バード・オブ・パラダイス 8.剣士雌雄を決し

 騎士団の創立記念祭を一か月後に控え、剣術大会予選が始まった。グレイグとゴリアテは門下生予選を順調に勝ち抜いていた。抽選と勝ち抜きの結果、二人は門下生予選決勝であたることになった。
 門下生予選と同時に、正規の騎士たちによる騎士団予選も行われていた。どちらも準々決勝以上へ進出すれば剣術大会本戦に出られる決まりなので、グレイグもゴリアテも先に出場資格を得ていた。
 ゴリアテにとって対グレイグ戦はその年のジエーゴの従者抜擢がかかっていることは、知れわたっていた。いつもならとっくに自分の従者を決めて特訓にかかるジエーゴが、その年は誰も指名せず、ゴリアテの戦績をじっと見きわめている。もしゴリアテがグレイグを倒せなかったら、前の年に従者を務めたゴンザレスが最有力候補だとジエーゴは公言していた。
 またグレイグにとっては、今年の記念祭がソルティコ修行最後の大会となるため、デルカダール王への土産に剣術大会上位入賞、できなければせめて門下生予選優勝を持ち帰りたいところでもある。ゴリアテ対グレイグの門下生予選決勝は騎士団全体が見に押し掛けるほどの人気となった。
 予選決勝の前々夜、グレイグは自主練習を早めに切り上げて私室へ戻っていた。毎年決勝前は体をまる一日、休めることにしていた。
 カルロス師範代の年少クラスで修行を始めてから、グレイグは何度もゴリアテと対戦していた。修行を始めたころに見た速く巧みな剣は、ゴリアテの手で進化を続けていた。それに対抗するためにグレイグは大剣を守りに使う技を磨いている。千変万化するゴリアテの攻撃を捌くのはよい稽古になった。ゴリアテの方も、グレイグの重く激しい攻撃を受けて支える訓練を続けてきた。
 戦闘スタイルの異なる二人は、そうやって互いを育て合ってきたようなものだった。ただそのために二人の対戦はほとんどが時間切れの引き分けで、勝負はなかなかつかなかった。
 今回の決勝も臨機応変に対応するしかない。ゴリアテの攻撃に決まったパターンはなく、その場で凌ぐしか方法はなかった。
 食事も終わって寝る前に井戸へ行って水をもらい、ぶらぶらとグレイグは部屋へ戻ってきた。寄宿舎全体が就寝時刻をすぎで静まり返っていた。
 グレイグは現在、二人部屋を一人で使っていた。だが、その部屋の、主のいない空きのベッドの上に誰かいた。
 グレイグは目を見張った。領主館にいるはずのゴリアテだった。
「お前、なんで」
ゴリアテは黙って唇の前に指を立てた。ゴリアテの後ろで部屋の窓が開いているのが見えた。声を呑みこんでグレイグは部屋の扉を後ろ手に閉めた。
「ついさっき、こんなものが来たよ」
ゴリアテは低くそう言って、羊皮紙片を手渡した。宛先なしで、短い文章が記されていた。
「『おまえはどうしてもグレイグに勝ちたいはずだ。パストルとカイルに協力しろ。そちらがその気なら、勝たせてやる……』、おい、なんだこれは!」
文章の最初のほうで、もうグレイグは怒鳴りだしたくなった。もう一度静かに、というしぐさをしてゴリアテは手紙を指さした。
「覚えてる?前に海岸でケンカしただろう。協力って、金を取って叙任させる商売のことだよ」
「あいつらか!」
目の下に内出血を起こしていたゴリアテの顔をグレイグは思い出した。
「ジエーゴさまへ話に行こう!はっきり名前が出てるんだ、あいつら、首をねじ切られるぞ」
 ゴリアテは両手で抑えるようなしぐさをした。
「パストルがこの商売に未練を持っているのは確かだよ。でも、誰がこの手紙を出したのかわからない。差出人は騎士団内の裏切り者だと思う」
「なんだって?」
ゴリアテは冷静だった。
「金を取って叙任するには、少なくとも一人の騎士の協力が不可欠なんだ。騎士団内の誰かがパストルの商売に乗り気になってる」
