ホメロス戦記・七人の傭兵 4.仲間集め

――しかし、どうしたものか。
 心中、グレイグは悩んでいた。
 この村に集まっていたのは傭兵志願者たちで、それなりに武器を扱える戦士ばかりのはずだった。ただし腕のいい者、ましてや一方面を任されるだけの力量のある者は、それなりの報酬がなくては雇えない。
「今は飯だけだからなあ」
 グレイグはそうつぶやいて、石畳の広場を見回した。その石畳の上を前方から、やけに派手な身なりの若者がだだっと走ってきた。
「そこのおじ様、いい身体してるわねぇ?護衛のお仕事、やってみない?」
「今、なんと言った?」
 若者はのけぞってグレイグの顔を見上げた。
「アタシたち、この村から避難する馬車隊をつくってるの。村から出ていく人は多いけど、剣を使える人ばっかりじゃないでしょ?もともと避難所にかくまわれていた子達とか、たまたま村に来合せていた行商人とか、逃げたいけどこのご時世、外は物騒で怖いという人は多いの。だったらみんなでまとまって複数の馬車に乗って逃げましょうという計画よ?おじ様強そうだから、馬車隊の先頭でにらみをきかせてくれるだけでいいわ?」
 ぺらぺらとしゃべる若者を、なんとかグレイグは止めた。
「いや、待ってくれ。俺は戦士を募る側なのだ」
「あら、ほんと?まっ、ちょうどいいとこに。オネエさま、こっちこっちー」
 派手な若者はその場でぴょんと飛び上がって手を振った。
「ランスちゃん、何かあった?」
 輪をかけて派手派手しい男がやってきた。道化師か軽業師のような太いしま柄のポンポン付きの服を身につけているが、すらりとした姿は一流のダンサーのようだった。足が長く、大股にこちらへ歩いてくる姿がバランスよく、美しい。そして誰もが振り返るほど容姿の整った男だった。
「オネエさま、ほら、見て見て?」
 ランスと呼ばれた最初の若者はキャッキャッとはしゃいでいる。だが“オネエさま” は何かに驚いたように黙っていた。
「その、なんだ、おまえたちは」
「アラ、ごめんなさいね」
 後から来た男はようやくそう言った。
「アタシはシルビア。本職は芸人なのだけど、今はこの村から逃げようとしている人たちをまとめているの。もしかして、アナタもそうなの?もしそうなら、いっしょに行かない?」
 グレイグはあわてて手を振った。
「ちがうのだ。俺はこの村を守ってくれる戦士を募っていてな」
「まっ」
 シルビアとランスは顔を見合わせた。
「それはまた、たいそうなことを考えたものねえ」
「……相棒には“苦行”だと言われてしまった」
「あなたの相棒さんが正しいわ」
「それほどか?うむ、確かにそうだな」
 グレイグはへこんだ。
 もうっと笑いながらシルビアは言った。
「苦行には違いないけど、不可能じゃないわよ。ランスちゃんならどうする?」
 うっふん、とランスがしなを作ったときは、グレイグはまったく期待していなかった。
「敵が村の両側の岩山を越えられないなら、攻め口は村の正面だけでしょ?おびき寄せてアウトレンジ飽和攻撃ならどうかしらん」
 は?とグレイグは声を上げた。あまりにも真っ当な戦略に、かえって理解するまで時間がかかった。グレイグのとまどいをシルビアは無視してつづけた。
「敵も遠距離攻撃をしてくるかもしれないわ。そこを先につぶさないとね。まず敵を知ることよ?」
 グレイグはあっけにとられて二人の顔をかわるがわる見ていた。
「やーね、何て顔なの?」
「いや、その、ここで、こんなところで、昔ソルティコで習った戦術論の講義をおさらいするとは思わなかった」
 シルビアとランスは手で口元を抑えて震えていた。
「もう、この子ったら」
 まだくすくす笑っている。
「決めたわ。アタシここに残って、この村を守る。ランスちゃん、みんなをお願い」
