ヘンリーのゲーム 13.割れた大皿

 教団とその教えに疑いを持った者、または反抗した者は、誰であれ教団に、というよりは教団内の元の地位にとどまることはできない。隊長にとってヨシュアは愛弟子であり先の楽しみな部下だったのだが、隊長は一瞬で判断してヨシュアを切ったのだった。教団から切られた元信者は、処刑されるのが普通だった。
 隊長はナタンたち兵士に声をかけた。
「逮捕しろ。裏切り者だ」
「え」
兵士たちは、小隊長を逮捕するのはさすがにためらった。
 視察に来ていた高僧が声をかけた。
「まあ、待ちなさい、隊長。きみの隊から処刑者を出すというのは外聞もよろしくない。罪をひとつ減じてはどうだ」
どうやらその高僧は、隊長とつながりのある上位者らしい。系列の下の方で処刑があったというのは、自分にもつながる失点なのだろう。隊長は明らかにほっとした。
「ならば、奴隷として、自分の罪を償わせましょう」
今度はヨシュアがうっと言った。元兵士の奴隷が、奴隷仲間からどんな目にあわされるか、誰でも容易に想像できた。
「申し訳ありません!」
いきなり叫び声があがった。若い女の声だった。
「大事なお皿を、私、割ってしまいました!」
神聖侍女のお仕着せをつけた娘だった。娘と言うより少女のようで、割れた皿の破片の前にひざを突き、唇をふるわせて必死の面もちで高僧たちを見上げていた。
「マリア!」
高尼僧に仕える侍女としてマリアはその日、視察に随行していたのだった。
「兄さんは黙ってて!お許しください、この身の奉仕をもってお皿に替えさせてくださいませ」
「やめろマリアっ」
だがヨシュアはあいかわらず隊長に腕を捕まれたままだった。あがくヨシュアを抑えつけながら、隊長は自分のボスの高僧と視線を交わした。無言の内に、彼らは生け贄の交換を決断した。
「誰か、その娘を捕らえなさい」
高僧はそう命じた。兵士たちは今度は躊躇しなかった。マリアはその場にたたされ、両手を腰の後ろに回されてうなだれた。
「おまえの壊したお皿とろうそくは、教団と信者のわかちあうべき光そのものです。自分の行いを悔い改めるために、大神殿建設に加わって奉仕しなさい」
うなだれていたマリアは、顔をあげた。その視線が、こちらのほうを見ているモンスターの現場監督と、その下で働かされている奴隷たちに向けられた。澄んだ強い視線だった。同じ視線が、自分を奴隷に落とした高僧へ向けられた。一瞬、高僧の方がひるんだ。
「はい」
従順にそう答えて、マリアはむしろ、胸を張った。

 神聖侍女を奴隷に落とす儀式は残酷だった。マリアは後ろ手に縛られたまま、地下洞窟のごつごつした岩床の上、牢の前に正座させられていた。
 女奴隷の入牢のときとすべて同じく、兵士の一人がマリアの髪をつかみ、大ばさみで短く刈り上げた。膝のまわりに散乱する細い金の髪を、マリアはじっと見据えていた。
 別の兵士が、マリアの身につけていた神聖侍女のお仕着せの後ろ身頃の部分を縦に裂いて、背中をむき出しにした。地下洞窟をふきすさぶ風はひどく冷たい。上半身裸にされたマリアは一瞬ふるえた。その背中に、たき火の中で灼熱に焼いた焼き印を兵士はあてた。
「ああっ」
きゃしゃな体がのたうち回ろうとする。兵士たちは容赦なくマリアの体を岩床に押さえつけ、熱い鉄を肌に押しつけた。たまらずにあげる悲鳴の中に人肉の焦げるにおいがまざった。
「あいつら……!」
岩牢の鉄格子を通して、奴隷たちはその姿を見ているしかなかった。
「えらい人の侍女なら、仲間じゃねえのかよ」
「あの子は切られたんだよ、かわいそうになあ」
