とんぼ日記

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白翼のドラゴノイド(8/25)

 Vジャンプでロカ対キギロの結末読んできました。ロカ、生きてほしい、ほんとに。ダイ大本編では出番少なかったのに「獄炎の魔王」でロカはほんとにいいキャラになりました。というか、好きだ。

 さて、今回の進捗報告はダイのほうから。クロコダインの籠城戦でヒュンケルが華々しく飛び込んできた直後、別の助っ人が来ます。一人はラーハルト、もう一人はクロコダインにとって見覚えのない若者でした。

 船は浅瀬の手前で止まった。そこから二人が飛び降りた。バシャバシャと波を蹴立ててこちらへ走ってきた。
「ラーハルトが来たのか」
 半人半魔のラーハルトは愛用の鎧を装備して槍を携えていた。その姿はクロコダインもよく知っていた。もう一人は十代の若者で、種族はおそらく人間だと思われた。
 クロコダインは首をひねった。全く見覚えがないというのに、この人間の若者はなぜかとても懐かしい雰囲気をもっていた。
「誰だ、あれは」
「誰だと思う」
 ヒュンケルが満足そうに尋ねた。
(略)
 その中から一人、あの人間の若者が突出した。走りながら抜刀してかまえていた。
 ラーハルトはその背後を守るように立ち、頭上で槍を無造作に回転させた。ハーケン・ディストールのひとふりで、黒いアンデッドのほとんどが木っ端みじんに砕け散った。
 そうしている間にも、若い剣士は走って海蛇に接近していた。たいていのヒトは足首が隠れるほどの水の中を走るのは苦手なはずだが、若者はものともせずに距離を詰めていく。
 魔界の上空にたれこめる厚い雲の中に、稲妻が閃いた。
「あいつが呼んでいるのか」
 右上段にかまえた刀身には、すでにバチバチと音を立てて雷がまとわりついている。
 大口を開けて海蛇は威嚇した。
 剣士は浅瀬から跳んだ。
 空中で剣を頭上に振りかぶって激しく振り下ろした。
「ギガブレイク!」
 稲妻が魔界の薄闇を裂いて白く煌めき、斬撃と共に轟音が鳴り響いた。
 跳躍、振り切り、着地、どの動作も百戦錬磨の戦士の余裕をそなえ、力強くも華麗だった。
 巨大な蛇体はほとんど頭部をつぶされ、ぐしゃりと砂州へ崩れ落ちた。そのまま自重に引かれて海中へ滑り落ちて消えた。
 クロコダインは、うなった。その技の威力は身をもって知っている。バラン亡き今、ギガブレイクを使うことができるのは、その息子以外にありえなかった。

というわけで、17歳のダイの初陣シーンでした。
話の展開上ダイにはいきなり竜魔人になってもらう予定です。相手は魔界を牛耳る三大勢力のうち、バーン、ヴェルザーに次ぐ第三のボスです。

 光の中にダイが立っていた。
 額にあった竜の紋章が青く発光している。紋章はバランと同じく兜の前立てのように華やかに広がっていた。
 ぴく、とダイが身じろぎした。苦しそうに上半身をねじって前かがみになった。両手で自分の服の胸のあたりをわしづかみにしてダイは一息にむしり取った。
 竜魔人と化したバランのような、見るからにドラゴンたる筋肉の流れはまだない。重量感も父に及ばない。あくまでベースは人間の若者のようだったが、肩から腕にかけて、バランと同じ竜の尾の剣板が並んでいた。
 ダイのむきだしの背で何かが動き出した。服の残骸をおしのけてそれは大きく伸びあがった。骨格の間に被膜を張った竜の翼だった。
 ヒュンケルは息を呑んだ。
「あれは、翼か!子供のころはなかったはず」
 うむ、とラーハルトがつぶやいた。
「竜魔人ならば当然だ。が、」
「なんだ?」
「バラン様とは、翼の色が違う」
 竜魔人バランは白い骨格に黒い被膜のある巨大な翼を備えていた覚えがある。だが、成長したダイの背には、淡い金の骨格に白い被膜の翼があった。
「ソアラ様の血か、あるいは、奇跡か」
 奇跡のほうだろう、とヒュンケルは思った。目の前の若きドラゴノイドは殲滅の使者であるはずなのに、どこか天使のような清らかさがあった。

 ダイも翼を持てたらいいな、というか、新アニメのEDのひとつに幻の金の翼をつけて走るダイがいて、↑はそのイメージです。ですがお約束として最初のボス戦は負けゲーです。敗れたパーティは海上で助けられるのですが、助けた方の魔族たちからダイは意外なことを聞きました。

 魔族の中でも年かさの男が進み出た。ヒュンケルは、ふとハドラーを連想した。青みがかった肌と尖った耳、立派な体躯の持ち主だった。何よりも鋭い目とかたくなな表情が、かつての魔王を思わせた。周りの態度からすると、その男はどうやら一族の長、船長格の者であるらしかった。
「あなたは、竜の騎士か」
 切りつけるような聞き方だった。ラーハルトが身構えた。
「そちらには関係ない!」
 じろりと魔族の長はラーハルトを見た。
「先ほどの戦いをこの船の上から見ていたのだ」
 半竜半人の姿、攻撃技、その威力。たしかに魔界の民なら一目で竜の騎士とわかったことだろう。
 ダイはその魔族に向き合った。
「おれの父は竜の騎士、母は人間だった。おれは、ハーフかな」
「父上はどちらに?」
「とう……父は、大魔王との闘いの中で戦死した」
「では、あなたが当代の竜の騎士なのだな?」
 魔族たちがざわめいた。そのざわめきを、魔族の長は手で鎮めた。
 やおら魔族の長は腰を沈め、甲板の上に片膝をついた。一族の者たちがいっせいにそれにならった。
「竜の騎士よ、我らを地上へ逃がしたまえ。我ら一族をあげて、かく願い上げる」
 そう言うと、ダイの前に深々と頭を下げた。

 さて今月のお盆のころに長年の相棒に捏造魔界編を見てもらう機会があって、グッジョブもらいました。そのときに話したのがきっかけで、ヒュンケルのパートが見えてきました。ダイ大本編では、ダイの行方不明と同じくヒュンケルには戦闘不能という形ですっぱりとカタが付けられていました。そこをあえて続けようとするからには、避けて通れない問題がありました。

 ヒュンケルは、戦えるのか?一案として戦士以外の職業、例えば魔法使いとか参謀として活躍するというのがありました。銀縁眼鏡のヒュンケルとか、これはこれでいいわぁ……などと思ったのですが、ポップがその役にいるので、活躍シーンを二人分作るのがとんぼには無理、という判断で見送りました。

 第一、不死身のヒュンケル兄さんには切った張ったがよく似合う。やはり戦士として再登場してもらおうと思います。ただ、「身体治りました~」といきなり参戦するのはなんか書けないと思ったので、クッションおきます。まず出発前の、アバン先生とのやりとり。ヒュンケルは歩く時は歩行の助けになる杖をいつも持っています。その状態ですがアバン先生から、自分の代わりに魔界へ行ってくれ、と頼まれます。

「そんな表情だと、子供のころのあなたを思い出しますねえ……ああ、わかりましたよ。からかうのはやめましょう。また嫌われてしまう」
 アバンは咳払いをした。
「ヒュンケル、あなたは再び武器を取ることをためらっているのではないですか?」
 水鏡のようなヒュンケルの闘気が、一瞬波立った。
「なぜ」
「なあに、勘ですよ。魔界へ行ってごらんなさい。ためらいを克服するきっかけが、必ずあると思いますよ」

 魔界でヒュンケル、マァム、クロコダインの三人パーティだった時、分断されて霧深い沼に誘導されたヒュンケルは、正体の判らない敵に襲われます。ここでヒュンケルが持っている杖は魔界出発前にラーハルトから手渡された餞別です。

 どれだけ気配を殺しても、物理的に質量はある。
――敵の足が沼に踏みこめば、水音がするはず。
 足元の感触を頼りにヒュンケルは無造作に動いた。水たまりの真ん中に立てば、敵は音を立てずに接近することはできない。
――これで攻撃が来たなら、相手は遠距離攻撃技を持っていることになる。
 それはそれでやっかいだった。が、少なくとも相手の情報は得られる。そう考えてヒュンケルは身構えた。
 ぴっ……という音をとらえた瞬間、ヒュンケルは杖の握りを顔の前まで斜め上に引き上げた。
 ガガッと音がして、杖に刃が連続してぶち当たった。
 その衝撃で留め金がはずれたようだった。歩行杖、に見せかけた鞘が壊れ、滑り落ちた。内部に仕込まれていた、定寸無反りの直刀がむきだしになった。

ただ、くどいようですがアバン対バルトスの戦いを見てからもう一度考える予定なので、今回持ってきたサンプルは書き直し前提のほとんど供養です。供養ですが、↓の部分特に最後のくだりだけは、たぶん決定稿まで生き延びると思います。

 沼の中に片足を踏み込み、一撃を放った刀を前方に保持したまま、ヒュンケルは背後の敵の気配を探った。
 乾ききった白骨が、ばらばらと砕けていくのがわかった。
 自分のあごから血の混じった汗がしたたり落ちた。
 ゆっくり体勢を戻し、ヒュンケルはようやく振り向いた。
 敗れた敵の剣士は、すでにひと塊の骨となっていた。見ている前でその骨は空気に溶けた。
 ふとヒュンケルは足元に白いものを見つけて、手に取った。掌でそれは二つに分かれた。自分が切断したものに違いなかった。
 金属だろうと思っていたそれは、軽かった。おそらく紙と思われた。しかもかなり古い、とヒュンケルは考え、次の瞬間、息を止めた。
 二つに分かれた紙片を手の上で寄せると、星の形になった。

でもいちおうヒュンケルのパートが形になってきたので、今度はいよいよ捏造魔界編の後半をがんばることになります。ここが悩みどころで、ダイ大本編のような強大な敵との決戦は、とてもとんぼには書けないのです。ならばどうするか。魔界からの脱出を書こうと思っています。後ろから第三のボスが追ってくる中、地上へ向けての脱出計画です。がんばる。

拍手御礼(8/12)

>がんばれコリンズ~の方、ご声援ありがとうございます。たぶん彼は成長するとヘンリーのまねをしてカッコつけたがると思いますが、八歳児現在、カッコつけたいのが透けて見えるのが可愛いという段階だろうと思います。つい親目線になっちゃいますね。コメント感謝です。