「オネエさまも物好きねえ」
「だって、わかるでしょ?放っておけないの、この村も、この子も」
 この子、とは俺のことか?とグレイグは思った。
 ランスは真顔になった。
「オネエさまがいないと、ファーリスちゃんが悲しむわよ?」
「だからって、この村の戦争に巻き込むわけにもいかないわ。あの子をよろしくね?いろいろ仕込んで、独り立ちできるようにしてやってちょうだい」
 ランスは、すん、とすすりあげた。
「ええ、パレード仲間にもそう言っとく。でも、オネエさま、生きて帰ってきてね?アタシたち、ソルティコで待ってるから」
「もちろんよ」
 シルビアは聖母のような表情でランスをハグした。ランスはもう一度手を振って、仲間たちのところへ帰っていった。
 グレイグは咳払いをした。
「本当に参加してくれるのか?ああ、申し遅れた。俺はグレイグ。大望をもって相棒と諸国を遍歴している騎士だ」
「よろしく、グレイグ」
 細い眉の下の大きな目を半眼閉じて、妖艶にシルビアはささやいた。
「おまえが戦術に詳しいのはわかった。実際の戦闘は?つまり、自分で自分の身を守れるか?」
 くすっとシルビアは笑った。
「アタシが戦えないって思ってるのね?」
「その、あまり雄々しくは見えん」
「正直者ねえ。アタシが使うのは細身の剣と短剣。あとムチも好きよ。旅芸人は、おいはぎや山賊をいなして旅しなくちゃならないんですからね。それなりに使えるわ」
「そんなものか」
とグレイグは納得した。
「さっそくで悪いのだが、シルビア、実は俺達には仲間が少ないのだ。プチャラオ村の有志の農民をのぞけば、俺、相棒のホメロス、そしておまえだ」
「もっと仲間が要るのね?あとどのくらい?」
 プチャラオ村に集まっていた旅の戦士たちはほとんど出て行って、広場はがらんとしていた。
「無理かもしれんが、あと四人」
 誰かがいきなり声をかけた。
「その話、乗るぜ」
 グレイグは、さっと振り向いた。今の今まで、背後に人がいる気配を感じとれなかったことにグレイグは愕然としていた。
 グレイグの真後ろに青髪の若者が腕を組んで立っていた。得物はサッシュにはさんだ二振りの短剣らしい。鋭い目、油断のない態度のやせぎすの男で、正規の戦士というより無頼の徒のようだ、とグレイグは思った。
 優雅な微笑みでシルビアが尋ねた。
「お名前を聞いていいかしら。誰ちゃん?」
 若者は親指で自分の胸を指した。
「カミュ。駆け出しのトレジャーハンターだ」
 グレイグはじっくりと彼を観察した。シルビアとは逆に戦術戦略はからきし、とグレイグは判断した。ただ、カミュにはケンカの場数を踏んだようすがあり、装備している短剣も使い込んだ感があった。
「トレジャーハンターが、なぜ村の守りを?」
 カミュは肩をすくめた。
「あんたらと同じだよ。誰もかれも村を出ていく。誰かが残ってやらなきゃと思ってな」
 グレイグは指で自分の顎をはさむようにして考え込んだ。
「それはまた、奇特なことだが」
 意外にもシルビアが笑い飛ばした。
「何を言ってるのよ、いの一番に奇特なアナタが。カミュちゃんね?アタシはシルビア。よろしくね」
 に、とカミュは笑った。
「有名な旅芸人のシルビアさんだろ?よろしく。さっそくいい人脈ができた」
 シルビアは両手を握り合わせて身を乗り出した。
「サーカスに興味があるなら大歓迎よ?アナタ見るからに華があるから、きっとスターになれるわ」
 カミュは困ったような表情で、何か押し返すような仕草をした。
「そいつはちょっと遠慮しとく。あ~シルビアさんは、どうして村を守る羽目になったんだ?」
「シルビアって呼んでちょうだいな。アタシはえ~と、プチャラオ村のみなさんも笑顔でいてほしいから、かしら」
「え、笑顔?」