少し離れたところから、別の声がした。女子牢だった。
「あんたら、つららを集められるかい?こっちへよこしとくれ」
ルークたちが眠る場所の壁にある岩の上げ戸には、ときどき外側につららが下がるのだ。教団の者たちは魔法で大神殿建設現場の気温を上げているが、がけ下はその範囲ぎりぎりだった。
「背中の焼き印は今晩気が狂うくらい痛むだろうからね。ちょっとでも楽にさせてやりたいよ」
尊厳もプライバシーも女奴隷には与えられない。息も絶え絶えの身体から兵士たちは服も靴もはぎとり、むしろでできた奴隷の服一枚を投げつけた。
「おい、首輪だ」
「今持って行く」
そう答えたのはナタンだった。奴隷用の首輪を手にしてマリアに近寄った。
「どうだい、マリア。しまったと思ってるだろ?」
ナタンは、むしろ優しく話しかけた。マリアは半身起こし、服を体の前で抱きしめるようにした。
「似たもの兄妹だな。正義派の兄貴と、人のよすぎる妹。ご立派、ご立派。でもその結末がこれじゃな?」
ナタンは小声で話しながら、マリアの細い首に冷たい鉄の首輪をまわして留め金を締めた。
「兄貴が心配かい?隊長さんがお説教してるよ。ただし小隊長からヒラに格下げは決定だ。おれたち、賭をしてるんだ。あいつがどんな顔で説教部屋から出てくるか。あの正義派がなんと妹を身代わりにしちまったんだから」
くすくすとナタンは笑った。
「兄があなたに、何かしたのですか」
途切れ途切れにマリアは言った。
「いや?何も。おれはただ、ヨシュアが壊れるのが見たかっただけさ。ヨシュアの奴、いつでも世界は完璧、教団のやることは全部善し、自分は絶好調、おまえ何が不満だって顔なのさ。だから見たくなったんだ、あいつが絶望して教団を見限るのをね」
背後から兵士たちが呼んだ。
「まだか、ナタン?」
「今終わるよ」
のんびりとそう答えてまたナタンはささやいた。
「ヨシュアはなんとか自分を納得させて教団に残るかもしれない。そうしたらあいつ、奴隷になった妹が重労働するのを監視することになるんだ」
ナタンはうれしそうに言った。
「マリア、重労働がいやなら、水くみ女にならないか?きみは若いしかわいいからね。少し兵士に媚びれば簡単になれるよ。男に媚びるってどうやるかわかるだろ?そんなところ兄貴に見せられないって?大丈夫、妹が汚れていったほうが、ヨシュアも気兼ねなく堕落できるってもんさ」
マリアは唇を引き結び、ナタンを見据えながら服をかかえてよろよろと立ち上がった。
 開けろ、と声がかかり、岩牢の狭い入り口を仕切る鉄格子が開いた。焼き印の跡も痛々しいマリアはその中へ入っていった。
 誰かがつぶやいた。
「なんていやなやつだ!」
岩牢の中だった。ナタンがマリアにささやいたことは、岩牢の鉄格子のそばにいればすべて聞こえていた。兵士たちがその場を片づけ、卑猥な冗談を飛ばしながら詰め所へ戻っていくと、奴隷たちは口々にささやいた。
「友達がご立派ならご立派でいいじゃないか。あいつこそ、何が不満なんだ」
「しかも妹の方は何の関係もないだろうが。巻き込んでんじゃねえよ」
奴隷の赤毛が吐き捨てるように言った。
「あいつずっと猫かぶってたわけか。本物のくずだな!」
「見損なったよ」
と目細が言った。
「あんなやつだと思わなかった。わからねえな、どうしてあんなこと考えますかね。ね?」
隣にいたヘンリーは、しばらくの間黙っていた。
「わかるよ」
とぼそりと言った。
「妬みだ」
ナタンがマリアに嬉々として自分の陰謀を語っている間、ヘンリーは両手で顔を覆いたいような気持ちだった。