カエルにキスする王子様(8/10)

本日、ラインハットの日にあわせ、「ラインハットのフェアリー」をアップしました。実はとんぼは、ネタの使いまわしをやっています。このネタ、最初に出したのは、記録によれば2008年の11月ごろでした。同じころにアップしていたDQ4,5コラボ二次「エルフの時代」の裏話として考えて、ドール写真5枚で一つのお話にしてweb拍手のお礼画像にしました。その後、2018年あたりの「ラインハットの日」に、twitterに同じ写真とキャプションで投稿しました。内容はどちらも同じで、コリンズがフェアリーに三つのお願いをかなえてもらう、という内容でした。ただこのお話、おちのないしりきれとんぼに終わっていて、ずっと気になっていました。今回あらためてお話として筋が通るように書き直してみました。そんなとんぼの自己満足ですが、よろしかったらごらんください。

桃色の髪のメイクーニャン(7/25)

 今回の進捗報告の前に、Vジャンプの獄炎の感想など。魔王の最終ダンジョンの戦いですが、前回ガンガディアにはマトリフがあたり、今回キギロにはロカが対応します。
 ダイ大本編の状況からロカは早逝すると、わかってはいました。本編のネイル村にはレイラしかいないのですから。それもあって戦士ロカの戦いをいろんな意味で注目していました。
 魔王城最終ダンジョンで人面樹の亜種であるキギロの放つ呪いの木切れの破片を身体に打ち込まれ、ロカは動けなくなりますが、レイラとアバンを先行させ、自分はキギロの前に立ちはだかります。ロカの使う技はカール騎士団正統初撃、「豪破一刀」。
 今見たら初出は獄炎二巻、ほとんど最初からロカの必殺技でした。ところがこのキギロ戦においてロカはこの技を進化させます。自分の周辺に闘気を張り巡らせ、決死の覚悟で敵をふせぎ、スキを見て反撃する……その効果は次の回を見なくてはわかりませんが、キギロ討伐に成功してほしい、できたら生き残って欲しい。祈るようにそう思いました。
 もともとダイシリーズは己の技を磨きあげるための、血のにじむような工夫の積み重ねですし。技というと「小手先の」とかがつきそうですが、ダイ大キャラの使う技はそのキャラの人生や一番の願い、譲れない大事なものを全部乗せて放つものだと思います。現在ダイ大二次をやっていてそう実感しました。

 さて、今回の進捗報告はその流れで、マァムさんのお話。スタイルのいい健康美人で気持ちの優しい少女だが恋愛関係にはうぶ、かつ、かなり鈍い。捏造魔界編におけるマァムがどんな活躍をするのだろうと考えた時、ダイが竜の騎士になったときマァムが空戦騎になるのでは、と思いました。理由はシンプルで、空戦騎なら空に棲む竜の長であるはず、そして代表的な飛竜としてスカイドラゴンのようなオリエンタルドラゴンをイメージしてみたら、武闘家マァムが良く似合うと思ったからです。チャイナカラー、ロングスリットの武闘着を着てくれたらぴったりかも。
 だとすると、空戦騎に就任するために試練があるのでは?内容は今も考え中ですが、その試練のときマァムが使用する技が特別なものであってほしい。
 イメージでは、ガンガン襲ってくる攻撃をすべてはじき返して耐える、というもの。
 そんなときに獄炎最新話ロカの「豪破一刀」を見て、これか!と思いました。
 もともとマァムは武闘家なので、闘気をあやつることにはむしろ慣れていると思います。闘気をもって自分の周囲に円形の領域をつくり、その中に入ってくる攻撃を見定め、冷静に弾き返す。
 それでその領域の中心に立ち、両手を前に出して架空の剣に重ね、正統のかまえをしてくれたらいいなと思いました。
 しかし。マァムのこの技はとうとつに出てきちゃいけないのだと思います。そこに至るまでのプロセスがたぶんあるはず。その最初のとっかかりはこんなイメージです。マァムと話しているのはアバン先生。

「ネイル村を飛び出したあなたは稀有な体験をしてきたじゃないですか。ロモスからバーンパレスにいたるまでの戦いを思い返してごらんなさい」
「私、無我夢中で」
「みんなそうでしたよ。マァム、ですがあなたはその道のりで、当時最強の武闘家三人の戦いを見ていたはずです。一人は老師。次はハドラー。最後にバーン」
 マァムは目を見開いていた。
「ええ、ハドラーもバーンも体術に呪文を組み合わせて使用するスタイルの武闘家なのです」
 マァムは顔を上げた。
「何かわかってきました。私、考えてみます」
 いい顔だ、とアバンは思った。
「それならひとつアドバイスがあるのですが、聞いてくれますか」
「ええ、何でしょうか?」
 何から話せばいいか、とアバンは迷った。まっすぐに見上げる瞳の、ある意味不器用で傷つきやすく、それゆえに人の心を惹きつけるこの少女に、その父の話をどう始めればいいか。
「カール騎士団の正統の剣を知っていますか?」
「いえ」
「魔界へ出発する前に、カール騎士団の修練場へ行くべきです。騎士団正統の剣において、その初撃は他流にはあまり見られない独特のスタイルを持っています。『豪破一刀』と呼ばれるそれを、一度見学してください」

このあと魔界に入って雑魚敵(文中では「ラノ」)と遭遇。初めての実践はこんな感じ。

 ラノがとびかかった。人の身長の倍ほども飛び上がって自慢の爪を振り下ろした。
 時間が引き延ばされて、ゆっくり進んだ。
 ラノの爪を真下からマァムの手刀が受けた。
 モンスターであるラノの目にも追えないほどの速さで手刀が迫る。彼女の白い手は陽炎をまとっていた。
 手刀が爪をとらえ、押し上げ、はじき返した。
 弾かれた腕に強烈な衝撃があった。ラノの身体が一度浮き、次の瞬間、背中から地べたに激突し、勢いよく転がった。
「うっ!」
 背中どころか、全身が痛かった。ラノは痛みに耐えて脂汗を流した。
 マァム!と名を呼んで旅の仲間たちが駆け寄った。
「今の、フェニックスウイングか!」
「あれはバーンの身体だけができる技」
とマァムの声がした。
「今のはアバン先生のアドバイスで私が老師に相談して工夫したの。だからもうフェニックスウィングではなくて」
 ラノの視界の隅に、すらりと立つマァムの姿があった。左手で右手をおおっているが、どこかはにかんだような表情だった。
「武神流鳳凰掌、よ」
「よく、ここまで」
 ヒュンケルが短くつぶやいた。
「ピオラとスカラを、インパクトの瞬間に放つ。実戦で使ったのは今日が初めて。でももっと工夫しないとね」

これをなんとか工夫して、後のほうで再登場させたいです。

前回から引き続き、本題のダイ発見のほうですが、ダイの中にいたヴェルザーを追い出したとたん、ダイが逃げ出すという設定をしてみました。バーンの言葉に縛られ、地上へ帰ってはいけないと思い込んでいる状態です。ダイは、近くにあった城の廃墟(元・バーンの第七宮廷)へ逃げ込み、瓦礫の奥に隠れます。瓦礫の前まで仲間たちが追い付いてきて説得にかかる、というシーン。ダイは、仲間たちの姿は見えないけど声は聞こえています。冒頭でしゃべってるのはヒュンケルさん。

「竜の騎士は強さゆえに迫害される、とバーンは言ったそうだな。ヒトは恩知らずだ、ヒトは異端者を排斥する、と。そういう面も確かにあるだろう。だが、そればかりがヒトの姿ではないと、おまえは知っているはずだ」
「それは……知ってる。知ってた。でも、竜魔人になったときのおれは、ほんとに戦うことと勝つことしか頭にない生き物なんだ。こんなおれを受け入れてくれる世界なんてないよ」
「俺は罪人だ、ダイ。今でも償いきれてなどいないと思っている。だが、こんな俺でも地上は受け入れてくれた」
 ダイは両手で顔をおおった。
「ヒュンケルはれっきとした人間じゃないか。おれとは違うよ」
 昔の仲間の前でみっともなく泣き出したりしたくない。ダイは震えてくるあごを手でおさえた。
 ヒュンケルが何か言いかけてやめた。ポップの声がした。
「おれの出番だ」
 マァムがささやいた。
「どうにかできそう?」
「どうにかっていうか、あいつ、昔のおれとそっくりのこと言ってるんだよ」
「昔とは?」
とヒュンケルが尋ねた。
「おめぇの処刑場で、ミナカトールのための魔法陣を五人で描こうとしていたときさ。だからおれ、あいつが今どんな気分なのか、ちょっとわかるんだ。なあ、ダイ?話をしようぜ。五年ぶりなんだからよ」
「だめだ」
 弱弱しくダイは抗議した。
「おれにとってレオナもポップたちも、どんなに大事かわからない。でも、だからこそ、おれは地上の世界には触れられない。わかってよ。説得なんてやめてくれ」
「それじゃ、ひとつ教えてくれよ」
 背は高くなり、声は低くなったけど、ポップの口調は昔と変わらなかった。
「ダイ、おまえ、勇気って目に見えるか?」

今、いっしょうけんめいポップの説得にかかわるロジックを作っているところです。なんとか説得力のあるロジックを持ってこないと、このあと全部ご破算なので。がんばってみます。

拍手御礼(7/22)

>みんと様、こんにちわ。前から読んでくださってありがとうございます。DQ5愛で5二次書き始めましたが、そのころの熱意とかエネルギーとか、気恥ずかしさ半分なつかしさ半分で今でも思い出します。というわけで、そのころになりきってひとつ。
「ありがとうっ!ヘンリー大好きなやつが張り切って、たっぷり盛って書いちゃいましたっ。気に入ってもらえたら最高にハッピーです。また来てねーっ!」……書きながら冷や汗が。でも、ほんとにこんな気持ちです。

拍手御礼(7/18)

>10年以上前に~の方、いらっしゃいませ。十年ひと昔なんて言いますが、個人サイトはほんとに少なくなりましたね。とんぼは今でもPixivさんとかよりも自分のサイトのほうがリラックスして書けるので好きなのです。おかえりなさい。また楽しんでくれたら何より嬉しいです。

ご指摘御礼(7/13)

