• 王宮のトランペット
  • DQ二次創作
  • ダイの大冒険二次・捏造魔界編
  • このページは「捏造魔界編」の準備ページです。各話のサブタイトルとか順番はたぶん変更になります。

ダイの大冒険二次・捏造魔界編・準備ページ

あれは新型コロナウィルス肺炎の流行が世界中に広がっていこうとするころ、ネット上で「ダイの大冒険」を再度アニメ化するという情報が流れました。この時代に三十年前の夢が実現するなんて。まさかと疑い、本当だと知り、それでもどきどきしながら毎週土曜日リアルタイムで息を殺して展開を見守りました。毎回体感五分、話の筋は知っているというのに目と心が画面に惹きつけられて離せませんでした。

無事に最終回を迎えたあと、ダイ大が終わってしまうということに耐えられず、当時のtwitterにこう吐き出しました。「公式がやってくれないのなら、てめぇで続き、書いたらぁ!」……。あれから一年ちょっと、その叫びだけを頼りに魔界編を捏ねくりまわしていました。つたないですが、ダイロスをこじらせたいちファンの「ダイ大の続き」です。同じ夢を見ていただけたら嬉しいです。

……というわけで、2023年を通してこのサイトの「とんぼ日記」というページでダイ大および獄炎関連の書き込みをしていました。2024年一月日記を新しくしたので、ダイ関連の書き込みのみ、こちらへ移すことにしました。日記と異なり、上にある方が古く、下へ行くにつれ新しい書き込みになります。日付はすべて2023年です。

ダイ大捏造魔界編(1/26)

本日はDQ2、36周年記念日でした。ネット上にはすてきなロトトリオのイラストがたくさんあって、本日はとても幸せに過ごしています。実はここ数か月ほど、脳内の魔界をとんぼはうろついていました。つまり去年からうるさく言ってる例の件、ダイの大冒険二次、捏造魔界編のことをずっと考えてました。本日は当サイトの設立記念日でもあり、現在まで考えたことをちょっと書いてみたいと思います。

もともと魔界編は公式で「魔界にはバーン、ヴェルザーに次ぐ第三の勢力があり、それを地上へ出さないためにダイと仲間たちが闘う」みたいな設定がありました。二次でまず捏造したのは「その勢力は闇を好み、勢力を広げている。この勢力を駆逐できる唯一の方法が太陽で照らすことだった」というもの。バーンの企てが無に帰して、魔界はなすすべもなくその勢力に呑まれようとしています。

 その剣が鬼眼王の巨体を両断した瞬間、魔界は震撼した。暗雲たれこめる空からは雷鳴がとどろき、鋭くとがった岩の峰々は震え、黒い海は激しく泡立って白い波頭が砕け散った。
 魔界から遥か上空での、成層圏の決闘は終わった。かつて魔界の神と名乗って君臨した男は信じられないような表情のまま石と化し、壮大な星の海へ流されつつあった。
「逝ったか……」
 石の体に閉じ込められた魂が、そうつぶやいた。その体は、柱に囲まれた台座に載り、台座は魔界の高峰に安置されていた。衝撃はまだ、びりびりと石像の体をゆさぶっていた。
「ご主人様!」
 わずかに残った家臣たちが駆けつけてきた。
「ご無事で?!」
「私は大事ない。が、下はどうだ?」
 家臣とはいえ、小者、下人がほとんどだが、それなりに気配りのきく者たちだった。
「よくありません。“海”がいちだんと上がってまいりました」
 口と舌が動くなら、勢いよく舌打ちしたいところだった。
「忌々しい!この身さえ動けば」
 封印を受けてから何度も繰り返した嘆きを口に仕掛けて、止めた。
「ご主人様、もう、魔界は太陽を得られないのでしょうか」
「太陽さえあれば、“海”はこれ以上広がらないのでは」
「あのお方が地上を吹き飛ばしてくだされば」
 ため息がもれるのは、止められなかった。
「あきらめるがいい。あれは、逝った。たった今、あの竜の騎士の息子に撃ち取られた」
 ああああ、と嘆きの声があがった。
「太陽はないのに“海”の水面は上がってくる、これでは魔界は亡びるしかありません!」
「私らは、いったいどうすれば」
「逃げ場はないのですか」
「しずまれ!」
 重苦しい沈黙が漂った。
「ここは“海”辺からはまだ距離がある。山の上だからな。 “海面”がここまで上がってくる前になんとか手立てを講じる。それしかない」
「と、おっしゃいますと」
 応えようとしたとき、五感のすみに何かがひっかかった。
「待て、あれはなんだ……」
 膜一枚へだてた空間を何かが漂っている。重力が集中しているようでもあり、暗闇の中に光が動くようでもあった。
「ドラゴン?まさか」
 まさか、と言いながら、それは確信に変わった。特徴のある、峻厳かつ清らかな波動があった。
「聖母竜!なぜそんなところに」
「ご主人様?」
 小者たちに向かって早口に指示を下した。
「このあたりをくまなく探せ!いつもと違う何かがあるはず。魔界に聖母竜がいる」
 聖母竜とは、ドラゴンの騎士の魂と紋章を預かって次代の騎士に渡す役目を持った、特殊なドラゴンだった。
「いやしくもドラゴンであるなら、この私の感覚が誤るわけがない。聖母竜の形をしていないかもしれないが、絶対にいる。探せ!」
 わらわらと小者たちは散っていった。
「ドラゴンの騎士の息子か」
 それはほとんど確信だった。バランがいない以上、聖母竜が宿るのは彼の息子以外にあるはずがない。
「地上の者があの子供を惜しむなら、魔界へ迎えに来るかもしれん。ならばあの子についていれば、地上へ連れ帰ってもらえる。魔界から逃れることも夢ではないぞ」
 とっくに石になった心臓が、がんがんと脈打っているような錯覚があった。
「さあ、来い、竜の騎士の子よ。我が知略の手駒としてくれよう!」
 最後の知恵ある竜は、心の声で咆哮を放った。