部屋の暗がりでゴリアテの目が光って見えた。
「ほら、ここを見て。勝たせてほしいと思うのなら、今晩中に赤い布をぼくの部屋の窓に結び付けておけと書いてある。どうしてわざわざきみの部屋まで夜這いに来たと思うの?ぼくは知りたいんだ、誰が裏切り者なのか」
「……どうするつもりだ?」
じっとゴリアテは見上げた。
「グレイグ、ぼくを信じてくれるかい?」
「当たり前だ!」
緊張でこわばっていたゴリアテの顔が、安堵にゆるんだ。
「それじゃ頼むよ、あのね……」
闇にまぎれて、ゴリアテは指示をささやいた。

 ジエーゴ邸の外壁にソルティコの町の人々、特に女たちが朝から鈴なりになっている。
「キャーッ、ゴリアテさまーっ」
大会運営係のダニエルは、そのつど、控えめに注意をしているのだが、彼女たちはダニエルが見えなくなるとまたすぐ壁際のベンチに上ってきゃあきゃあ言い出すのだった。
「困ったな。これじゃ、決勝戦進出者が集中できないぞ」
他の運営係の騎士は首を振った。
「今年はしょうがないさ」
決勝戦の朝だった。本戦ではなく、門下生どうしの予選の決勝にすぎないが、ゴリアテ対グレイグの対決は事実上の本戦決勝戦とまで言われ、カルロスたち師範代一同をして“本戦には俺たちも出るんだがな”、と苦笑させた。が、人気という意味では、確かに一番観客が見たがるカードだった。
 ダニエルが選手控室へ行くと、やっぱり黄色い歓声が聞こえてきた。
「あいつ、もてるなあ」
今日決勝戦を戦う予定のグレイグがそうつぶやくと、陣中見舞いにきていた若者たちが驚いた顔になった。
「どこまで鈍いんだ、おまえは!ゴリアテは十三くらいから付け文の嵐だぞ」
彼ら、アルノー、ニコラ、ヴィート、それにゴンゾの四人が、年少クラスでグレイグと同級だったことをダニエルは聞いていた。アルノーたちはグレイグよりひとつ年上で、すでに叙任を受けて正規の騎士として働いていた。
「空気読めよ~?」
「うっかり勝つと女の子たちに呪われるぞ」
グレイグがぼやいた。
「師匠は手加減するなって言うし、ゴリアテは真剣勝負だって言うし、おまえらは空気読めって言うし、女の子たちは勝ったら呪うって言うし、どうすりゃいいんだ、俺は」
グレイグは自分の不器用な性格を特に隠そうとしない。元同級生たちは笑っていた。
 ダニエルは、選手に声をかけた。
「そろそろ時間だ。準備して」
ダニエルはデルカダールの平原地方の出身で、グレイグとも顔なじみだった。
 はい、と言って、グレイグが立ち上がった。
 ゴンゾが武器架を見上げた。
「お前の盾はどれだ?」
グレイグは少し迷ってから決断した。
「今日は盾なしだ」
「珍しいな」
「相手がゴリアテだからな。持っている方が邪魔になりそうだ。それに」
グレイグは言いよどんだ。
「どうした?」
とダニエルは尋ねた。
「なんでもないです。緊張しているみたいで」
「体調が悪いなら、棄権もできるぞ」
まさか、とグレイグがあわてて手を振った。
「だよな!おまえらしくもない!」
アルノーたちは笑い飛ばした。
 ダニエルが先導し、グレイグは剣だけ持って予選会場へ向かった。彼にとっては五年間さんざん汗を流してきた屋外練習場だった。
 女の子たちの歓声が響いた。別の控室からもう一人のファイナリスト、ゴリアテがでてきた。
 やあ、と言って片手を振った。
「今日は勝つよ、グレイグ」
グレイグは何とか笑顔をつくっていた。
「……だといいな」
 ゴリアテが不審そうな顔になった。
「どうした?いつものグレイグじゃない」
グレイグは片手で腹を抑えた。
「腹が少し……緊張しているんだ」
ゴリアテは笑顔を見せた。
「グレイグでも、緊張するんだなっ」
「アルノーと言い、お前と言い、俺をなんだと思ってるんだ?」