>最初にわれに~の方、ご指摘ありがとうございました。このサイトとpixiv版の両方で変換ミスをやってましたので、さきほど修正してきました。こういうのをきちんとしたいというのがpixiv投稿始めた動機の一つなんですが、なんというか情けないです。さてピサロ氏は「ジャハンナへの道」「エルフの時代」と続けて苦労人ぽい役割だったので、ここではっちゃけてもらってます。で、魔王様がはっちゃけるにはマスドラが悪役じゃないと形が決まらないわけで、ちょっと意地悪なマスドラになりました。そういえばピサロ少年が主役のDQM3、四天王も登場するんでしょうかね。ピサロナイトがわりと初期モンスターだとうれしいかも。DQM3はとにかく気になってます。

獣王会心撃!(6/25)

月に一度の捏造魔界編、進捗報告させていただきます。今回はクロコダインのお話。ご存じ、推定年齢30歳、メインキャラたちから年上のおじさん扱いされる男前の爬虫類系モンスターです。彼のセリフの一つ、「男子三日会わざれば刮目して見よ」、は三国志演義が出典だそうです。クロコダインの持つ古代中国の名将のような貫禄にずっと心を惹かれていました。恵まれた巨躯や怪力が生み出した余裕にも見えましたが、クロコダインの本領はダイたちに負けた時から始まるので、もともと潔い性格なのだと思います。理想的な「大人の男」像のひとつ。

 しかし、これを二次創作で再現するのはほんとに難しくて頭を抱えました。そこで考えたのが、クロコダインのすごさを文章で説明できないなら、他のキャラに「あいつはすごい」と言ってもらおうという計画です。下は魔界探索の一シーンです。クロコダイン、ヒュンケル、マァムというメンツで魔界のとある島にある酒場へ聞き込みに来ています。

 酒場の椅子は空き樽だった。クロコダインは悠々と腰かけると、悪魔系らしい店主にむかって機嫌よく話しかけた。
「この土地で酒が飲めるとは思わなかったぞ。何があるんだ?」
 褐色の肌に尖った耳を持つ店主は背後を指した。
「スパイス入りの麦酒に蜂蜜酒、あとは果物で作ったシードルだね」
「ほう。俺と連れに麦酒をひとつずつもらおう。ご婦人にはシードルを頼む。そうだな、肴はないのか」
「ここんとこ、めっきり物資が入ってこなくてね。手持ちのつまみで呑んでもらってるよ」
 店主はじろりと二人の人間を眺めた。
「お客さん方、地上から来たのかい?」
そうだ、とヒュンケルは短く答えた。愛想の悪い店主は肩をすくめた。それでも“出て行け”のようなことは言わず、カウンターに不揃いのマグを三つ置いた。

酒場での聞き込みの結果、隣の島へ渡ることになりましたが、橋の上で巨大な海蛇が襲ってきました。クロコダインは大蛇の頭部を斧で石橋に縫い留めます。ヒュンケルたちが助けにいきますが橋はこわれかけていました。

 視線だけ動かしてクロコダインは仲間を見た。
「ダイを助けろ、ヒュンケル」
 足元からぼろぼろと石が零れ落ちる。
「必ずダイを地上へ戻せ」
 その瞬間、クロコダインは斧を解き放った。白刃を三列に植え付けたような上あごがギロチンのように落ちかかる。抜いた戦斧を下から上へ、クロコダインはたたきつけた。
 声にならない怒号をあげて、海蛇が暴れた。断末魔の海蛇は、橋の残骸をついに砕いた。
「行けえええっっっ、走れえええええっっっ!」
 クロコダインの怒号が背中を押した。きつく目を閉じてヒュンケルが首を振った。物も言わずにマァムを促して橋を渡り始めた。
 マァムは一度ためらい、意を決したようすでヒュンケルの後を追った。
 海蛇がクロコダインの身体を口の中に呑み込み、大きく身を起こした。勝利に驕ったかのように頭部を高くもたげ、海上高く蛇身をくねらせた。が、くぐもった声が聞こえた。
「獣王激烈掌!」

からの、クロコダイン漂流、そして孤島の要塞での籠城戦に参加するという流れです。

それから、ダイ発見の段取りですがこんな感じになりそうです。パーティが橋を渡って隣の島へ⇒竜の谷で人間の子供を発見(ただし遠くからなので話しかけられない)⇒近寄って話しかけると「あ、ポップだ」とごくナチュラルに反応⇒ここから疑惑がつのり、前回(睡眠中にバランの魂がダイの口を借りてポップに救援を求める)シーンへつなげます。
↓は遠くから見た魔界のダイ。

 頭上の厚い雲は風に流されてふと切れ目ができた。その間から、太陽ではない何か不思議な光源から光が差し込んだ。湖に張り出した大岩の上に、スポットライトのようにひとつの人影が浮かび上がった。
 マァムは息を呑んだ。
 人間の子供に見えた。小柄な体、ふっくらしたほほの黒髪の少年だった。ポンチョのような貫頭衣を頭から被り、下はズボンとブーツ。目を凝らしても武器の類は見えない。
「おい、あれ」
 ポップの指がわなないていた。
「ダイ……」
 大声で呼べば消えてしまうと思っているかのように、ポップは低くささやいた。
 ポンチョの少年が腕を肩の高さに上げ、軽くひじを曲げた。ベビーニュートはそのひじのあたりに着地して、ようやく翼を休めた。
 もう片方の手で少年はベビーニュートから首輪のようなものを外してやり、ちらりと筒を見ただけで興味無さそうに後ろへ投げ捨てた。すぐに疲れきったベビーニュートをやさしく撫でてやっていた。ベビーニュートは鼻先を少年の耳のあたりにこすりつけて甘えた。
 少年が何かささやいた。目を細めて笑う顔は、無邪気そのものだった。
「ダイだ!やっぱりダイはいたんだ!おーい、ダイっ」
 距離がありすぎて対岸の少年は気づかない。くそっとポップはつぶやくと、猛然と走り出した。
「俺たちも行くぞ」
「ええ!」
 進めばまたシダの林に入るので、少年とベビーニュートは見えなくなってしまう。だがマァムは対岸のようすに心を奪われていた。
 光が雲上から柱のように降り注ぐ。大岩は古代の大地のようなコケやシダに覆われ、濡れた葉のふちが輝いて見えた。中心にいるあどけない少年も細かな光の粒子をまとい、幼竜に向ける笑顔とあいまって魔界に降り立った天使のようだった。
 ふとマァムは気づいた。三人のオークが天使に近づいている。槍を構え、数を頼みに、彼らは明らかに蹂躙しようとしていた。
「あいつら、よくも」
 思わずマァムがそうつぶやいた瞬間、異変が起こった。
 腕に幼竜を止まらせたまま少年は歩き出した。そしてなにげなくもう片方の腕を水平に払った。
 何が起きたのか、先頭のオークにもわからないようだった。きょとんとした顔つきのまま、オークは足を止めた。もう一歩踏み出した時、喉笛から体液が吹きあがった。
 愕然としてマァムは立ち尽くした。
「×◆▽◎□×××!」
 仲間のオークの叫び声と、空気を震わせる振動が同時だった。ごとんと音を立てて、猪頭がふたつ岩の上へ転がった。天使のような少年は、犠牲者のほうに視線を投げることすらしなかった。
「マァム、急げ!」
 ヒュンケルに名を呼ばれてマァムはようやく我に返った。対岸から目をそらせ、シダの茂みへ走り込んだ。
 紋章閃、とマァムはつぶやいた。人がうるさいハエを払うように、なにひとつためらうことなくオークの命をあの子は消し去った。
――ダイじゃない。ダイはそんなこと、しない!
けれど、ダイのほかにこの魔界で紋章閃を使える者がいるだろうか。どうかダイではありませんように、とマァムは祈りながら走り続けた。

ダイは本編ラストで上半身裸だったので、ポンチョを着てもらいました。はやくそこまで書きたいのですが、先は長いです。後半なんか、全然できてないし。それから先月Pixivさんに進捗報告をアップしたところ、大勢の方に見ていただけました。ありがとうございます。今回のもそのページを編集して付け加え、今月の月末まで全体公開します。よろしくお願いします。

追悼ガンガディア(6/22)

昨日今日でちょっと感情がジェットコースターに乗ってるみたいです。まずはガンガディア対マトリフ、最高でした。ガンガディア、もともとラストダンジョンの中ボスとして、怪力の頭脳派という鉄壁の敵キャラでした。けれどそれよりも、最強の技を封じ(メドローア)、弱点を突く(魔法使いの体力)という、正統の戦い方そしてくれました。どちらもマトリフを正しく評価していなければできなかったはず。

しかし師匠のほうも、はったりかましてスキをつくらせ、千載一遇をとらえて勝負に出る。これもまた、攻撃に耐える⇒相手の心理を読んではったり⇒敵の技(ドラゴラム)を逆手にとっての勝負、という正統返しをやってくれました。

今回、絵面にも目を見張りました。一番欲しかったのはその時間(スキ)だ!と明かすマトリフの表情がすごく好きです。ダイ大本編の海千山千の師匠も好きなんですが、それよりも若くて(でも確か後期高齢者)熱いマトリフに胸が震えました。

ああ、濃い戦いだった。ガンガディア、あいつ最期にちょっと、笑ってやがったぜ……。

それから、なんですが、本日「ドラゴンクエストモンスターズ3」の発売が発表されました。主人公がピサロ。若いピサロ。あら、ま、どうしましょ。これは本編のピサロとは微妙に細部が異なる?一種のパラレル?理性はやめろと言ってます。発売は年末ですって。オフも忙しいし、ダイ大二次も山場だろうと思います。それなのにっ!!!どうしてとんぼは予約特典を見比べてるんですか。いかんだろう。と思いつつ、たぶん買っちゃう。若いぴーさま、チョイたれ目だけど。

追記:捏造魔界編の進捗報告は、25日の予定です。どうかよろしく。

拍手御礼(6/4)

>エルフの時代~の方、いらっしゃいませ。丁寧なご感想をありがとうございました。もともと「エルフの~」は、そのころ考えていた天空編全体の妖精/エルフの考察めいたものから始まりました。マスタードラゴン対ロザリーの問答は、現実対ファンタジーの対立を舌足らずながら代弁した感じです。物語のツボになる部分に理屈っぽいことを並べてしまのはとんぼの悪い癖なのですが、かっこよかったと言ってくださってうれしいです。言及していただいた作品からして、サイト創設以来の読者様でしょうか。ずっと読んでくださってほんとにありがとう。

拍手御礼(5/30)