というわけで、↑の視点人物である竜は、聖母竜の魂を持つ者を捕らえ、その持ち物を地上へ向かって放ちます。地上では村の子供が涙滴型のきれいな石を拾いました。その子の父によって石はカール王国へ届けられます。「間違いありません。これは、ダイ君が持っていた『アバンのしるし』です」……というわけで、ダイ捜索隊がスタートします。↓は現在までにできているアウトラインです。

魔界突入
プロローグ・アバンのしるし・出発前(修行回)・魔界の入り口(今のところ地底魔城)・ゲートキーパー(神の遺物のひとつ)
魔界行
★敵視点・ダイ発見(たぶん、バーンの第七宮廷)
ダイ復活
疑惑・父の魂・正体・大魔王の呪い・種明かし
大脱出
(負けゲー)・脱出したい・竜騎将就任・偵察と計画・魔界大脱走

細かい戦略は半分も決まっていません。先は長いのですが、毎日ここはこうして、とか、あれは使える、とか、いろんなネタが降ってきて整理に困るありさまです。公式が続編を出したら秒で粉々になる二次創作にすぎません。ゲーム版のサービスの終了の話ももれ聞いています。でも、とんぼは自分でも奇妙なくらい前のめりになっています。先生……魔界編が書きたいです……。

捏造魔界編ちょっと進捗(3/5)

本日Pixiv版「ジャハンナへの道」の最終話を投稿して完結しました。pixivで読んでくださった方、twitterその他で評価してくださった方、最後までありがとうございました。この続きは「エルフの時代」ですが、ちょっと時間を置きたいと思います。さて、先日から取り掛かっていたダイ大二次捏造魔界編ですが、一応魔界へ出発する前の段取りはつけました。一月に出したのは冒頭のヴェルザーのところでした。ヴェルさんは地上からダイを迎えに来て欲しいので、ダイの持ち物を地上へ放ちます。そのひとつが、ダイがアバン先生から卒業のしるしにもらった輝聖石でした。石はカール王国へ届き、アバンの使徒たちが集められます。輝聖石の示す方へ探しに行くと、魔界へ連なる旅の扉を発見⇒そこに古の神の遺産「ゲートキーパー」がいました。使徒たちはそれぞれ修行回を経て魔界突入、という流れです。↓はダイの輝聖石が見つかったときのポップの反応です。

「さて」
とアバンが言いかけた時だった。
 王城に似つかわしくない騒音が響いた。どこかの礼儀知らずが、すごい勢いで階段を駆け上がってきたらしい。
「せーんせーっ」
ドタドタいう音に悲鳴にも似た叫び声がまじった。
「あいつ、見つかったんですかっ!!!」
同時に研究室の扉が乱暴に開け放たれた。
「うわっ」
乱入者は敷物のはしにつまずき、見事にひっくり返った。
「わっ、うわっ、とっとっとぉ!」
乱入者が床に転がると敷物もめくれてはりつき、最終的にそれは壁にぶつかって止まった。ほぼ簀巻き状態のそれの前に、アバンはしゃがみこんだ。
「あわてすぎですよ、ポップ?」
簀巻きから、情無さそうな声がもれた。
「すんません、先生、でも、本当にあの」
あとは息切れで言葉が出ないようだった。
「見つかったのはダイくんではなく、輝聖石、つまりアバンのしるしです」
「でもそれっ、まじでアイツのっ」
バタバタと簀巻きがもがいた。
「落ち着きなさい。私たちはそれを知るためにここに集まったのです。あれが輝聖石だということは、私が確認しました。そして、今までに制作した輝聖石の所在を確かめました」
「そっ、それで?」
「いいかげん、出てきてください、ポップ。そして、あなたの持つしるしを見せてください」
芋虫のように転がりながら、ポップはようやく敷物簀巻きから出てきた。まだはぁはぁと息を切らしながら、服の内側から輝聖石をもどかしげに取り出した。
 ポップは今年で二十歳になる。ダイが消えてからの五年間、文字通り世界中を飛び回ってダイを探し続けていたのを、マァムは知っている。口の達者なお調子者の少年というイメージはあまり変わっていない。が、今のポップは身長が伸び、体もやや厚みを増し、何よりも大魔導士マトリフの指導のもと、膨大な魔力をたくわえるようになった。
「けっこうです」
ポップの持つ石を眺め、アバンは微笑んだ。
「さあ、これですべての輝聖石を確認しました。所在不明はただひとつ、ダイ君に渡したアバンのしるしです。今回見つかったこの石は、間違いなくダイ君の持っていたものです」
 ポップの魂の色は緑、その力は「勇気」。
ダイの名を聞いた瞬間、ポップは目を見開き、そのしるしは澄んだ緑の光を放ってキラキラと輝いた。