とグレイグはかるく憤慨してみせたが、確かにいつもの調子ではなかった。
「実はぼくもドキドキしてるよ。さっさと始めよう。ほら、パパたちが来た」
 審判役のボネ師範代が門下生年長クラスの予選決勝を宣言した。ダニエルたち運営係はグレイグとゴリアテを残してギャラリーを下がらせた。
「二人とも位置へ」

 グレイグは使いなれた大剣を手に、ゴリアテと対峙した。
 ゴリアテは細身の長剣を装備して、腰のベルトに短剣を吊っている。さらに奇妙なホルダーがあった。ベルトにとりつけた一枚革で、折りたたんだ鞭を巻きこむように装備していた。
「鞭まで使えるのか!」
いつ扱いを学んだのかは知らないが、ゴリアテのことだからたぶん使いこなすまでに仕上げているのだろう。グレイグは、自然に武者震いが出た。
「抜刀」
 ゴリアテは細身の長剣を抜き、眼前に掲げた。騎士たちが戦いを前にして行う伝統的なしぐさで、剣の柄を持って顎の高さに保持しまっすぐに白刃を立てる。刃の向こうのゴリアテはどこか高揚した表情だった。
――嬉しそうだな。
グレイグも抜刀し同じように眼前に剣を掲げた。どんな手を使ってくるかと思うと、ぞくぞくするほど怖い。同時に自分の力をぶつけるのが待ち遠しい。いつのまにかグレイグもにやりとしていた。
「はじめっ」
審判が宣言すると同時にゴリアテが飛びだした。右手に長剣、そして一呼吸で左手に短剣を装備したらしい。神童時代から変わらない俊足と親譲りの長身を生かして、いきなり長剣で素早い突きに出た。
 その先制攻撃は二人に取って儀式のようなものだった。二人が年少クラスでいっしょだったころから、試合をすると必ずゴリアテが先手を取る。だがグレイグも鍛錬を続け、素早い突きを剣で弾き返す技を身につけていた。
 先手を防がれてゴリアテがさがった。グレイグが打って出た。重い両手剣の刃を支えたのは、なんと短剣だった。鋼の刃ごしに見るゴリアテがにっと笑っていた。
 グレイグは大剣で押し切ろうとした。ゴリアテは特に逆らわずに刃を下げた。そんなとき、ゴリアテはいつも後退して間合いを測りなおす。
 グレイグはぎょっとした。脇をすりぬけたゴリアテが、素早く刃を振るったのだった。
 ギャラリーから驚きの声が上がった。グレイグが大剣を握っている両手のうち片方の手首が傷つき、血がにじんでいた。
 剣術大会は本戦予選ともに真剣を使うことになっていた。試合の場には治療師が待機して、後からケガは治してもらえる。だが、試合中の痛みはどうしようもない。“甘ったれんじゃねえ、騎士の仕事は殺し合いだ”とは、師匠の言い分だった。
 よし、とつぶやいてグレイグは気合を入れ、打ちかかった。重く鋭い両手剣を使った連続攻撃はグレイグの得意技だった。
「すげぇな!」
「さすがグレイグ」
現在、門下生の中でこの攻撃に屈しない者はほとんどいない。ジエーゴや師範代たちは剣で受け止めたり弾き返したりできるが、たいていの相手は斬り立てられて自分の武器を保持することさえかなわなかった。
 ゴリアテの対処は独特だった。素早さと巧みさを生かしてグレイグの剣の軌道を読み、自分の剣で大剣を抑え込み、そらせ、勢いを殺してしまう。その技と、身かわしや弾き返しを組み合わせ、ゴリアテはスキを見せなかった。
 二人は、一度間合いをあけた。激しい斬りこみのためにグレイグは呼吸が荒くなっていた。ゴリアテは腕や顔にかわし切れなかった切っ先のつくった傷がだいぶできていた。
 唇の近くの傷を、ゴリアテは舌でなめた。色素の薄い瞳がじっとこちらをうかがっていた。
「ゴリアテさま、がんばっ」
しっ、と唐突な応援の声は防がれた。
「緊張を乱すなよ!」
ゴリアテの左手が短剣を逆手に構えなおした。グレイグも剣先をあげた。