 ナタンはまるで、ヘンリーの秘密を暴き立てたようだった。ヘンリー自身にもそういう友達がいたのだから。世界はOK自分もOKの、人がよすぎる性格の友達が。
 自分はナタンと同じように嫉妬したことはなかったか。
 ルークと比べて自分という人間の小ささに絶望したことはなかったか。
 自分の同じ水準へ引きずりおろしたい、と願ったことはなかったか。
「おれは……おれも……」
 突然、あたたかいものが背中に貼りつき、心地よい重みが肩に乗った。
「ヘンリーは違うよ」
ルークの声だった。ヘンリーはとっさに歪んだ顔を背けた。
「バカ、おまえ、のぞくなよ」
俺の心の中を。
 肩にのせた顔をぎゅっとルークはおしつけた。
「きみはぼくの親分だもの。でしょ?」
寒風の吹き込む岩牢の中、ごつごつした岩床にあぐらをかいて、ヘンリーはじっとすわっていた。そのうしろで膝立ちになり、背に貼りつき、両手を回してルークは抱きついていた。
「おれは嘘つきだぞ」
「知ってるよ。でもナタンとヘンリーは違うよ」
ルークの吐く暖かい息がよく聞こえた。しばらく聞いてから、やっと声を出せた。
「そうだな……ナタンとおれは違う。ヨシュアもおまえとは違う」
「そうかい?」
「あいつとおまえじゃ、同じものを見ても目に入るもんがまったく違うんだ」
もう一度、ヨシュアとナタンのことを考えた。引きずり落とすことしかできないナタンは、高みへ上ることはできないのだ。
「哀れなやつだ」
ぽつりとヘンリーはつぶやいた。

 いつのまにか、十年がたっていた。ルークは十六歳だった。その歳月の間、ほとんどなかった状態が岩牢に訪れていた。奴隷たちは不思議なくらい熱くなっていた。
 兵士や奴隷監督が元神聖侍女をいたぶるやり方は、感情が麻痺しかけた奴隷さえかっとなるようなものだった。いや、そのような奴隷だからこそ、マリアには感情移入してしまうのかもしれなかった。
 女子牢は男の奴隷たちのいるところと同じく、勢力争いも奪い合いもあった。けして和気藹々とした集団ではなかったのだが、マリアに関しては一致していた。
「私、ずっと前から知ってたんです。教団のためにひどい重労働をしている人たちがいるって。それなのに私、何もしなかった。お許しください、マーサ様。私も働きます。みなさんと同じ重荷を負いたいです」
「あんたって子は」
女子牢の牢名主はタフで現実的な中年女だったのだが、その女でさえ言葉を失った。
「いいかい、兵士たちがいるとこじゃあたしらは表向きあんたをかばってあげられない。でもこの牢へ帰ってきたら、泣いていいからね」
今まで気丈にふるまっていたマリアが、そのときさっと顔をゆがめ涙をあふれさせた。その顔を女牢名主の肩に押しつけた。
「今はだめ。さあ、牢の外じゃお面をかぶってるんだと思いな」
こくんとマリアはうなずいた。
 焼き印を押されたその翌日からマリアは現場へ出された。他の奴隷と同じように重荷を背負わされ、あるいは抱えて何度も往復した。一挙手一投足にむち男たちはいちゃもんをつけた。わざと失敗するように、重荷に耐えてふらふらと歩くむきだしの足のくるぶしを狙って鞭をふるった。
 何をされてもマリアはがまん強く振る舞った。やわらかかった頬や手はすぐに荒れ、手足は黒ずみ、傷だらけになった。
 石材を背負ったまま奴隷たちはマリアとすれちがう。瞬間的に目を合わせ視線だけで励ましながら。
 いかにもバカにした手つきで水くみ女が水の入ったひしゃくをマリアにつきつける。だが、水を飲む時間を長引かせ、そうやってマリアを少しでも休ませる。