>どなたの二次創作か~の方、ドクターヒュンケルのお話すてきですね。顔のいい男は眼鏡が似合うというのが持論です。年下の冒険者に教えを請われるみたいな情景が思い浮かんで、素敵……と妄想しました。pixivの目次のほうは自分で自分のおしりをたたくみたいな行為です。六月の進捗報告ではまたちょっと埋めたいと思っています。コメントありがとうございました。

拍手御礼(5/28)

>そういや戦いの~の方、いらっしゃいませ。おとーさんにしてみれば、ダイ君の中で思う存分親バカしてたら仇敵のヴェルザーがちゃっかり入ってきたんでムカつく……という状況です。ヒュンケル兄さんは(とんぼの捏造設定で)今回アバン先生の代理で魔界探索に同行しているので、ここはがんばっていただきたい。やっぱりアバンの使徒四人組好きだ、としみじみ感じてます。コメントありがとうでした。

おまえ、ほんとにダイなのか?(5/26)

 だいぶ間があいてしまいましたが、捏造魔界編の進捗など報告です。
 今までアウトラインに沿って考えてきました。そのため、ダイ発見の手がかり⇒魔界への入り口⇒魔界探索と続いています。魔界探索は一エピソードに付き使徒一人をフィーチャーする感じで、三、四話を重ね、そこからダイ発見へもっていくつもりでした。
 マァムとポップをメインにしたエピはだいたい目途がついたのですが、ヒュンケルにいたって欲が出ました。どーしてもっ、バルトスさんをからめたい。おりしも「勇者アバンと獄炎の魔王」では勇者一行が地底魔城へ突入しているので、もう少ししたらアバン対バルトスの一騎打ちになるはず。それを待ちたいと思います。
 というわけで、先にダイ発見のほうの構想を進めることにしました。アウトラインではこんな感じです。
 魔界ではダイの輝聖石をとりつけた羅針盤の指す方へ一行は進み、某所(今のところ“竜の谷”と名付けた土地)でダイ(12歳のまま)を見つけます。ごくナチュラルにダイは捜索隊に話しかけ、パーティはホッとします。「これで地上へ帰れるね」
 しかし。何かがおかしい。違和感がある。
 ダイは……
(1)かつての大魔王戦で戦った仲間の一部を記憶していない。「クロコダイン……て、誰だっけ?」
(2)地上の仲間と会話する(とあるアイテムで連絡可能)のをためらい、特にアバン先生と話したがらない。
(3)かつてのダイなら言わなかったような、あるいは、やらなかったような言動がある。「そんなやつ、ほっておきなよ。自業自得じゃないか」
 これ実は最初のほうで、「冥竜王ヴェルザーの本体は封印されたが、魂だけがダイにとりついている」という設定があるため。とんぼはこの状態のダイを仮に「魔ダイ」と呼んでいます。原稿にするとこんな感じです↓

――おまえ、ほんとにダイなのか?
 ポップはしげしげとダイの寝顔を眺めた。あどけない顔立ち。ほほに十字型の傷。さきほど着替えさせてやったときに、デルムリン島のブラスとポップしか知らないほくろが体にあるのも確認した。人違いのはずはなかった。
 ポップはためいきをついた。ダイが十二歳の姿のままなのはハーフだから。うまくいきすぎて不安になっているだけ。そう自分に言い聞かせてみた。
――疑ってごめんな。
 心の中でそうつぶやいて、ポップはダイの前髪をそっと撫でた。
 ダイがみじろぎした。そのまま手をついて身を起こした。
「悪い、起こしちまったか?」
 ダイは向き直った。ポップは言葉に詰まった。
「おい……」
 心が眠っているのに体が動いているのだろうか。ダイの目は開いているが、瞳に光がなかった。
「魔法使いの……少年よ」
 ざわぁ、とポップの背筋に悪寒が走った。まちがいなくダイの声だった。が、話しているのは見知らぬ存在だった。
「この子を……助けて……やってくれ。竜に……魂を……乗っ取られかけて……いる」
「お前なに言ってんだ?乗っ取りって何のことだ?」
 人形のような無表情、夢遊病のような動作なのに、口調はどこか切迫していた。
「このままでは」
 言いかけて、ダイはぴくりと動いた。
「む、竜が目覚める」
 もうまぶたがさがっている。再び眠りにおちようとしていた。たまらずにポップは叫んだ。
「おい、待てよ!おまえ、誰だ?!」
 睡魔に抗うようにのろのろとダイの両手が上がった。掌を前方へ突き出し、ポップの顔をはさむように動かした。
「なんだ?耳をふさぐつもりか?」
 いきなりダイが目を開いた。
「あれ?おれ、寝ぼけちゃった?」
 きょとんとした顔だった。それはポップのよく知っているダイそのものだった。
「あ、ああ。そうみたいだな」
 へへ、とダイは笑った。
「みんなに会えて、安心したからかな」
「しっかりしろよ。相変わらずだなあ!ロモスの宿屋でそれやったときは、おねしょしてなかったか、たしか?」
 ダイは、昔と同じ表情でふくれた。
「そんなことまだ覚えてるの?やだなあ、忘れてよ」
「わかった、わかった。あー、眠いな。明日は早いぜ?寝ろ、寝ろ」
 うん、おやすみと眠そうにつぶやいてダイはころんとマントにくるまり、寝転がった。ポップもその傍らに身を横たえた。
――間違いない。こいつ、ダイじゃない。
 暗闇の中でポップは目を見開いていた。ロモスではおねしょなど、ダイはしていなかったのだ。指先が震えるのをぎゅっと握り締めてポップはこらえた。

というわけでポップはマァムに相談しますが、マァムにもわかりません。(ただし、ダイがダイらしくない、とは思っている。)次はヒュンケル↓

「俺に相談とはなんだ?」
 いつものように冷静な口調だった。まわりくどく言うのはヒュンケルには効果がない。ずばりとポップは言い始めた。
「あのダイは偽物だ。正体を暴くのを手伝ってくれ」
 ヒュンケルはわずかに眉を動かしただけだった。
「断定できるのか」
「できる。というか、タレコミがあった」
 ポップはダイの夢遊病とそのあとの会話をヒュンケルに向かって語り直した。
「……というわけさ。どう思う?」
「まず、竜とは?」
「勘だけど、“最後の知恵ある竜”こと、冥竜王ヴェルザー」
ふむ、とヒュンケルはうなずいた。
「妥当な線だな。では、あのダイの体の中に、ダイ本人の魂とヴェルザーの魂が同居しているのか」
「そういうことだ、おっと、もうひとり、夜中におれに話しかけてきたヤツも同居だよな」
「誰なのだ?」
「マァムにも聞かれたけど、わからねえ。ヒントは、誰だ、と尋ねたときにこう、両手をあげておれの顔をはさむ、っていうか、耳をふさぐみたいな手つきをして」
 ポップは言葉を切った。ヒュンケルの顔色が変わっていた。
「おい、待て。こうか?」
 ヒュンケルはわざわざ手を出して、自分でポップの両耳に左右の手を添えた。
「ああ、こんな感じだ。なんだよ、心当たりがあんのか?」
 ヒュンケルは目を見開いていた。
「……メガンテだ」
 は?とポップは変な声をたててしまった。
「そいつは耳をふさごうとしたわけじゃない。指をこめかみにつきたてようとしたんだ」
「えっ、それって」
 ポップが自己犠牲呪文メガンテを放ったのは、一度しかない。五年以上昔テランにて、ダイが記憶を奪われ、本人の身柄も竜騎将にさらわれようとしていた時、非力な魔法使いにできる唯一の方法として実行した。
 ヒュンケルがうなずいた。
「マァムにわからなくても無理はない。彼女はあのとき、テランにいなかった。“おまえは誰だ”という問いの答えがメガンテ。ということは」
「バラン!」

 こうして使徒たちはダイの身体からヴェルザーを分離する計画を始めます。一番書きたいとこだけ書くって、なんて楽しいんでしょ。でもお話として完成するには、書きにくいところもがんばらないと。ちょっと前に「この進捗状況をPixivでまとめたい」みたいなことを言ってますが、絵師さんと違って文字書きが進捗報告をするってけっこう難しいなと思いました。とりあえず、近日「捏造魔界編」としてアップするつもりです。
 さて明日は5/27、ドラクエの日ですよ~。主人公たちの集合絵を描いてくださる絵師さん方、ほんと凄いと思う。明日は楽しみに見て回ろうと思います。

追記:やってみたらできました。ダイ大二次捏造魔界編アウトライン@Pixiv⇒https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19955816

再追記:6/1現在、上記Pixivアップは全体公開を取りやめています。次回公開は6/25の予定です。

軍団長コンビ(5/4)

>内外呼応して~の方、熱いシーンをイメージしていただいてありがとうございます。あんまり嬉しかったんで、テキストに起こしてみました。

 血糊ですべる武器の柄を、クロコダインは握り直した。周囲の海は墨を流したような黒一色、波間には銀の鱗に覆われた海蛇の太い胴が絶え間なくうねり、島の周りを壁のように取り巻いていた。鱗の山が一度うねるたびに海藻のかたまりのような生き物が三又の槍を手におしよせてくる。彼らは強くはないが、どんなに斬ってもしつこくくいさがるため、味方の爬虫類系獣人たちは手を焼いていた。
「ひるむなぁっ、ここが正念場だっ」
おうっ、と仲間が叫び返す声もとぎれとぎれだった。
 ぴく、とクロコダインの顔がひきつった。強い闘気を感じた。魔界へ来て以来、ほとんど初めてだった。暗黒闘気の使い手がいるのか。絶望が視界を黒く塗りつぶそうとしていた。
――いや、これは、まさか、光の闘気かっ?!
左右に顔を振ってクロコダインは闘気のでどころを探した。この魔界で光の闘気をここまで高めることのできる戦士は、パーティしかいない。
 どん、と戦斧を足元に突き立て、クロコダインは両腕に全身の意識を集中した。光の闘気のチャージがみるみるうちに高まっていくのがわかった。
「ここだぁっ!」
虚空の一点に照準を合わせ、クロコダインは闘気を放った。
「獣王激烈掌!」
間髪入れずに光の闘気が放たれた。
「グランドクルス!」
海藻の化け物の大軍を吹き飛ばし、二か所からの攻撃が海蛇の長大な胴の一か所をねじ切り、吹き飛ばした。
 味方から大歓声があがった。その中へ飛び込んでくる人影があった。
「無事だったか、クロコダイン」
いつものように冷静にヒュンケルはそう言ってから、ふと口元をほころばせた。
「よく合わせてくれた」
礼を言うならこちらのほうだ、とクロコダインは思ったが、笑いがあふれ出るのを止められなかった。
「長いつきあいだからな!」
ぶん、と音を立てて戦斧をとりあげ、かまえた。
「あれは敵の一部だ。まだ本体がいるぞ」
「心配するな」
くい、とヒュンケルは海の方へあごを振った。
「助っ人はまだいる」