魔界へ入ってからは数話を費やして魔界の状況を描く予定です。ゆくゆくは、バーン、ヴェルザーに次ぐ第三勢力のボスとの闘いを予定しているので、魔界はその勢力の前に荒廃しているはず。できればその最後の戦いに参加する魔界の住人をメインにしたい。その住人たちの助けを借りて、一行はダイを発見⇒いろいろあって、ダイ復活。しかしダイは地上へ帰ることを拒みます。↓はレオナの回想。

 老いたる大魔王は光魔の杖を床へ突き立てた。
「念のため、聞いておこう」
 地の底から響いてくるような声だった。
――何を考えているのかしら。
レオナはいぶかった。ダイも同じ思いらしく、警戒もあらわに身構えている。ダイの手にはついさきほど覚醒した二つ目のドラゴンの紋章があった。先行したあまたのドラゴンの騎士たちの戦闘ノウハウの集積、「闘いの遺伝子」、その威力はものすごく、一度は敗北した老魔王バーンとダイは互角以上に戦っていた。
――今さらバーンは何を言うつもり?
杖を床に立てたまま、老魔王は何も装備していないしるしに両手を広げた。
「余の部下にならんか?」
なっ、と言いかけてダイは二の句をつげないようすだった。レオナは思わず老魔王の顔をまじまじとながめた。
「そ、そんなっ、そんな事っ」
いやだ、断る、と言おうとしたときに、老魔王は割って入った。
「おまえの父はこの問いにYESと答えた」
ダイがぎくりとした。
「純粋なドラゴンの騎士であるがゆえに、バランは人間がいかに醜く愚かな生物であるかも良く判っていた。人間は最低だぞ、ダイ」
人差し指でダイを指し、まるで賢者かプロの教師のような口ぶりで悠々と老魔王は説いた。
「おまえほどの男が力を貸してやる価値などない連中だ」
――くやしいけど、こいつ、説得力があるわ。
レオナ自身が君主としての教育を受けている。バーンが発揮しているのは、実力のある者を家臣として得たいときに使う説得術だった。そこに含まれるのは、世辞が一割、そして事実が九割。
「そんなやつらのために戦って、それで勝っても、どうなる?賭けてもいい、余に勝って帰っても、おまえは必ず迫害される」
ダイは、かすかに口を開いたまま沈黙していた。
「そういう連中だ、人間とは。奴らが泣いてすがるのは自分が苦しい時だけだ。平和に慣れればすぐさま不平不満を言い始めよる」
ダイは老魔王を見上げていた。ダイの中にバーンの言葉が事実として沁み込んでいくのが目に見えるようだった。
「そしておまえは英雄の座をすぐに追われる。勝った直後は少々感謝しても、誰も純粋な人間でない者に頂点に立って欲しいとは思わない!それが人間どもよ」
「ちっ、違うわ‼」
たまらずにレオナは叫んだ。ダイの心がバーンの見せた“事実”に浸る前に、なんとか取り戻したかった。
「絶対に私たちはそんな事しないっ」
「それは、姫よ、そなたがダイに個人的好意を抱いているからにすぎん」
あっさり胸中をあばかれて、さすがにレオナは口ごもった。
「それではバランの時と変らん。たった一人の感情では“国”などという得体の知れないものはどうしようもない事は、公事にたずさわるそなたならようわかろう?」
口をぱくぱくさせてみたが、レオナには反論のすべがなかった。ダイの弱点「バラン」と、自分の弱点「国」を左右において、バーンの説得は死角がなかった。
「だが余は違う。余はいかなる種族であろうとも強い奴に差別はせん。反旗をひるがえした今でもバランやハドラーに対する敬意は変わらんよ」
老魔王は、口元にかすかな笑みさえ浮かべていた。
「さあ!どうする、ダイ!無益とわかっている勝利のために命を賭けるか?おまえの価値を判っている者のために働くか?いくらおまえが子供でも、この二択は迷うまい」
レオナはダイとバーンを見比べた。余裕たっぷりに老魔王はダイに斬り込んだ。
「どうする?!……ダイ……!!」
「答えは……」
ついにダイが口を開いた。
「“NO”だ」
安堵のあまりレオナの力が抜けた。逆にバーンは剣呑なようすで目を細め、小さなダイを見下ろした。
「やはり子供よな。甘い英雄の幻想とやらにしがみついていたいのか」
「違う」
とダイは言い切った。目を閉じて、自分に言い聞かせるようにダイは言った。
「人間がたまにそういうひどいことをするのなんて百も承知だ。おまえの言う事もうそじゃないと思う」
レオナの胸が痛むほど、ダイの口調は苦かった。バランとの最初の出会いを、ベンガーナの襲撃含めてレオナはずっと目撃している。
「でも、いいんだ!それでもおれはみんなが、人間たちが好きだ。おれを育ててくれたこの地上のすべての生き物が好きだっ」
ダイの目は、天魔の塔の床面を通して、地上に注がれていた。
「ダイ君……」
「もし本当におまえの言う通りなら、地上の人々すべてがそれを望むのなら、おれはっ」
まだ十二歳。デルムリン島で出会った幼い少年。
「おれはっ……おまえを倒して……この地上を去る!」
魔王を見上げ、驚くほど大人びた表情で、しかし昔と同じ澄んだ瞳で、ダイはそう告げた。

