは?」
土壇場もいいところで、この婿候補がうちの子を選ばないでこの美人を選んでくれれば、なんぞと私は願ってしまったんです。
 気がついたら私は彼に三人の女性の中から一人を選ぶように迫っていました。さすがにその場では無理で一晩おくことになりました。
 嗚呼……
 夜になってみなを休ませたあと、家内がほほえんで言うのです。
「あなたもやっと世間並みの父親らしいことを言うようになりましたわねえ」
妻に言わせると、犬猫じゃあるまいし自分の娘をさっさと他人に押しつけたがるなんてちょっとおかしいんじゃないかしらと思ってましたって。
 そんなに変でしょうか。婿殿は若いのに立派な男だと思います。なにせ私が見込んだのですから。
「それなら別に、フローラをやってもよろしいでしょ?デボラでも」
でも~でも~
「おだまんなさい」
そう、やっと思い出しました。二十年ほど前、私もまた家内の父親に睨み殺されそうになりながら彼女に求婚したのです。
「ね?そういうものなのですわ。あの若い方の選択がどうなろうとも、それはマスタードラゴンの思し召し。そう思って早くおやすみなさいましな」
 ひ~。
 そんなこと言われたって、どうにもこうにも眠れません。さっきから寝室の花瓶の花を引っ張り出して、花びらをいっこづつむしっています。フローラ、デボラ、ビアンカ、フローラ、デボラ、ビアンカ、とつぶやきながら。
 この屋敷のどこかで誰かが同じように花占いをやっているような気もするのですが、気のせいでしょうかねえ?

(男性 四十八歳 サラボナ)