あああ……楽しい!せっかく魔界編を捏ねるんだから、戦闘シーンはスターをそろえて派手に演出したいじゃないですか。ポップの指向性マヒャドいいですよねっ。この時点でダイが復帰している想定なので、もうジャカスカいきたいと思います。実は、一番困っているのが敵の設定です。なにせ大魔王を下したオールスターが挑むわけで、どんだけインフレした敵を造ればこのチームが苦戦してくれるのか。いつもとんぼのぐだぐだにつきあってくださってありがとうございます。ラブラブな「カンパニュラ」のほうもご感想ありがとうでした。

いろいろと不調、ただし(5/2)

4/23に書いたビアンカのためのss「カンパニュラ」を、ようやくアップできました。使っているPC,スケジュール、親戚、とんぼの健康の不調が重なりまして、いろいろと遅れが出ています。ただし、脳内だけはぱっぱらしています。何がぱっぱらかというと、魔界のクロコダインさんの新しいシーンを思いつきまして。

いきなり「籠城戦」というキーワードが降ってきました。なんか、魔界の海に囲まれた島=要塞みたいなところにクロコダインさんがいて、爬虫類系二足歩行のモンスター、シュプリンガーみたいな皆さんを励ましてるところです。「きっと味方が助けに来る。それまで持ちこたえるのだ!」もちろん、先頭に立って戦斧を振るい、一歩もひきません。が、多勢に無勢、あわや、というときに、ドラゴンの騎士が駆けつける、というシーン。それとも、さしものクロコダインが“ここまでか”と、うなだれそうになったとき、十字型の閃光とともにヒュンケルが飛び込んでくる。グランドクルスを狼煙に代えて、味方の突入、なんて絵もいいな……。

などというシーンを、細部を代えながら脳内でリピート上映しているために、三次元への対応が壊滅的です。まあ、昔からなんですけどね。

拍手御礼(4/27)

>獄炎の魔王~の方、いらっしゃいませ。獄炎の柴田先生、元のダイ大にかなり寄せてくださってますよね。第一話がもう「勇者アバン」にすごく忠実で、この先の勇者アバンを見たい!という気持ちにさせてくれました。戦士ロカ、いいですよね。何を隠そう、とんぼは「親友キャラ」というものにたいへん弱いです。パーティはこれから地底魔城突入だと思いますが、活躍してくれるのを期待してます。コメントありがとうございました。

心の声がだだもれ(4/26)

今取り掛かっている捏造魔界編ですが、現在獄炎の進行待ちです。四月は主にポップの話を作っていました。魔界に入って敵にからまれ、撃退という流れですが、このとき周りにいたの一種の魔族ということにしたいです。イメージはドワーフ、というか、「白雪姫と七人の小人」の小人みたいな感じのみなさん。つまり、鉱石を掘り出す技能の持ち主です。

 元の長さに戻したブラックロッドを肩に担ぎ、片手を目の上にかざしてポップはぶっとんだリカントを眺めていた。
「呻いているところを見ると、死んだわけではなさそうだ」
と、ヒュンケルは答えた。
「ちょこっと魔力を変換しただけなんだけどな」
 心外だという顔をしているポップの肩を、ヒュンケルはかるくたたいた。
「おまえの『ちょこっと』は相当なものなのだ」
 横からマァムがのぞきこんだ。
「アバン先生とそんな練習してたのね。すごいじゃない」
 ポップはへへっと笑った。
「まあ、護身用だけどな。あいつもこれでつきまとうのやめるだろ。さ、行こうぜ」
 そう言って歩きかけて、ポップの足が止まった。村の住人たちが、かたまってこちらを見ていた。
「やつらのようすが妙だ」
 岩堀族は、最初に会った時の敵意むき出しではなかった。むしろ、興味津々とこちらをながめている。先頭にいる村長らしい屈強な岩堀族の男が、まるで憧れてでもいるかのように、眼をきらきらさせていた。
「お、そ、その、得物、どこで手に入れた!?」
 ポップはきょろきょろしてから、ようやく自分が聞かれているのだと納得した。
「ブラックロッドのことなら、ひとにもらったんだ。一回壊れたのを、直してもらってまた使って」
 最後まで言わせずに村長が詰め寄った。
「誰だ、誰にもらった!」
 余りの勢いにポップが後ずさりした。村長の後ろから、この村の全人口ではないかと思われる人数が詰めかけていた。
「ロン・ベルク」
 いきなり村全体が制止した。
「おまえたちが聞きたいのは、製作者の名前だろう。こいつが持っているのは魔界の名工ロン・ベルク作の杖、ブラックロッド・改だ」
とヒュンケルは答えた。
 村長はブラックロッドから目を上げた。
「ロン・ベルク殿は、生きていたのか?!」

きっとずっと先だと思いますが、この捏造魔界編でダイが見つかったら新しい竜騎将になってもらう予定です。その就任に必要なのが真魔剛竜剣というのはありか、と。で、バランの真魔剛竜剣は、ダイが本編ラストの鬼眼王バーンとの闘いで折っちゃいました。新しい剣が必要なのです。ゆくゆくはその剣の材料になる鉱石を提供する一族として登場予定。もちろん、新しい剣は「ダイの剣」をベースにしてロン・ベルクが……ノヴァが作ることになると思います。こういう計画はしみじみ楽しい。計画倒れになるかもしれないけど。

あと、とんぼは今DQ5の二次創作ゲーム「HeavenlyBrideV.Vクロスクエスト」を始めました。有志によるDQ5の続編ですが、知っているのに知らないV.Vワールドがなんとも楽しいです。なんでもDQ5の並行世界をまたにかけて進行するのだとか。のっけから5主が闇墜ちしてて「おおお」と声が出てしまいました。なんか、たぶん、もしかして、並行世界のどこかには闇墜ちヘンリーもいるもよう。ま、どうしましょう、わくわく、と心の声がもれてしまうくらい先が気になります。

パーティ再結成(4/7)

 先日「獄炎の魔王」七巻を手に入れました。楽しみに待っていたかいがありました。勇者アバンのパーティ、勇者、戦士、魔法使い、僧侶がそろうあたり、これはもう由緒正しきドラクエの伝統!と感じられて心がじんわりしました。それから真・アバンストラッシュの完成シーンを見ることができました。アバン先生が戦っていた相手は、真ミストバーン+よろいみたいなもんでしょうかね。怨念と強く結びついた特殊なモンスターが物理防御を手に入れた、みたいな感じで。空裂斬⇒アバンストラッシュがその系統のモンスターのコアを斬ることができる……妄想はかどります、ありがとうございます。
 うわさの子ヒュンケルとクロコダイン、のちの軍団長コンビの初邂逅もよかった。とんぼは5主のように、子供⇒大人とイメージが成長するキャラにいつも惹かれます。ヒュンケルは、憎悪に満ちた軍団長、孤高の剣士にくわえて、健気な男の子のイメージもできました。いいな……とっても、いいな……。
 バルトスとガンガディアがザボエラに会ったあと、苦い顔をしていました。がいこつでも表情があるんですわ、バルトスは。ダイ大原典のやさしいイメージも好きですが、獄炎のバルトスは男前で心を惹かれます。シナリオ上、彼は勇者と一騎打ちをするはずですが、どんな勝負を見せてくれるかと、待ち遠しいような怖いような気持ちで待っています。
 自作の二次がらみでクロコダインが気にかかっていたのですが、出身地等の情報はありませんでした。ただ地底魔城のある場所の名前がヴィオホルン山と判明しましたので、今度からその名前で呼ぼうと思います。で、この山はダイ大時代に入ってフレイザードのせいで噴火するはず。そのあとって、どうなるのかしら。ブラタモリでも見て勉強しようと思います。

拍手御礼(3/27)

>とゆーことは、の方、さっそくありがとうございます。クロコさんは「獄炎の魔王」で出身地出てこないかな、と思って待ってるところです。この人が海戦騎になるのは公式設定だったはずなので、魔界に来られないといろいろと困りますです。どうしてもだめなら、このゲートキーパーの制約とかは書き直しですかね。完成までに鬼のように書き直すのは覚悟の上。大変だろうけど、ワクワクも大きいです。いっしょにワクワクしてくれたら何よりです。

捏造魔界編、今月の進捗(3/26)

一か月に一度の割合で進捗を報告しているダイ大二次「捏造魔界編」ですが、今月のご報告など。ダイの輝聖石が見つかった⇒それを手掛かりに探しに行ったら旅の扉⇒入ろうとしたら門番が止めた、みたいな流れは確定しました。この門番、今は「ゲートキーパー」と呼んでいますが、こいつの存在意義は“キャラの舞台への出し入れ”です。ダイ大のキャラは実に多く、とんぼはみんな大好きですが、非力なとんぼが一度に動かせるキャラの数は三人かせいぜい四人です。というわけで、こんな制約をつけることにしました。