回想と言うか、コミックスの31巻丸写しですけど。このバーンのロジックに対抗できるのはポップだけだと思います。今のところこんな感じで始めたい。「なあ、ダイ、おまえ、勇気って目に見えるか?」……早くこのパートまで進めたい。しかし長い話になりそうです。

捏造魔界編、今月の進捗(3/26)

一か月に一度の割合で進捗を報告しているダイ大二次「捏造魔界編」ですが、今月のご報告など。ダイの輝聖石が見つかった⇒それを手掛かりに探しに行ったら旅の扉⇒入ろうとしたら門番が止めた、みたいな流れは確定しました。この門番、今は「ゲートキーパー」と呼んでいますが、こいつの存在意義は“キャラの舞台への出し入れ”です。ダイ大のキャラは実に多く、とんぼはみんな大好きですが、非力なとんぼが一度に動かせるキャラの数は三人かせいぜい四人です。というわけで、こんな制約をつけることにしました。

「これは魔王ハドラーの持ち物だったそうです。この旅の扉は魔界に通じていると聞きました。当時の俺は興味がなく、モルグに銘じて撤去させました。モルグはこの倉庫へしまいこんだのでしょう」
無言でアバンは一行に羅針盤を見せた。輝聖石は明らかに旅の扉を指していた。
「ようしっ、あいつのいるとこまであと一歩だ!」
腕まくりする勢いでポップが飛び込もうとした。
 突然室内に真っ赤な光があふれた。
「立ち入るな!」
重々しい声が旅の扉から響いた。
 アバン夫妻と使徒たちは一斉にかたまった。
「あなたは誰です?」
アバンが尋ねた。
「我は地上と魔界を分かつ門を守る者、ゲートキーパーである」
と声が答えた。
「古の神々が我をここに配置した。地上生まれの者は魔界へ入ってはならない。魔界生まれの者は地上へ入ってはならない」
マァムは手のひらで腕の鳥肌を撫でた。落ち着くのよ、マァム!そう自分に言い聞かせたが、震えが止まらない。まるで大魔王バーンが傍らにいるような緊張感に縛られている。アバンはじめ仲間たちもじっと警戒していた。
「ゲートキーパー、あなたはどうやら本物のようだ」
とアバンが言った。
「あなたが神に造られた者、神々の遺産だというなら、教えていただきたい。数年前までこの地上には魔族など魔界の住人たちが堂々と跳梁跋扈していた。なぜそのようなことが可能だったのですか?」
ゲートキーパーの声はきしむような音を立てた。
「我の守る門以外の出入り口を設け、そこを出入りした者たちは確かにいた。だが、五年前のある日、その出入り口は突然に閉ざされた」
マァムたちは視線を交わした。その出入り口とはおそらく大魔王バーンが開いたもの、そしてその死とともに閉ざされたものに違いなかった。
「したがって今は神の定められた掟のとおりである。地上生まれの者は魔界へ入ってはならない。魔界生まれの者は地上へ入ってはならない」
「いいや、違うね!」
ポップだった。真っ赤な光に驚いて腰を抜かしていたのだが、さっさと立ち直ったらしい。ポップは旅の扉の向こうのゲートキーパーに向かい合った。
「少なくとも一人、地上生まれの者が魔界にいるぜ。名は、ダイ。れっきとした地上生まれだが、どうしたわけかそっちへ落っこちたらしい。そんなやつがいちゃあ、掟破りになるンだろ?けど安心しな。俺たちがダイを引き取るからよ。さあ、どいた、どいた!俺たちを通してくれ」
マァムの背後でヒュンケルがくすりと笑いを漏らすのをマァムは聞いた。久々に聞くポップ節は絶好調だった。
「立ち入るな!」
先程の警告をゲートキーパーは繰り返したが、どこかあわてているような口調だとマァムは思った。
「よっしゃ、それじゃ、あんたがダイを探し出してここへ返してくれよ。そうすりゃこっちだってわざわざ魔界へもぐらなくて済むんだからさ」
「本当にそのような者がいるのか?」
「おう。ちょうど五年前だな」
「我は把握していない」
こほんとアバンが咳払いをした。
「五年前まで、あなたが把握していない出入りがあったはずですね?」
「ほら見ろ。あんたが責任者なんだろ?さっさとダイを返してくれ」
ぐぅの音も出ないらしい。どうした、どうしたと煽るポップに、ついにゲートキーパーが折れた。
「立ち入りを、認める」
やったぜ!とポップが躍り上がった。
「ただし、地上から魔界へ受け入れるのは四名とする。そのダイという者がすでに魔界にいるなら、捜索隊は三名である」
「けちけちするなよ」
「魔界とは、地上生まれにとって過酷な環境なのだ。三名が滞在できるのは七日を限度とする」
「それじゃ見つかるもんも見つからねえよっ」
「嫌ならば入るな」
「って、おい、嫌だなんて言ってねえだろ?行くよ、行くってば」
アバンが声をかけた。
「では、七日で戻る者の代わりに別の者を送りこみましょう。捜索隊の三名は固定ではなく、入れ替え可能としていただきたい」
んなこと、できんの?と視線でポップは尋ね、マァムとヒュンケルは肩をすくめた。
「……了承する。ただし、捜索隊の活動は月の運行のひとめぐりをもって区切りとする」
「ひとめぐり、おおむね28日ですね。ポップもそれでいいですか?」
ポップはうなずいた。
「それだけあれば、少なくとも手がかりくらいはつかめるな。よし、さっそく」
「待ちなさい!」
厳しい声でアバンが止めた。
「なんでだよ、先生っ!」
「行先は魔界です。なんの用意もないのに突入などもってのほか」