ルークにとってもマリアは特別だった。もともとルークは生意気で反抗的ということでは札付きの奴隷なのだ。奴隷監督に正面切って逆らってでも、少しでもマリアの荷が軽くなるようにがんばった。
 ヘンリーと二人で盗み出す食料のほうも気合いが入った。
 むしろを編むための材料になる藁束の中に食料を忍ばせて、二人は女子牢へ持ち込んだ。女奴隷たちの雰囲気がさっと変わった。
 牢名主は片隅のテーブルからしっとつぶやいた。無言でルークは、女子牢の岩床の上に藁束を広げた。手で藁をかき寄せると、パンと薫製肉の塊が現れた。そそくさと女たちが集まってきた。
「一人分を守るんだよ!」
と牢名主は女たちに言いつけた。
「欲しいからって多めにとっといたりすると、ここへ兵士が入ってきたときに見つかっちまうからね」
牢名主はルークの方を見た。
「こないだから一人分多く要るんだよ。ちゃんとあるだろうね」
「心配ないって」
ヘンリーは軽く答えた。
「これ、ご注文の煙草だ。お納めあれ、女王様」
牢名主はテーブルの上に自分の取り分を載せ、いそいそと隠し場所から粗末なパイプを取り出した。
「いつもすまないねえ」
ルークは残されたパンと肉を手に取り、女子牢の隅にいたマリアに差し出した。
「どうぞ」
マリアはあっけにとられていた。女奴隷たちは、くすくす笑った。
「こ、これ、まさか」
マリアは絶句した。
「そこのお兄さんたちはさ、あたしらへの配給をずっとボランティアでやってくれてるんだ」
女奴隷が小声でそう言った。
「お礼をしたいんだけど、受け取ってくれないのよねぇ」
水くみ女が意味ありげな目つきでそう言った。
「俺たちガキなんで、なんのことかわかりませーん」
ヘンリーがいなすと、水くみ女はふくれた。
「あんた、三年前からそう言ってるじゃないか」
ちょっとうるさいよ、と牢名主が言った。
「マリア、はっきり言っとくが、これは盗んできたもんだ。食べたくないならしかたないが、このことは兵士や教団の連中には知られたくない。ばれたらこの子たちは死刑だからね。あんたも秘密を守ってくれるね?」
ルークは真剣な顔で説得した。
「盗品には違いないですけど、でも食べてください。そうしないと生きられない」
マリアは泣き笑いのような顔になった。
「時々食糧倉庫からパンが減っていたのは、そういうことだったのね。わたし、教団の人が勝手に持って行ったものとばかり思ってました。悪いことをしたわ」
あははっとヘンリーが笑い声をあげた。
「気にすんの、そこ?え、そこかよ?」
え、という表情でマリアは彼を見上げ、それから恥ずかしそうに顔を伏せた。
あとからヘンリーは言った。
「反応がおもしろいよな、あの子」
「そうだね」
「笑うとかわいいしな」
へえ、とルークは思った。めったにヘンリーはその手の褒め方をしないのだが。
岩牢へ戻ると、目細が憤慨して周りに話していた。
「かわいそうによ、マリアちゃん虐めるのは、ナタンの差し金らしいぜ」
と目細は憤懣やるかたない口調で言った。
「あいつが鞭男たちに言ってるのを聞いちまったんだ」
ナタンの評判は最近地に落ちている。前は話が分かると思っていた目細たちも毛嫌いしていた。ただし、入牢検査のときは今もナタンとは取引をしている。
「あいつ、満足してるんじゃないのかい」
と大鼻が言った。
「マリアの兄ちゃんは、ヒラ格下げなんだろう?」
「ああ。格下げに加えて寮で謹慎だとさ」
大皿割りの事件から、十日以上経っていた。
「でも昨日謹慎が終わったから、いよいよ現場巡視に出なけりゃならない」