「これは魔王ハドラーの持ち物だったそうです。この旅の扉は魔界に通じていると聞きました。当時の俺は興味がなく、モルグに銘じて撤去させました。モルグはこの倉庫へしまいこんだのでしょう」
無言でアバンは一行に羅針盤を見せた。輝聖石は明らかに旅の扉を指していた。
「ようしっ、あいつのいるとこまであと一歩だ!」
腕まくりする勢いでポップが飛び込もうとした。
 突然室内に真っ赤な光があふれた。
「立ち入るな!」
重々しい声が旅の扉から響いた。
 アバン夫妻と使徒たちは一斉にかたまった。
「あなたは誰です?」
アバンが尋ねた。
「我は地上と魔界を分かつ門を守る者、ゲートキーパーである」
と声が答えた。
「古の神々が我をここに配置した。地上生まれの者は魔界へ入ってはならない。魔界生まれの者は地上へ入ってはならない」
マァムは手のひらで腕の鳥肌を撫でた。落ち着くのよ、マァム!そう自分に言い聞かせたが、震えが止まらない。まるで大魔王バーンが傍らにいるような緊張感に縛られている。アバンはじめ仲間たちもじっと警戒していた。
「ゲートキーパー、あなたはどうやら本物のようだ」
とアバンが言った。
「あなたが神に造られた者、神々の遺産だというなら、教えていただきたい。数年前までこの地上には魔族など魔界の住人たちが堂々と跳梁跋扈していた。なぜそのようなことが可能だったのですか?」
ゲートキーパーの声はきしむような音を立てた。
「我の守る門以外の出入り口を設け、そこを出入りした者たちは確かにいた。だが、五年前のある日、その出入り口は突然に閉ざされた」
マァムたちは視線を交わした。その出入り口とはおそらく大魔王バーンが開いたもの、そしてその死とともに閉ざされたものに違いなかった。
「したがって今は神の定められた掟のとおりである。地上生まれの者は魔界へ入ってはならない。魔界生まれの者は地上へ入ってはならない」
「いいや、違うね!」
ポップだった。真っ赤な光に驚いて腰を抜かしていたのだが、さっさと立ち直ったらしい。ポップは旅の扉の向こうのゲートキーパーに向かい合った。
「少なくとも一人、地上生まれの者が魔界にいるぜ。名は、ダイ。れっきとした地上生まれだが、どうしたわけかそっちへ落っこちたらしい。そんなやつがいちゃあ、掟破りになるンだろ?けど安心しな。俺たちがダイを引き取るからよ。さあ、どいた、どいた!俺たちを通してくれ」
マァムの背後でヒュンケルがくすりと笑いを漏らすのをマァムは聞いた。久々に聞くポップ節は絶好調だった。
「立ち入るな!」
先程の警告をゲートキーパーは繰り返したが、どこかあわてているような口調だとマァムは思った。
「よっしゃ、それじゃ、あんたがダイを探し出してここへ返してくれよ。そうすりゃこっちだってわざわざ魔界へもぐらなくて済むんだからさ」
「本当にそのような者がいるのか?」
「おう。ちょうど五年前だな」
「我は把握していない」
こほんとアバンが咳払いをした。
「五年前まで、あなたが把握していない出入りがあったはずですね?」
「ほら見ろ。あんたが責任者なんだろ?さっさとダイを返してくれ」
ぐぅの音も出ないらしい。どうした、どうしたと煽るポップに、ついにゲートキーパーが折れた。
「立ち入りを、認める」
やったぜ!とポップが躍り上がった。
「ただし、地上から魔界へ受け入れるのは四名とする。そのダイという者がすでに魔界にいるなら、捜索隊は三名である」
「けちけちするなよ」
「魔界とは、地上生まれにとって過酷な環境なのだ。三名が滞在できるのは七日を限度とする」
「それじゃ見つかるもんも見つからねえよっ」
「嫌ならば入るな」
「って、おい、嫌だなんて言ってねえだろ?行くよ、行くってば」
アバンが声をかけた。
「では、七日で戻る者の代わりに別の者を送りこみましょう。捜索隊の三名は固定ではなく、入れ替え可能としていただきたい」
んなこと、できんの?と視線でポップは尋ね、マァムとヒュンケルは肩をすくめた。
「……了承する。ただし、捜索隊の活動は月の運行のひとめぐりをもって区切りとする」
「ひとめぐり、おおむね28日ですね。ポップもそれでいいですか?」
ポップはうなずいた。
「それだけあれば、少なくとも手がかりくらいはつかめるな。よし、さっそく」
「待ちなさい!」
厳しい声でアバンが止めた。
「なんでだよ、先生っ!」
「行先は魔界です。なんの用意もないのに突入などもってのほか」

ここからアドバイス編につなぎます。題して「助けてアバン先生」。まずはポップの場合。

「昼間はおれ、すいませんでした」
とまじめな顔でポップが言った。
「あの旅の扉は魔界へつながってるんですよね。魔界って、よっぽどやばいとこですか」
ふむ、とアバンはつぶやき、椅子の背もたれに身を預けた。
「魔界については判っていることの方が少ないのです。なにせ、そこへ行って戻ってきた人間がいないのですからね。けれど昔から魔界は魔族とモンスターの故郷と言われてきました。人間の世界であるこの地上とはまったく異なる環境のはずです」
「ダイのやつ、そんなとこにいるんだ……。一刻も早くあいつの好きな地上へ連れ戻してやりたい。先生、おれ、どうしたらいいですか」
くす、とアバンは笑った。
「おやおや。ずばり言ってごらんなさい」
「ずばりって」
「考えてきたのでしょう?魔界へ行く前になすべきことが何なのか。結論が出たので私をたずねてきたのでしょうに」
 はぁ、とポップは息を吐いた。
「先生にはかなわねえな、やっぱり」
にやりと笑った後、真顔になった。
「あらためてお願いします、先生。おれに武術を教えてください」
「ほう?」
「ヒュンケルやダイと同レベル、なんて思ってねえ。武器屋の息子だけど昔から刃のあるものは苦手だし。でも、魔法力が少ないとかゼロのときに敵に襲われたら、おれは何もできない足手まといです。そんなのはいやだ。せめて自分の身を守れるようになりたい」

あらかじめ、魔界ではMPがすごい速さで減る設定をしておきます。めざせ、ポップのブラックロッド無双。ダイ捜索の行方を阻む者がマホトーンで一行を囲み、マァムもヒュンケルも戦えない状態のとき、にわか仕込みの杖術を披露する予定。続いてマァムの場合。

「はい。あのときの編成は前衛に三人、後衛に一人でした。今回、ダイが不在で、もし、ヒュンケルが戦えないとしたら」
「ええ、前衛は、マァム、あなただけになります」
マァムは両手の指を握り締めた。
「私にできるでしょうか、先生。私、どうすればいいの」
「ブロキーナ老師はなんとおっしゃっているのですか?」
マァムは目を伏せた。
「最近老師は、弟子たちにあまり稽古をつけておられないのです」
大魔王戦、その前のハドラー戦の双方に参戦した老師は、たしかにたいへんな高齢だった。

からの、先生のアドバイス

「ネイル村を飛び出したあなたは稀有な体験をしてきたじゃないですか。ロモスからバーンパレスにいたるまでの戦いを思い返してごらんなさい」
「私、無我夢中で」
「みんなそうでしたよ、マァム。ですがあなたはその道のりで、当時最強の武闘家三人の戦いを見ていたはずです。一人は老師。次はハドラー。最後にバーン」
マァムは目を見開いていた。
「ええ、ハドラーもバーンも体術に呪文を組み合わせて使用するスタイルの武闘家なのです」

で、魔界探索しょっぱなで敵(ここでは“ラノ”)と遭遇。

「今の防御の技は」
とマァムの声がした。
「アバン先生のアドバイスで私が老師に相談して工夫したの。だからもうフェニックスウィングではなくて」
ラノの視界の隅に、すらりと立つマァムの姿があった。
「武神流鳳凰掌、よ」

ヒュンケルの場合。ヒュンケルさんは、兄弟弟子とはちょっと違う感じでいきたい。

「やる気はとにかく、闘気はあるようですね?」
「そんなふうに見えますか?」
「見えますとも。焦りやおごりのない、凪のように静かな心を保っている。闘気を放つには最高の状態です。ヒュンケル」
ヒュンケルが顔を上げた。
「私の代わりに、魔界へ行ってくれませんか」
 ぴく、とヒュンケルの眉が動いた。

実際に魔界の話になったときにヒュンケルが使うのは、序盤では闘気技、と考えています。細切れの思い付きはいくつかありますが、このへんにぜひ、バルトスをからめたい。獄炎の進行を待ってもう一度プランを考えます。そのうちダイ発見ー復活まで持っていく予定ですが、ダイには目を見張ってほしいのです、天地魔闘の構えをあやつるマァムや、カラミティウォールばりの闘気を放つヒュンケルに。

……自分の日記だと思ってとんぼは好きなこと書いてますが、予定は未定なもんですいません。あと、進捗報告も三回目になったのでそのうちPixivさんでまとめるつもりです。まあ、需要はないと思いますが、モチベーション維持のため。もし見かけたらよろしくお願いします。

拍手御礼とお願い(3/11)

>Eat me!の方、いらっしゃいませ。今見てみたら、“What are little boys made of”で始まるマザーグースみたいです。歌詞はあやふやだったのですが、女の子がsugar&spiceでできている、のところが印象的だったので、締めに使ってしまいました。というか、レックスとタバサの「うちのおとーさんはなんでできてる?」がめっちゃ秀逸じゃないですか。これ、デボラSSのところに載せたいのですが、いかがでしょうかっ?

追記:上記の方にお許しをいただきました!デボラの日のSS「ぼくのデボラは何でできてる?」に楽しいおまけがついています。

デボラの幸せ(3/8)

本日は「デボラの日」でした。ネット上ではカッコよくて麗しいデボラさまがたくさんいらっしゃって、まさに眼福でした。とんぼは5主(フィフス)×デボラSS「ぼくのデボラは何でできてる?」を書いてtwitterにアップしました。同じお話をPixivと当サイトにもアップしています。色々な方のいろいろなデボラさまを見ていて思ったのですが、ツンデレ傾向のある強い女として描かれる事の多いこの方、サラボナではかなり不遇だったのではないかなと思います。母のルドマン夫人はじめサラボナのみなさんからデボラは妻としてはどうか、という発言がありました。だから彼女は、DQ4の主人公のように、広い世界へ出て行きたかったのでは。今度デボラを書く時があったら、そんな風味もふくめてみたいと思います。

拍手御礼(3/6)

本日、複数のweb拍手をいただいています。その差が数分以内なので、複数の方の拍手かすべておひとりなのかわかりにくい感じです。便宜上まとめてお返事していますが、別々だったらごめんなさい。

>小出しにして~の方、ご来訪ありがとうです。ダイ大二次は小出しにするだけしか材料がありませんのよ、遅筆なもんで。というかダイ君、地上いただいちゃダメ。また来月あたりを一区切りにしてなんか出しますんでよろしくお願いします。一番オリジくさい魔界探索を書かなければならないので迷っていますが、後から書き直しあり、と唱えてがんばります。それからジャハンナのほう、「7」消してきました。なんで文末にくっついたのかわからないんですが、教えてくださって助かりました。ありがとうございました。

捏造魔界編ちょっと進捗(3/5)