ここからアドバイス編につなぎます。題して「助けてアバン先生」。まずはポップの場合。

「昼間はおれ、すいませんでした」
とまじめな顔でポップが言った。
「あの旅の扉は魔界へつながってるんですよね。魔界って、よっぽどやばいとこですか」
ふむ、とアバンはつぶやき、椅子の背もたれに身を預けた。
「魔界については判っていることの方が少ないのです。なにせ、そこへ行って戻ってきた人間がいないのですからね。けれど昔から魔界は魔族とモンスターの故郷と言われてきました。人間の世界であるこの地上とはまったく異なる環境のはずです」
「ダイのやつ、そんなとこにいるんだ……。一刻も早くあいつの好きな地上へ連れ戻してやりたい。先生、おれ、どうしたらいいですか」
くす、とアバンは笑った。
「おやおや。ずばり言ってごらんなさい」
「ずばりって」
「考えてきたのでしょう?魔界へ行く前になすべきことが何なのか。結論が出たので私をたずねてきたのでしょうに」
 はぁ、とポップは息を吐いた。
「先生にはかなわねえな、やっぱり」
にやりと笑った後、真顔になった。
「あらためてお願いします、先生。おれに武術を教えてください」
「ほう?」
「ヒュンケルやダイと同レベル、なんて思ってねえ。武器屋の息子だけど昔から刃のあるものは苦手だし。でも、魔法力が少ないとかゼロのときに敵に襲われたら、おれは何もできない足手まといです。そんなのはいやだ。せめて自分の身を守れるようになりたい」

あらかじめ、魔界ではMPがすごい速さで減る設定をしておきます。めざせ、ポップのブラックロッド無双。ダイ捜索の行方を阻む者がマホトーンで一行を囲み、マァムもヒュンケルも戦えない状態のとき、にわか仕込みの杖術を披露する予定。続いてマァムの場合。

「はい。あのときの編成は前衛に三人、後衛に一人でした。今回、ダイが不在で、もし、ヒュンケルが戦えないとしたら」
「ええ、前衛は、マァム、あなただけになります」
マァムは両手の指を握り締めた。
「私にできるでしょうか、先生。私、どうすればいいの」
「ブロキーナ老師はなんとおっしゃっているのですか?」
マァムは目を伏せた。
「最近老師は、弟子たちにあまり稽古をつけておられないのです」
大魔王戦、その前のハドラー戦の双方に参戦した老師は、たしかにたいへんな高齢だった。

からの、先生のアドバイス

「ネイル村を飛び出したあなたは稀有な体験をしてきたじゃないですか。ロモスからバーンパレスにいたるまでの戦いを思い返してごらんなさい」
「私、無我夢中で」
「みんなそうでしたよ、マァム。ですがあなたはその道のりで、当時最強の武闘家三人の戦いを見ていたはずです。一人は老師。次はハドラー。最後にバーン」
マァムは目を見開いていた。
「ええ、ハドラーもバーンも体術に呪文を組み合わせて使用するスタイルの武闘家なのです」

で、魔界探索しょっぱなで敵(ここでは“ラノ”)と遭遇。

「今の防御の技は」
とマァムの声がした。
「アバン先生のアドバイスで私が老師に相談して工夫したの。だからもうフェニックスウィングではなくて」
ラノの視界の隅に、すらりと立つマァムの姿があった。
「武神流鳳凰掌、よ」

ヒュンケルの場合。ヒュンケルさんは、兄弟弟子とはちょっと違う感じでいきたい。

「やる気はとにかく、闘気はあるようですね?」
「そんなふうに見えますか?」
「見えますとも。焦りやおごりのない、凪のように静かな心を保っている。闘気を放つには最高の状態です。ヒュンケル」
ヒュンケルが顔を上げた。
「私の代わりに、魔界へ行ってくれませんか」
 ぴく、とヒュンケルの眉が動いた。

実際に魔界の話になったときにヒュンケルが使うのは、序盤では闘気技、と考えています。細切れの思い付きはいくつかありますが、このへんにぜひ、バルトスをからめたい。獄炎の進行を待ってもう一度プランを考えます。そのうちダイ発見ー復活まで持っていく予定ですが、ダイには目を見張ってほしいのです、天地魔闘の構えをあやつるマァムや、カラミティウォールばりの闘気を放つヒュンケルに。

……自分の日記だと思ってとんぼは好きなこと書いてますが、予定は未定なもんですいません。あと、進捗報告も三回目になったのでそのうちPixivさんでまとめるつもりです。まあ、需要はないと思いますが、モチベーション維持のため。もし見かけたらよろしくお願いします。

拍手御礼(3/27)

>とゆーことは、の方、さっそくありがとうございます。クロコさんは「獄炎の魔王」で出身地出てこないかな、と思って待ってるところです。この人が海戦騎になるのは公式設定だったはずなので、魔界に来られないといろいろと困りますです。どうしてもだめなら、このゲートキーパーの制約とかは書き直しですかね。完成までに鬼のように書き直すのは覚悟の上。大変だろうけど、ワクワクも大きいです。いっしょにワクワクしてくれたら何よりです。