 カミュはぽかんとした。そんな表情になると、意外にあどけない、とグレイグは思った。
 まあいい、とグレイグはつぶやいた。
「そうだ、先ほどのモンスターがやってきたとき、やつらは村の子供を捕まえたのだ。その子を救い出した年寄りがいたな。声をかけてみるべきだと思うのだが」
「まあ、お年寄りに?」
「年はいってもみごとな動きだったぞ?」
「アナタはどう思う?」
 シルビアに聞かれてカミュはなぜかにやりとした。
「その爺さんは仲間に入れるべきだな。名はテオ。ただの爺ぃじゃねえ、レジェンド級のトレジャーハンターだ」
「そいつはいい」
 グレイグはきょろきょろした。
「居所ならわかるぜ。こっちだ」
 妙にうきうきしているカミュに引っ張られるようにグレイグたちはついていった。
 連れていかれたのは、広場に面して建っている立派な二階家の前だった。外に丸テーブルを出し、椅子も置いてあった。そこに問題の老人が座っていた。
 さらわれた子供リキオの父と祖父がさきほどグレイグたちに礼にきていたが、その二人を含め家族らしい一団がその場にいた。
「おお、やっとおいでくださった!」
 リキムと名乗った老人がグレイグを迎えた。
「さあさあ、こちらへ。お連れさん方も」
「あ、いや、俺はこっちのお年寄りに用があって来ただけなのだ」
 テオというらしい年寄りがこちらへ視線を向けた。
「俺はグレイグという者だ。訳あってこの村を守るために戦うことになった」
 それはそれは、と目を丸くしてテオはつぶやいた。
「テオ殿、さきほどの貴殿の勇気ある行動に感服した。ぜひ、仲間になってもらいたいのだが」
「それでは、本当なのですな?」
 テオが話しかけたのは、同じ卓についていたもう一人の年寄りだった。確か、村が戦うかどうかを決める話し合いの時に賛成意見を言っていた、とグレイグは思いだした。ギサック村長が提灯づくりのロウと呼んでいた老爺だった。
 ロウは立派なひげを指でしごいた。
「物好きな、いやいや奇特なお方もあったものじゃ」
 テオは軽く咳払いをした。
「グレイグさま、実は先ほど年甲斐もなくしゃしゃり出たときに手傷を負いました。申し訳ないのですがこの体ではかえって皆様の足手まといになりましょう」
「そうか」
と言ってグレイグはうつむいた。
「相棒に言われて一緒に戦う戦士を募っているのだが、また探しなおしだな」
 ロウが顔を上げた。
「相棒とおっしゃるのは、さきほど一緒におられた二刀流の剣士の方で?」
 戦うかどうかの話し合いのことを言っているようだった。
「そうだ。あいつは今、村の地形を見てくると言って奥へ行っている」
「冷静で賢明なお方でしたな」
 なんとなくグレイグはうれしくなった。
「わかってくれるか。あいつは子供のころから俺よりずっと頭がよくて、剣も学問もできるやつなのだ。智将と呼ばれ参謀職をつとめたこともある」
 独特の笑みを浮かべてロウは尋ねた。
「では、あの方が策を立てれば、勝てますかな?」
「無論だ」
 グレイグは即答した。
「よろしい。グレイグ殿、わしはテオ殿の古い友人での。テオ殿の代わりに、お仲間に志願いたしますぞ」
「ロウさま!」
 あわてるテオを、まあまあ、とロウはなだめにかかった。
「わしらにはこの村が必要なのじゃ。ここはぜひとも守らねば。な?」
 グレイグはためらった。
「お志はありがたいが」
「わしは細工仕事を得意としておりましてな。いろいろとお役に立てるかと思いますぞ?」
 うむ、とグレイグは考え込んだ。
 グレイグとロウが話している間、テオはハラハラしているようだった。
「イレブンや」
 傍らの少年にテオは話しかけた。
「ロウさまに付いていって、わしの代わりにロウさまをお助けしておくれ」