本日Pixiv版「ジャハンナへの道」の最終話を投稿して完結しました。pixivで読んでくださった方、twitterその他で評価してくださった方、最後までありがとうございました。この続きは「エルフの時代」ですが、ちょっと時間を置きたいと思います。さて、先日から取り掛かっていたダイ大二次捏造魔界編ですが、一応魔界へ出発する前の段取りはつけました。一月に出したのは冒頭のヴェルザーのところでした。ヴェルさんは地上からダイを迎えに来て欲しいので、ダイの持ち物を地上へ放ちます。そのひとつが、ダイがアバン先生から卒業のしるしにもらった輝聖石でした。石はカール王国へ届き、アバンの使徒たちが集められます。輝聖石の示す方へ探しに行くと、魔界へ連なる旅の扉を発見⇒そこに古の神の遺産「ゲートキーパー」がいました。使徒たちはそれぞれ修行回を経て魔界突入、という流れです。↓はダイの輝聖石が見つかったときのポップの反応です。

「さて」
とアバンが言いかけた時だった。
 王城に似つかわしくない騒音が響いた。どこかの礼儀知らずが、すごい勢いで階段を駆け上がってきたらしい。
「せーんせーっ」
ドタドタいう音に悲鳴にも似た叫び声がまじった。
「あいつ、見つかったんですかっ!!!」
同時に研究室の扉が乱暴に開け放たれた。
「うわっ」
乱入者は敷物のはしにつまずき、見事にひっくり返った。
「わっ、うわっ、とっとっとぉ!」
乱入者が床に転がると敷物もめくれてはりつき、最終的にそれは壁にぶつかって止まった。ほぼ簀巻き状態のそれの前に、アバンはしゃがみこんだ。
「あわてすぎですよ、ポップ?」
簀巻きから、情無さそうな声がもれた。
「すんません、先生、でも、本当にあの」
あとは息切れで言葉が出ないようだった。
「見つかったのはダイくんではなく、輝聖石、つまりアバンのしるしです」
「でもそれっ、まじでアイツのっ」
バタバタと簀巻きがもがいた。
「落ち着きなさい。私たちはそれを知るためにここに集まったのです。あれが輝聖石だということは、私が確認しました。そして、今までに制作した輝聖石の所在を確かめました」
「そっ、それで?」
「いいかげん、出てきてください、ポップ。そして、あなたの持つしるしを見せてください」
芋虫のように転がりながら、ポップはようやく敷物簀巻きから出てきた。まだはぁはぁと息を切らしながら、服の内側から輝聖石をもどかしげに取り出した。
 ポップは今年で二十歳になる。ダイが消えてからの五年間、文字通り世界中を飛び回ってダイを探し続けていたのを、マァムは知っている。口の達者なお調子者の少年というイメージはあまり変わっていない。が、今のポップは身長が伸び、体もやや厚みを増し、何よりも大魔導士マトリフの指導のもと、膨大な魔力をたくわえるようになった。
「けっこうです」
ポップの持つ石を眺め、アバンは微笑んだ。
「さあ、これですべての輝聖石を確認しました。所在不明はただひとつ、ダイ君に渡したアバンのしるしです。今回見つかったこの石は、間違いなくダイ君の持っていたものです」
 ポップの魂の色は緑、その力は「勇気」。
ダイの名を聞いた瞬間、ポップは目を見開き、そのしるしは澄んだ緑の光を放ってキラキラと輝いた。

魔界へ入ってからは数話を費やして魔界の状況を描く予定です。ゆくゆくは、バーン、ヴェルザーに次ぐ第三勢力のボスとの闘いを予定しているので、魔界はその勢力の前に荒廃しているはず。できればその最後の戦いに参加する魔界の住人をメインにしたい。その住人たちの助けを借りて、一行はダイを発見⇒いろいろあって、ダイ復活。しかしダイは地上へ帰ることを拒みます。↓はレオナの回想。

 老いたる大魔王は光魔の杖を床へ突き立てた。
「念のため、聞いておこう」
 地の底から響いてくるような声だった。
――何を考えているのかしら。
レオナはいぶかった。ダイも同じ思いらしく、警戒もあらわに身構えている。ダイの手にはついさきほど覚醒した二つ目のドラゴンの紋章があった。先行したあまたのドラゴンの騎士たちの戦闘ノウハウの集積、「闘いの遺伝子」、その威力はものすごく、一度は敗北した老魔王バーンとダイは互角以上に戦っていた。
――今さらバーンは何を言うつもり?
杖を床に立てたまま、老魔王は何も装備していないしるしに両手を広げた。
「余の部下にならんか?」
なっ、と言いかけてダイは二の句をつげないようすだった。レオナは思わず老魔王の顔をまじまじとながめた。
「そ、そんなっ、そんな事っ」
いやだ、断る、と言おうとしたときに、老魔王は割って入った。
「おまえの父はこの問いにYESと答えた」
ダイがぎくりとした。
「純粋なドラゴンの騎士であるがゆえに、バランは人間がいかに醜く愚かな生物であるかも良く判っていた。人間は最低だぞ、ダイ」
人差し指でダイを指し、まるで賢者かプロの教師のような口ぶりで悠々と老魔王は説いた。
「おまえほどの男が力を貸してやる価値などない連中だ」
――くやしいけど、こいつ、説得力があるわ。
レオナ自身が君主としての教育を受けている。バーンが発揮しているのは、実力のある者を家臣として得たいときに使う説得術だった。そこに含まれるのは、世辞が一割、そして事実が九割。
「そんなやつらのために戦って、それで勝っても、どうなる?賭けてもいい、余に勝って帰っても、おまえは必ず迫害される」
ダイは、かすかに口を開いたまま沈黙していた。
「そういう連中だ、人間とは。奴らが泣いてすがるのは自分が苦しい時だけだ。平和に慣れればすぐさま不平不満を言い始めよる」
ダイは老魔王を見上げていた。ダイの中にバーンの言葉が事実として沁み込んでいくのが目に見えるようだった。
「そしておまえは英雄の座をすぐに追われる。勝った直後は少々感謝しても、誰も純粋な人間でない者に頂点に立って欲しいとは思わない!それが人間どもよ」
「ちっ、違うわ‼」
たまらずにレオナは叫んだ。ダイの心がバーンの見せた“事実”に浸る前に、なんとか取り戻したかった。
「絶対に私たちはそんな事しないっ」
「それは、姫よ、そなたがダイに個人的好意を抱いているからにすぎん」
あっさり胸中をあばかれて、さすがにレオナは口ごもった。
「それではバランの時と変らん。たった一人の感情では“国”などという得体の知れないものはどうしようもない事は、公事にたずさわるそなたならようわかろう?」
口をぱくぱくさせてみたが、レオナには反論のすべがなかった。ダイの弱点「バラン」と、自分の弱点「国」を左右において、バーンの説得は死角がなかった。
「だが余は違う。余はいかなる種族であろうとも強い奴に差別はせん。反旗をひるがえした今でもバランやハドラーに対する敬意は変わらんよ」
老魔王は、口元にかすかな笑みさえ浮かべていた。
「さあ!どうする、ダイ!無益とわかっている勝利のために命を賭けるか?おまえの価値を判っている者のために働くか?いくらおまえが子供でも、この二択は迷うまい」
レオナはダイとバーンを見比べた。余裕たっぷりに老魔王はダイに斬り込んだ。
「どうする?!……ダイ……!!」
「答えは……」
ついにダイが口を開いた。
「“NO”だ」
安堵のあまりレオナの力が抜けた。逆にバーンは剣呑なようすで目を細め、小さなダイを見下ろした。
「やはり子供よな。甘い英雄の幻想とやらにしがみついていたいのか」
「違う」
とダイは言い切った。目を閉じて、自分に言い聞かせるようにダイは言った。
「人間がたまにそういうひどいことをするのなんて百も承知だ。おまえの言う事もうそじゃないと思う」
レオナの胸が痛むほど、ダイの口調は苦かった。バランとの最初の出会いを、ベンガーナの襲撃含めてレオナはずっと目撃している。
「でも、いいんだ!それでもおれはみんなが、人間たちが好きだ。おれを育ててくれたこの地上のすべての生き物が好きだっ」
ダイの目は、天魔の塔の床面を通して、地上に注がれていた。
「ダイ君……」
「もし本当におまえの言う通りなら、地上の人々すべてがそれを望むのなら、おれはっ」
まだ十二歳。デルムリン島で出会った幼い少年。
「おれはっ……おまえを倒して……この地上を去る!」
魔王を見上げ、驚くほど大人びた表情で、しかし昔と同じ澄んだ瞳で、ダイはそう告げた。

回想と言うか、コミックスの31巻丸写しですけど。このバーンのロジックに対抗できるのはポップだけだと思います。今のところこんな感じで始めたい。「なあ、ダイ、おまえ、勇気って目に見えるか?」……早くこのパートまで進めたい。しかし長い話になりそうです。

拍手御礼(2/14)

今は昔、2007年にこのサイトにDQ5二次「ジャハンナへの道」をアップしたときに、その当時でさえ古いネタを仕込みました。でも誰もつっこんでくれなかったので、仕方ないから自分でばらした、という顛末がありました。なんと16年経過した2023年現在、元ネタを指摘してくれた方がいらっしゃいましたよ↓。

>ムキになるピサロ様~の方、こんにちわ。Pixiv版の「ジャハンナへの道」、見てくださってありがとうございます。元ネタはおっしゃる通り、「もっと食いねえ、寿司を。何かい?おめえさんは江戸っ子だって?」「おう、神田の生まれよ」(うろおぼえです)etcという戦前の浪曲「石松三十石舟」からです。それで怒ると怖いピー様が無邪気な双子には毒気をぬかれてしまう、みたいな展開大好きで、この話には思い切りぶちこみました。というか、ていどの差はあってもグランバニア一家は全員ボケみたいなものなので、ツッコミ系魔王とは相性がいいもんで……。楽しんでくださったら嬉しいです。

拍手御礼(2/8)

>すばらしい、の方、いらっしゃいませ。ぬわーーーっいただきました、ありがとうです。どうもとんぼは、花嫁に対して対照的な5主を設定するくせがあるようです。かわいらしいお嬢さんのフローラには無骨無口な大男の5主(アベル、キラパンはチロル)を、男前な言動の美女デボラには不思議系甘ったれ5主(フィフス、キラパンはゲレゲレ)をくっつけてしまいます。姉属性幼馴染のビアンカには天然ボケ傾向のあるナウシカ風味5主(ルーク、キラパンはプックル)でした。パパスの性格やマーサとの関係は今まであまり意識してなかったんですが、口が重くて目でアピールするパパスさんはなかなか良いものだ……。フローラ・アベル組は時々書きたいと思っているペアです。ちなみにアベルの世界線のヘンリーも、アベルの表情や仕草で何を言いたいかわかると信じています。