奴隷になった妹が虐待される姿を見なくてはならないのだ。
「今日は、あいつは?」
「浴びるほど酒を飲んで、謹慎に逆戻りだと。でも一日だけだ」

 建設現場と奴隷の岩牢の間には、当然のように兵士の詰め所があった。兵士たちの監視班が出発し、また帰着する場所であり、鍵の管理もここで行う。そこはテーブルといすがいくつかあるだけの狭い部屋で隅には備品の入った木箱や樽がむきだしでおいてあった。そのいすのひとつに座り、上体をテーブルへ伏してヨシュアがへたばっていた。
「ヨシュア、水を持ってきたよ」
ナタンだった。
 マリアに話しかけた毒のある口調はすっかり影を潜めている。
「大丈夫か。なあ、そんなに落ち込むなよ」
にやにやしたい気持ちは心の奥へ。今のナタンはヨシュアの親友になりきっていた。
「あんな話、しなけりゃよかった。タイミングもまずかった。ほんと、悪かったな」
泥酔したヨシュアがうめいた。
「ナタンのせいじゃないんだ」
ナタンはこっそりほくそえんだ。
「俺があのとき、逆上したから。くそっ」
「聞きたくないと思うが、もうひとつ謝らせてくれ。妹さんのことだが、逮捕して牢へ入れたのは俺と仲間の兵士なんだ」
「……おまえは仕事でやっただけだ」
「もちろんそうなんだが、あんなことになったら気持ちもほら、普通じゃいられないだろうと思ってさ」
のうのうと自己弁護を続けながらナタンは言った。
「えーと、現場でマリアと話をすることがあるかもしれないよな」
ヨシュアは手で額を支えるようにして、ナタンの顔も見ずにつぶやいた。
「現場で話したり、しない」
「ああ、そうだった、奴隷と個人的な話をするのは禁止だもんな」
あきらかにほっとした顔でナタンはそう言った。
ヨシュアは十指で顔を覆った。
「おれ、もうイヤだ」
聞きたかったその言葉。ナタンは勝利をゆっくり味わっている顔だった。
「おいおい、隊長に聞かれたらやばい」
「隊長なんかどうでもいい!」
激しくヨシュアは言った。
「こんなとこ、出て行くよ。マリアを連れて」
「ちょっと待てよ。脱走する気か?」
「辞職じゃだめか?」
ヨシュアは顔を上げてぽつりと言った。
「おまえ、お気楽すぎるぞ。教団がどんなとこか知らないわけないだろう!」
かつての颯爽としたエリート兵士小隊長は、泥酔とストレスでひどい顔になっていた。その顔が絶望のためにさらにゆがんだ。
「くそっ。マリア、俺なんかの為に」
「今の聞かなかったことにするから。おまえも過激なこと言うな」
親友が諌言する風を装って、ナタンはヨシュアの絶望を煽った。
「明日はちゃんと仕事に出ろよ?俺たちが生きるにはそれしかないんだからさ」
詰め所の扉を閉めてナタンは仕事へ戻ろうとした。ヨシュアといるときの心配そうな表情は、陰険な喜びに取って代わっていた。
「あいつ、ヘドがでるな」
 そのあたりは通路の一部だった。石切工として働いていたルークとヘンリーは、石切場から人手の足りない石組み現場へ移動する途中でそのあたりを通りかかり、ナタンがヨシュアをいたぶるようすを聞いてしまった。
「ヨシュアさん、かわいそうだな」
「ていうか、危険だ、あいつ。ヨシュアはもっと警戒しないと」
とヘンリーはつぶやいた。
「ぼくたち、忠告できないかな。ナタンは本当はあなたの友達じゃないって」
「兵士が奴隷の忠告を聞くか?」
とヘンリーは言った。
「それ以前に、おまえ、誰かがギザミミは本当はおまえの友達じゃないって言ったらどうする?」
「え、まさか、信じないよ」
「だろうなあ」
ヘンリーはためいきをついた。