パーティ再結成(4/7)

 先日「獄炎の魔王」七巻を手に入れました。楽しみに待っていたかいがありました。勇者アバンのパーティ、勇者、戦士、魔法使い、僧侶がそろうあたり、これはもう由緒正しきドラクエの伝統!と感じられて心がじんわりしました。それから真・アバンストラッシュの完成シーンを見ることができました。アバン先生が戦っていた相手は、真ミストバーン+よろいみたいなもんでしょうかね。怨念と強く結びついた特殊なモンスターが物理防御を手に入れた、みたいな感じで。空裂斬⇒アバンストラッシュがその系統のモンスターのコアを斬ることができる……妄想はかどります、ありがとうございます。
 うわさの子ヒュンケルとクロコダイン、のちの軍団長コンビの初邂逅もよかった。とんぼは5主のように、子供⇒大人とイメージが成長するキャラにいつも惹かれます。ヒュンケルは、憎悪に満ちた軍団長、孤高の剣士にくわえて、健気な男の子のイメージもできました。いいな……とっても、いいな……。
 バルトスとガンガディアがザボエラに会ったあと、苦い顔をしていました。がいこつでも表情があるんですわ、バルトスは。ダイ大原典のやさしいイメージも好きですが、獄炎のバルトスは男前で心を惹かれます。シナリオ上、彼は勇者と一騎打ちをするはずですが、どんな勝負を見せてくれるかと、待ち遠しいような怖いような気持ちで待っています。
 自作の二次がらみでクロコダインが気にかかっていたのですが、出身地等の情報はありませんでした。ただ地底魔城のある場所の名前がヴィオホルン山と判明しましたので、今度からその名前で呼ぼうと思います。で、この山はダイ大時代に入ってフレイザードのせいで噴火するはず。そのあとって、どうなるのかしら。ブラタモリでも見て勉強しようと思います。

心の声がだだもれ(4/26)

今取り掛かっている捏造魔界編ですが、現在獄炎の進行待ちです。四月は主にポップの話を作っていました。魔界に入って敵にからまれ、撃退という流れですが、このとき周りにいたの一種の魔族ということにしたいです。イメージはドワーフ、というか、「白雪姫と七人の小人」の小人みたいな感じのみなさん。つまり、鉱石を掘り出す技能の持ち主です。

 元の長さに戻したブラックロッドを肩に担ぎ、片手を目の上にかざしてポップはぶっとんだリカントを眺めていた。
「呻いているところを見ると、死んだわけではなさそうだ」
と、ヒュンケルは答えた。
「ちょこっと魔力を変換しただけなんだけどな」
 心外だという顔をしているポップの肩を、ヒュンケルはかるくたたいた。
「おまえの『ちょこっと』は相当なものなのだ」
 横からマァムがのぞきこんだ。
「アバン先生とそんな練習してたのね。すごいじゃない」
 ポップはへへっと笑った。
「まあ、護身用だけどな。あいつもこれでつきまとうのやめるだろ。さ、行こうぜ」
 そう言って歩きかけて、ポップの足が止まった。村の住人たちが、かたまってこちらを見ていた。
「やつらのようすが妙だ」
 岩堀族は、最初に会った時の敵意むき出しではなかった。むしろ、興味津々とこちらをながめている。先頭にいる村長らしい屈強な岩堀族の男が、まるで憧れてでもいるかのように、眼をきらきらさせていた。
「お、そ、その、得物、どこで手に入れた!?」
 ポップはきょろきょろしてから、ようやく自分が聞かれているのだと納得した。
「ブラックロッドのことなら、ひとにもらったんだ。一回壊れたのを、直してもらってまた使って」
 最後まで言わせずに村長が詰め寄った。
「誰だ、誰にもらった!」
 余りの勢いにポップが後ずさりした。村長の後ろから、この村の全人口ではないかと思われる人数が詰めかけていた。
「ロン・ベルク」
 いきなり村全体が制止した。
「おまえたちが聞きたいのは、製作者の名前だろう。こいつが持っているのは魔界の名工ロン・ベルク作の杖、ブラックロッド・改だ」
とヒュンケルは答えた。
 村長はブラックロッドから目を上げた。
「ロン・ベルク殿は、生きていたのか?!」

きっとずっと先だと思いますが、この捏造魔界編でダイが見つかったら新しい竜騎将になってもらう予定です。その就任に必要なのが真魔剛竜剣というのはありか、と。で、バランの真魔剛竜剣は、ダイが本編ラストの鬼眼王バーンとの闘いで折っちゃいました。新しい剣が必要なのです。ゆくゆくはその剣の材料になる鉱石を提供する一族として登場予定。もちろん、新しい剣は「ダイの剣」をベースにしてロン・ベルクが……ノヴァが作ることになると思います。こういう計画はしみじみ楽しい。計画倒れになるかもしれないけど。

拍手御礼(4/27)

>獄炎の魔王~の方、いらっしゃいませ。獄炎の柴田先生、元のダイ大にかなり寄せてくださってますよね。第一話がもう「勇者アバン」にすごく忠実で、この先の勇者アバンを見たい!という気持ちにさせてくれました。戦士ロカ、いいですよね。何を隠そう、とんぼは「親友キャラ」というものにたいへん弱いです。パーティはこれから地底魔城突入だと思いますが、活躍してくれるのを期待してます。コメントありがとうございました。