 イレブンと呼ばれたのは大人になる前の年齢の子供で、女児と見まがうほどかわいらしい少年だった。
「えっ、いいの?」
 グレイグはあわてた。
「いや、子供を巻き込むわけには」
 グレイグさま、とまだ高い声でイレブンが言った。
「ぼく、もう十四歳です。先ほどの戦いを見ていました。大きくなったらあなたのような戦士になりたいんです。お邪魔はしません。仲間に入れてください」
 少年らしい憧れで、彼は目をキラキラさせていた。ふう、とグレイグはためいきをついた。
「では相棒に判断をまかせよう。それでよろしいか、ロウ殿?」
 ほっほっとロウは笑った。
「それで十分。なに、けして後悔はさせません。なあ、イレブンくん?」
「はいっ」
 ホメロスの注文は七人だった。グレイグは心の中で数えた。グレイグとホメロスの二人は確定、シルビア、カミュの二人が仲間になってくれた。準メンバーとしてロウとイレブンがいる。
「できればあと一人」
 そうつぶやいたときだった。
 石畳の上を軽快に走る音がした。
「こっちよ、早く!」
 細くて高い少女の声だった。こちらへ向かって紺色の制服を着た幼い少女が二人、小走りにやってくる。その後ろから武器を装備した若い女がついてきた。
「ほら、やっぱり!」
 丸い帽子の下から二本の三つ編みが下がっている気の強そうな少女が、腰に両手をあててかるく反り返った。
「ええ、ほんとに。皆さま、おそろいですね」
 顔の良く似たもう一人の少女が、走って荒い呼吸でそう言った。
 あとから来た女が姉妹に声をかけた。
「ベロニカ、セーニャ、単独行動はなしの約束よ?」
 三つ編みの子が振り向いた。
「だから、マルティナさんにもいっしょに来てって言ったでしょ」
――マルティナというのか。
 グレイグはじっと彼女を眺めた。
「失礼だが、どこかでお目にかかったことは?」
 さっとマルティナは身構えた。
「ないと思いますが」
 昨今女戦士はそれほど珍しくない。力でも技でも男の戦士と互角の者も多い。そして目の前の彼女は、若いながら熟練の戦士のように見えた。
「年齢をお伺いしてもよろしいか」
 美しい眉がすっと眉根に寄った。
「見ず知らずの方にお話しすることだとは思いません」
 グレイグは懊悩した。なんと言えばいいだろう。
――あなたは赤子のころに行方不明になったデルカダール王女のおもかげがある。年齢と素性を確認させてほしい……。
 きっとホメロスなら苦も無く聞き出せるはず。グレイグは長い金髪の剣士の姿を探してきょろきょろした。
「グレイグ?何をやってる?」
 突然話しかけられてグレイグは、ひゅっと息を飲み込んだ。斜め後ろからホメロスが歩いてきたところだった。
「ちょうどいいとこへ」
 来たな、と言い終わる前に、小さな影が二つ動いた。
 ベロニカとセーニャだった。姉妹はグレイグを追い越してホメロスの前に並んで立った。
 ホメロスの足が止まった。珍しいことに、ひどく驚いた顔をしていた。
 セーニャが左手を、ベロニカが右手をかかげ、二人は小さな手のひらを合わせた。同時にもう片方の手を胸にあてた。
「◎▲□×、〇◆×▽……」
 不思議な言葉で二人は話し始めた。
 ホメロスの表情が、はっきりと変わった。
「▼□★〇〇!」
 同じ言葉でホメロスが何か答えた。
「ホメロス、この子供たちを知っているのか?」
 ホメロスは咳払いをした。
「特殊な古代言語だ。昔学んだことがある、それだけだ」
 二人の少女は彼を見上げた。
「あら、動揺してるの、◇☆▼〇さま?」
「わたくしたちだけでお話できませんか?」
 深く息を吐いてホメロスは答えた。
「今夜なら、少し時間がある。今は忙しい」
 そう、とベロニカが言った。
「じゃ、あたしたち、待ってるわ」
「あの、ベロニカ、セーニャ?」
とマルティナが声をかけた。