 再びラリーが始まった。グレイグが踏み込み、ゴリアテはひらひらとかわしながらあらゆる軌道で反撃してくる。それは、過去幾度となく繰り返された二人の試合での通例だった。
 変幻自在なゴリアテに、グレイグは決定的な一撃を加えることができない。ゴリアテも、グレイグの堅守を抜くことができない。
 遠い国の賢人がそんなたとえ話をした、とグレイグは聞いたことがある。けして貫けない盾を、なにものをも貫く矛で襲ったらどうなるか……。今までゴリアテとグレイグの試合は、こうしてほとんど引き分けだった。
 だが、今日のゴリアテは時間切れまでにグレイグを倒さなければジエーゴが設定した条件を守れない。実は来年グレイグがいなくなったなら、予選で当たる門下生すべてに勝つ、という目標をゴリアテは難なく達成できるだろう。それでもゴリアテの性格上、今日は必ず勝ちに来ている、まぎれもなくグレイグから一勝を取るつもりで来ているはずだった。
――どうする気だ?
グレイグの方が、時間切れが気になっている。これではまた引き分けになるのではないか、と思ってしまう。グレイグの方は手加減しているつもりはない。むしろ、デルカダールへ帰る前に、ゴリアテにきちんと勝ちたいという思いは変わらない。
 あの競馬式の日に自覚した通り、グレイグもゴリアテも似た者どうし、いざ競り合いとなったら、本能が、生理が、無性に勝利を求めてやまなかった。
 グレイグは一度乱戦から退き、左手だけで剣の柄を握って右手を軽く振った。最初にゴリアテから一撃をもらった右の手首がしつこく痛んでいた。
 ゴリアテの方も、グレイグの攻撃をさばき続けた結果、ボロボロになっていた。黒髪が額に乱れ、顔のあちこちにキズができている。いつもきれいに整えているコートの首や肩に裂け目があった。そして、呼吸が荒くなっていた。
 思わずグレイグは声をかけた。
「そんな状態で俺の攻撃を受け続けて大丈夫か?」
短剣を持つ手の甲で前髪をかきあげてゴリアテは答えた。
「グレイグも、剣のフリが小さくなってるよ。疲れてきたね?」
にやりとしながらグレイグは舌打ちしてみせた。
「じゃ、いつものいくか!」
「待ってました!」
これもまた、二人の試合の通例だった。ラリー続きで引き分けになりそうな時、勢いをつけてぶつかり合い、技をかけあう。
 一二歩下がってグレイグは助走をつけた。ゴリアテは左右の剣を逆手に構えて飛びだした。やはり両手剣と打ち合って支えたのは短剣だった。だが、最初の一撃と異なり疲労が出たのか、ずるりと刃が滑った。両手剣の先端がゴリアテの袖口に引っかかった。
 びりびりと音がした。ゴリアテが飛び下がる。短剣を捨てて間合いを広げたようだった。グレイグも下がった。ゴリアテの左手はだらりと下がり、そこから血が滴り落ちていた。
 辺りは騒然となった。審判のボネが声をかけて人々を鎮めていた。ジエーゴは腕組みして黙ったまま、騒ぐこともなく試合を見据えていた。
 ボネは棄権するか、と尋ねたが、ゴリアテは首を振った。
「まだ、やれます」
ボネは尋ねるような視線をグレイグに向けた。グレイグはうなずいた。脈を切ってしまったかとひやりとしたが、ただの傷らしい。ならば、疲れていようが傷つこうがかまわずに挑んでくるゴリアテに、礼を尽くさなくてはならない。
「これで決着だ。行くぞ」
そう言って剣を握り直した。
 握り直したつもりだった。
 グレイグはどきりとした。
 右手の手首に力が入らなかった。
 グレイグはぞっとした。先ほどから手首に痛みを感じていた。それは最初の傷だと思っていたのだが、今改めてみると、切り傷などではなかった。骨が見えるほど深くえぐられている。
 何度も同じ個所を斬りつけなくてはこうはならない。グレイグは改めて対戦相手を眺めた。
――これが狙いか!