いろいろと不調、ただし(5/2)

4/23に書いたビアンカのためのss「カンパニュラ」を、ようやくアップできました。使っているPC,スケジュール、親戚、とんぼの健康の不調が重なりまして、いろいろと遅れが出ています。ただし、脳内だけはぱっぱらしています。何がぱっぱらかというと、魔界のクロコダインさんの新しいシーンを思いつきまして。

いきなり「籠城戦」というキーワードが降ってきました。なんか、魔界の海に囲まれた島=要塞みたいなところにクロコダインさんがいて、爬虫類系二足歩行のモンスター、シュプリンガーみたいな皆さんを励ましてるところです。「きっと味方が助けに来る。それまで持ちこたえるのだ!」もちろん、先頭に立って戦斧を振るい、一歩もひきません。が、多勢に無勢、あわや、というときに、ドラゴンの騎士が駆けつける、というシーン。それとも、さしものクロコダインが“ここまでか”と、うなだれそうになったとき、十字型の閃光とともにヒュンケルが飛び込んでくる。グランドクルスを狼煙に代えて、味方の突入、なんて絵もいいな……。

などというシーンを、細部を代えながら脳内でリピート上映しているために、三次元への対応が壊滅的です。まあ、昔からなんですけどね。

軍団長コンビ(5/4)

>内外呼応して~の方、熱いシーンをイメージしていただいてありがとうございます。あんまり嬉しかったんで、テキストに起こしてみました。

 血糊ですべる武器の柄を、クロコダインは握り直した。周囲の海は墨を流したような黒一色、波間には銀の鱗に覆われた海蛇の太い胴が絶え間なくうねり、島の周りを壁のように取り巻いていた。鱗の山が一度うねるたびに海藻のかたまりのような生き物が三又の槍を手におしよせてくる。彼らは強くはないが、どんなに斬ってもしつこくくいさがるため、味方の爬虫類系獣人たちは手を焼いていた。
「ひるむなぁっ、ここが正念場だっ」
おうっ、と仲間が叫び返す声もとぎれとぎれだった。
 ぴく、とクロコダインの顔がひきつった。強い闘気を感じた。魔界へ来て以来、ほとんど初めてだった。暗黒闘気の使い手がいるのか。絶望が視界を黒く塗りつぶそうとしていた。
――いや、これは、まさか、光の闘気かっ?!
左右に顔を振ってクロコダインは闘気のでどころを探した。この魔界で光の闘気をここまで高めることのできる戦士は、パーティしかいない。
 どん、と戦斧を足元に突き立て、クロコダインは両腕に全身の意識を集中した。光の闘気のチャージがみるみるうちに高まっていくのがわかった。
「ここだぁっ!」
虚空の一点に照準を合わせ、クロコダインは闘気を放った。
「獣王激烈掌!」
間髪入れずに光の闘気が放たれた。
「グランドクルス!」
海藻の化け物の大軍を吹き飛ばし、二か所からの攻撃が海蛇の長大な胴の一か所をねじ切り、吹き飛ばした。
 味方から大歓声があがった。その中へ飛び込んでくる人影があった。
「無事だったか、クロコダイン」
いつものように冷静にヒュンケルはそう言ってから、ふと口元をほころばせた。
「よく合わせてくれた」
礼を言うならこちらのほうだ、とクロコダインは思ったが、笑いがあふれ出るのを止められなかった。
「長いつきあいだからな!」
ぶん、と音を立てて戦斧をとりあげ、かまえた。
「あれは敵の一部だ。まだ本体がいるぞ」
「心配するな」
くい、とヒュンケルは海の方へあごを振った。
「助っ人はまだいる」

あああ……楽しい!せっかく魔界編を捏ねるんだから、戦闘シーンはスターをそろえて派手に演出したいじゃないですか。ポップの指向性マヒャドいいですよねっ。この時点でダイが復帰している想定なので、もうジャカスカいきたいと思います。実は、一番困っているのが敵の設定です。なにせ大魔王を下したオールスターが挑むわけで、どんだけインフレした敵を造ればこのチームが苦戦してくれるのか。いつもとんぼのぐだぐだにつきあってくださってありがとうございます。ラブラブな「カンパニュラ」のほうもご感想ありがとうでした。

おまえ、ほんとにダイなのか?(5/26)

 だいぶ間があいてしまいましたが、捏造魔界編の進捗など報告です。
 今までアウトラインに沿って考えてきました。そのため、ダイ発見の手がかり⇒魔界への入り口⇒魔界探索と続いています。魔界探索は一エピソードに付き使徒一人をフィーチャーする感じで、三、四話を重ね、そこからダイ発見へもっていくつもりでした。
 マァムとポップをメインにしたエピはだいたい目途がついたのですが、ヒュンケルにいたって欲が出ました。どーしてもっ、バルトスさんをからめたい。おりしも「勇者アバンと獄炎の魔王」では勇者一行が地底魔城へ突入しているので、もう少ししたらアバン対バルトスの一騎打ちになるはず。それを待ちたいと思います。
 というわけで、先にダイ発見のほうの構想を進めることにしました。アウトラインではこんな感じです。
 魔界ではダイの輝聖石をとりつけた羅針盤の指す方へ一行は進み、某所(今のところ“竜の谷”と名付けた土地)でダイ(12歳のまま)を見つけます。ごくナチュラルにダイは捜索隊に話しかけ、パーティはホッとします。「これで地上へ帰れるね」
 しかし。何かがおかしい。違和感がある。
 ダイは……
(1)かつての大魔王戦で戦った仲間の一部を記憶していない。「クロコダイン……て、誰だっけ?」
(2)地上の仲間と会話する(とあるアイテムで連絡可能)のをためらい、特にアバン先生と話したがらない。
(3)かつてのダイなら言わなかったような、あるいは、やらなかったような言動がある。「そんなやつ、ほっておきなよ。自業自得じゃないか」
 これ実は最初のほうで、「冥竜王ヴェルザーの本体は封印されたが、魂だけがダイにとりついている」という設定があるため。とんぼはこの状態のダイを仮に「魔ダイ」と呼んでいます。原稿にするとこんな感じです↓