「あなたたちが探していたのはこの人なの?」
「そうなの!彼と話をつけなくちゃならないんだけど」
 ベロニカの口角が上がった。
「でもマルティナさんのほうが先よね」
 マルティナは驚いた顔になった。
「私?私は別に話なんか」
 そう言いかけて、マルティナはホメロスとグレイグを見比べた。
「いえ、あるわ。私はメダル女学院の校長からベロニカとセーニャ姉妹の責任を託されている者です。この村は近いうちに戦場になると聞きました。あなた方、この子たちをどうするつもり?」
 グレイグはあわてた。
「どうするつもりも何も、そちらからおしかけてきたのでは?なあ、ホメロス?」
「その通り。できるだけ早く退去することをお勧めする」
 その瞬間、姉妹は声を合わせた。
「だめっ」
「できませんっ」
 マルティナは少女たちを見て、言葉に詰まったようだった。
「わかったわ。あなたたちはこの村にいていいわ。でも、私もつきそいます」
 グレイグはあわてた。
「いや、その、モンスターが」
 毅然としてマルティナは言った。
「襲ってくるのでしょ?私も戦います」
 そして、まっすぐホメロスを見た。
「かまわないわね?」
 グレイグは困り果てた。もし王女その人だったら、モンスターなどの相手をさせるわけにはいかない。
「ホメロス、そのことだが」
 ホメロスは手で何か押しやるような仕草をした。
「わかっている。が、王家の問題は話す時と場所を選ぶものだ」
 あとにしろ、と言われてしまい、グレイグはうなずくしかなかった。
「アナタの相棒さんて、この人ね」
 シルビアだった。
「グレイグをほっとけなくて来ちゃったわ。あたしはシルビア」
 ホメロスはひとつうなずいた。
「お前はあてにできそうだな。副官役をまかせる」
 ぴくんとシルビアの眉が動いた。
「お目が高いわ。こっちはカミュちゃん」
 どうも、とカミュはつぶやいた。
「モンスターの相手は初めてだが、なんとかやってみる」
「そうか。お前の戦闘力は期待できそうだ」
 ホメロスの視線がロウに向かった。
「先に会ったな」
 ロウは拱手して会釈した。
「しがない提灯づくりですが、なんでもいたしますぞ」
 意外にもホメロスは嫌がることなく、折り目正しくあいさつした。
「知恵と経験は得難いものだ。よろしく頼む」
 ロウの手がイレブンの肩におかれた。
「これはイレブン。旧友の孫です。ひとつ見習いをさせてくだされ」
 イレブンはぺこんと頭を下げた。
 ホメロスはしばらく黙っていた。じっとイレブンを見て、つぶやいた。
「手を」
 イレブンは驚いて目を見張った。おそるおそる両手を差し出した。
「手のひらではない。手の甲を」
 イレブンは赤くなり、くるりと手のひらを返した。少年らしい、ぷっくりとして色白の、しみひとつない手の甲があらわれた。
 ホメロスは黙ってその手を見て、そして顔を凝視した。
「……死なせるわけにいかない」
 奇妙な口調だった。
「あの、ぼくは」
 ロウがかばう口調になった。
「むろん、この子は危険なところにはいかせません。ホメロス殿、なにとぞ」
 ホメロスは意外なほどあっさりとうなずいた。
「わかった。が、イレブン、常にロウ殿か、他の仲間のそばにいること。いいな?」
「はい」
とイレブンは答えた。自分もメンバーに数えてもらえたことがうれしかったらしく、ほほが染まっていた。
 グレイグはちょっと笑い返した。
「ホメロス、俺とお前、マルティナ嬢、シルビア、カミュ、ロウとイレブン。これでお前の注文通り、七人だ」
 グレイグは胸を張った。
「で、これからどうする?」
 広場の奥の階段のほうへ、ホメロスはあごを動かした。
「村長の家へ」
 この村を守るかどうかをホメロスは保留にしたままだった、とグレイグは思い出した。