どれだけボロボロにされてもしつように斬りかかり、左手と短剣を犠牲にしてまで、グレイグの右手首につくったキズだけを狙ってゴリアテは攻撃してきたのだと、やっと理解した。
 グレイグは、右手を剣から放した。左手のみで剣の柄を握り、相手に突きつけた。お互い、片手は使い物にならない。ゴリアテが満足そうにうなずいた。ゴリアテも右手の長剣をかざした。
 大剣は左手でつかみ、右手の前腕で支えて保持したまま、再度グレイグは突進した。細かい剣さばきはもうできなかった。ゴリアテを跳ね飛ばす勢いで大きく横殴りにするつもりだった。
――逃げろ、ゴリアテ。そうでないと、お前を殺してしまうぞ!
 ゴリアテは動かなかった。何を待つのか、ただじっとグレイグの突進を見つめている。後ろから見るとぼうっとしているように見えるのか、背後のギャラリーから悲鳴があがるほどだった。
 いきなりゴリアテの手が閃いた。装備していた長剣を、グレイグに向かって投げつけた。
「うわっ」
顔スレスレのところを刃がかすめていく。
 走りながら避けたが、体勢に無理があった。グレイグのバランスが崩れた。
――試合中に短剣長剣両方とも手放すバカがいるか!
 そのとき、びし、と音がした。グレイグはようやく思い出した。ゴリアテが、三つめの武器を持っていることを。
 左手をだらりと下げたままゴリアテは、鞭の先端近くを口でくわえ、右手で強く張っていた。のるかそるかの反撃に高ぶった心が、爛々とした目の輝きになっていた。
 片足を大きく前に踏み出して、その勢いを乗せてゴリアテは鞭を放った。
 革鞭は意志あるもののように空を駆けた。グレイグは身を固くした。が鞭の先端がピンポイントで襲ったのは、グレイグの左手の指だった。
「つっ」
重い両手剣が握りにくいほどの痛みに襲われた。
 グレイグはそれでも進んだ。ゴリアテは退いた。が、間合いをあけても余裕で鞭は届いた。鞭の第二撃が飛んできた。革鞭はグレイグの剣にからみつき、取り上げてしまった。
 なかばグレイグはそれを予期していた。両手剣を取られた瞬間、試合場の石畳の上にさきほどゴリアテが放棄した短剣に向かい、頭から滑り込むようにして拾い上げた。
 逆手に構え、反撃のために身を起こそうとした。
 その瞬間、グレイグは固まった。
 眼前に両手剣の切っ先があった。
 ゴリアテは両手剣を使えない。グレイグも短剣を使えない。二人とも装備できない武器をつきつけている。
 両者とも満身創痍、目だけ光らせ、肩を上下させるほど呼吸は荒く、表情を失うほど疲弊していた。
だが、リーチに差があった。短剣と両手剣で攻撃しあえば、ゴリアテの一撃が先にグレイグに届くことは誰の目にも明らかだった。
「そこまで!」
とボネが言った。
「勝者、ゴリアテ!」