追記:よく見たら、2/6に書き込むべき一文がありませんでした。2/6DQ5二次「見つめる瞳」5主(アベル)×フローラをアップしました。すいませんでした。

拍手御礼(1/27)

>なんかはじまっとる、の方、エールありがとうです。ダイ大は昔からアツいファンが多くて、下手な蛇足をつけようものなら怒られそうな気がしてました。今回もハラハラしながら日記書いてました。もっとやれ、が嬉しかった。もっとやっちゃいます。

ダイ大捏造魔界編(1/26)

本日はDQ2、36周年記念日でした。ネット上にはすてきなロトトリオのイラストがたくさんあって、本日はとても幸せに過ごしています。実はここ数か月ほど、脳内の魔界をとんぼはうろついていました。つまり去年からうるさく言ってる例の件、ダイの大冒険二次、捏造魔界編のことをずっと考えてました。本日は当サイトの設立記念日でもあり、現在まで考えたことをちょっと書いてみたいと思います。

もともと魔界編は公式で「魔界にはバーン、ヴェルザーに次ぐ第三の勢力があり、それを地上へ出さないためにダイと仲間たちが闘う」みたいな設定がありました。二次でまず捏造したのは「その勢力は闇を好み、勢力を広げている。この勢力を駆逐できる唯一の方法が太陽で照らすことだった」というもの。バーンの企てが無に帰して、魔界はなすすべもなくその勢力に呑まれようとしています。

 その剣が鬼眼王の巨体を両断した瞬間、魔界は震撼した。暗雲たれこめる空からは雷鳴がとどろき、鋭くとがった岩の峰々は震え、黒い海は激しく泡立って白い波頭が砕け散った。
 魔界から遥か上空での、成層圏の決闘は終わった。かつて魔界の神と名乗って君臨した男は信じられないような表情のまま石と化し、壮大な星の海へ流されつつあった。
「逝ったか……」
 石の体に閉じ込められた魂が、そうつぶやいた。その体は、柱に囲まれた台座に載り、台座は魔界の高峰に安置されていた。衝撃はまだ、びりびりと石像の体をゆさぶっていた。
「ご主人様!」
 わずかに残った家臣たちが駆けつけてきた。
「ご無事で?!」
「私は大事ない。が、下はどうだ?」
 家臣とはいえ、小者、下人がほとんどだが、それなりに気配りのきく者たちだった。
「よくありません。“海”がいちだんと上がってまいりました」
 口と舌が動くなら、勢いよく舌打ちしたいところだった。
「忌々しい!この身さえ動けば」
 封印を受けてから何度も繰り返した嘆きを口に仕掛けて、止めた。
「ご主人様、もう、魔界は太陽を得られないのでしょうか」
「太陽さえあれば、“海”はこれ以上広がらないのでは」
「あのお方が地上を吹き飛ばしてくだされば」
 ため息がもれるのは、止められなかった。
「あきらめるがいい。あれは、逝った。たった今、あの竜の騎士の息子に撃ち取られた」
 ああああ、と嘆きの声があがった。
「太陽はないのに“海”の水面は上がってくる、これでは魔界は亡びるしかありません!」
「私らは、いったいどうすれば」
「逃げ場はないのですか」
「しずまれ!」
 重苦しい沈黙が漂った。
「ここは“海”辺からはまだ距離がある。山の上だからな。 “海面”がここまで上がってくる前になんとか手立てを講じる。それしかない」
「と、おっしゃいますと」
 応えようとしたとき、五感のすみに何かがひっかかった。
「待て、あれはなんだ……」
 膜一枚へだてた空間を何かが漂っている。重力が集中しているようでもあり、暗闇の中に光が動くようでもあった。
「ドラゴン?まさか」
 まさか、と言いながら、それは確信に変わった。特徴のある、峻厳かつ清らかな波動があった。
「聖母竜!なぜそんなところに」
「ご主人様?」
 小者たちに向かって早口に指示を下した。
「このあたりをくまなく探せ!いつもと違う何かがあるはず。魔界に聖母竜がいる」
 聖母竜とは、ドラゴンの騎士の魂と紋章を預かって次代の騎士に渡す役目を持った、特殊なドラゴンだった。
「いやしくもドラゴンであるなら、この私の感覚が誤るわけがない。聖母竜の形をしていないかもしれないが、絶対にいる。探せ!」
 わらわらと小者たちは散っていった。
「ドラゴンの騎士の息子か」
 それはほとんど確信だった。バランがいない以上、聖母竜が宿るのは彼の息子以外にあるはずがない。
「地上の者があの子供を惜しむなら、魔界へ迎えに来るかもしれん。ならばあの子についていれば、地上へ連れ帰ってもらえる。魔界から逃れることも夢ではないぞ」
 とっくに石になった心臓が、がんがんと脈打っているような錯覚があった。
「さあ、来い、竜の騎士の子よ。我が知略の手駒としてくれよう!」
 最後の知恵ある竜は、心の声で咆哮を放った。

というわけで、↑の視点人物である竜は、聖母竜の魂を持つ者を捕らえ、その持ち物を地上へ向かって放ちます。地上では村の子供が涙滴型のきれいな石を拾いました。その子の父によって石はカール王国へ届けられます。「間違いありません。これは、ダイ君が持っていた『アバンのしるし』です」……というわけで、ダイ捜索隊がスタートします。↓は現在までにできているアウトラインです。

魔界突入
プロローグ・アバンのしるし・出発前(修行回)・魔界の入り口(今のところ地底魔城)・ゲートキーパー(神の遺物のひとつ)
魔界行
★敵視点・ダイ発見(たぶん、バーンの第七宮廷)
ダイ復活
疑惑・父の魂・正体・大魔王の呪い・種明かし
大脱出
(負けゲー)・脱出したい・竜騎将就任・偵察と計画・魔界大脱走

細かい戦略は半分も決まっていません。先は長いのですが、毎日ここはこうして、とか、あれは使える、とか、いろんなネタが降ってきて整理に困るありさまです。公式が続編を出したら秒で粉々になる二次創作にすぎません。ゲーム版のサービスの終了の話ももれ聞いています。でも、とんぼは自分でも奇妙なくらい前のめりになっています。先生……魔界編が書きたいです……。

拍手御礼(1/15)

>始まりましたね、の方、いらっしゃいませ。ピサロとヘンリーどちらが……というお尋ねですが、実は決めてないのです。5主に対する立ち位置が違うので、扱いに困りまして。そのへんがうまく決まっていたら「魔界豆腐」のおかわりでヘンリー、5主、ピサロの共演をやりたかったのですが諦めました。応援ありがとうございます。ジャハンナ第二話、明後日にはちゃんと校正終えて投稿したいです。

ピク予告と拍手御礼(1/6)

先日の日記を書いた後に思いついたことがありまして。昨年このサイトに置いている二次創作をpixivさんへちょこちょこ投げていましたが、今年もやってみようと思います。とりあえず考えているのはDQ4と5のコラボ、グランバニア一家と魔王ピサロのお話です。タイトルで言うと「ジャハンナへの道」、「エルフの時代」あとは短編の「魔界豆腐」。ボケ系の5主とつっこみ魔王のコンビは書いていてなかなか楽しいネタです。できればこれも新作書きたいのですが、その前に旧作の整理を兼ねて↑のシリーズのpixiv化をやっていきますので、よろしくお願いいたします。

>あけまして~の方、はい、おめでとうございます。なんと2000年代からのお客様でしたか、長いお付き合いほんとにありがとうございます。時々思い出してもらえるなんて字書き冥利に尽きますね。今年の抱負のほうは、自分で自分の背中を押す行為です。特にダイ大のほうはアニメが終わるまで書こうなどとは思ってもみませんでした。あまりにも大きなネタで、うまく噛み砕けるかわからない、なんというか畏れ多いと思ってました。が、もっとダイ見たい、の方向で頭がイっちゃって、気が付いたら全力でネタ出ししてました。どんなふうに転がるかわかりませんが、応援よろしくです。無理のないペースでという優しいお言葉が胸にしみました。

拍手御礼(1/3)

>あけまして~の方、今年もよろしくです。魔界編にさっそくのコールをありがとうございます。公式構想として海戦騎にはクロコダインが指定されていたと思います。空戦騎にはきっと新キャラがくる予定だったと思うのですが、さすがにダイ大の新キャラを捏造できる実力はありませんので、何とか考えます。竜騎衆を決めなきゃならないし、その竜騎衆を率いて戦う相手を設定しなくちゃならないし、戦場、戦術、各キャラの見せ場、やることたっぷりです。相棒に「五年後のダイ」をイメージしにくいとぼやいたら、「冒険王ビィト」のゼノン氏が近いのではというアドバイスをもらいました。まだまだこれからなんですが、長い目で見ていただければ幸いです。新年からコメントありがとうございました。

あけましておめでとうございます(1/2)

今日やっと日記のページを差し替えることができました。去年の同じころを確認したら、去年が1/3、今年は1/2にできました。……だから何、という話ですが。でもまあせっかく新しい日記になったので、今年の抱負など。昨年末から騒いでいるように、「ダイの大冒険」の二次創作を構想中です。テーマは幻の「魔界編」、公式ではダイが新しい竜騎将となって魔界の第三勢力のボスを地上へ出さないために闘う、ということになっていたそうですが、それをやってみたいです。抱負です。予定です。予定なんです。ただしこれはかなりの長尺になると思うし、構想もそれにあわせてだいぶかかりそうです。魔界編と並行していろいろやりたいと思っています。昨年pixivさんへ持って行った5主とヘンリーの御題ですが、全部で十題あるうち九つしか書いていません。最後の「親分子分」を書きたくなりました。ただこれも、趣味のままに突っ走ると凄く長くなりそうな気がします。あとは、ホメロス戦記でまだまとまっていないネタを整理とか、いろいろです。とんぼの場合、何かインプットしたとき、映画とか絵とか、ニュースを聞いたとかつぶやきとか、そんなところから連想で一気にネタになったりすることがあるので、自分でも予測がつきません。こんなところまで読んでくださった方がいらしたら、どうか今年もおつきあい、よろしくお願いします。