――おまえ、ほんとにダイなのか?
 ポップはしげしげとダイの寝顔を眺めた。あどけない顔立ち。ほほに十字型の傷。さきほど着替えさせてやったときに、デルムリン島のブラスとポップしか知らないほくろが体にあるのも確認した。人違いのはずはなかった。
 ポップはためいきをついた。ダイが十二歳の姿のままなのはハーフだから。うまくいきすぎて不安になっているだけ。そう自分に言い聞かせてみた。
――疑ってごめんな。
 心の中でそうつぶやいて、ポップはダイの前髪をそっと撫でた。
 ダイがみじろぎした。そのまま手をついて身を起こした。
「悪い、起こしちまったか?」
 ダイは向き直った。ポップは言葉に詰まった。
「おい……」
 心が眠っているのに体が動いているのだろうか。ダイの目は開いているが、瞳に光がなかった。
「魔法使いの……少年よ」
 ざわぁ、とポップの背筋に悪寒が走った。まちがいなくダイの声だった。が、話しているのは見知らぬ存在だった。
「この子を……助けて……やってくれ。竜に……魂を……乗っ取られかけて……いる」
「お前なに言ってんだ?乗っ取りって何のことだ?」
 人形のような無表情、夢遊病のような動作なのに、口調はどこか切迫していた。
「このままでは」
 言いかけて、ダイはぴくりと動いた。
「む、竜が目覚める」
 もうまぶたがさがっている。再び眠りにおちようとしていた。たまらずにポップは叫んだ。
「おい、待てよ!おまえ、誰だ?!」
 睡魔に抗うようにのろのろとダイの両手が上がった。掌を前方へ突き出し、ポップの顔をはさむように動かした。
「なんだ?耳をふさぐつもりか?」
 いきなりダイが目を開いた。
「あれ?おれ、寝ぼけちゃった?」
 きょとんとした顔だった。それはポップのよく知っているダイそのものだった。
「あ、ああ。そうみたいだな」
 へへ、とダイは笑った。
「みんなに会えて、安心したからかな」
「しっかりしろよ。相変わらずだなあ!ロモスの宿屋でそれやったときは、おねしょしてなかったか、たしか?」
 ダイは、昔と同じ表情でふくれた。
「そんなことまだ覚えてるの?やだなあ、忘れてよ」
「わかった、わかった。あー、眠いな。明日は早いぜ?寝ろ、寝ろ」
 うん、おやすみと眠そうにつぶやいてダイはころんとマントにくるまり、寝転がった。ポップもその傍らに身を横たえた。
――間違いない。こいつ、ダイじゃない。
 暗闇の中でポップは目を見開いていた。ロモスではおねしょなど、ダイはしていなかったのだ。指先が震えるのをぎゅっと握り締めてポップはこらえた。

というわけでポップはマァムに相談しますが、マァムにもわかりません。(ただし、ダイがダイらしくない、とは思っている。)次はヒュンケル↓

「俺に相談とはなんだ?」
 いつものように冷静な口調だった。まわりくどく言うのはヒュンケルには効果がない。ずばりとポップは言い始めた。
「あのダイは偽物だ。正体を暴くのを手伝ってくれ」
 ヒュンケルはわずかに眉を動かしただけだった。
「断定できるのか」
「できる。というか、タレコミがあった」
 ポップはダイの夢遊病とそのあとの会話をヒュンケルに向かって語り直した。
「……というわけさ。どう思う?」
「まず、竜とは?」
「勘だけど、“最後の知恵ある竜”こと、冥竜王ヴェルザー」
ふむ、とヒュンケルはうなずいた。
「妥当な線だな。では、あのダイの体の中に、ダイ本人の魂とヴェルザーの魂が同居しているのか」
「そういうことだ、おっと、もうひとり、夜中におれに話しかけてきたヤツも同居だよな」
「誰なのだ?」
「マァムにも聞かれたけど、わからねえ。ヒントは、誰だ、と尋ねたときにこう、両手をあげておれの顔をはさむ、っていうか、耳をふさぐみたいな手つきをして」
 ポップは言葉を切った。ヒュンケルの顔色が変わっていた。
「おい、待て。こうか?」
 ヒュンケルはわざわざ手を出して、自分でポップの両耳に左右の手を添えた。
「ああ、こんな感じだ。なんだよ、心当たりがあんのか?」
 ヒュンケルは目を見開いていた。
「……メガンテだ」
 は?とポップは変な声をたててしまった。
「そいつは耳をふさごうとしたわけじゃない。指をこめかみにつきたてようとしたんだ」
「えっ、それって」
 ポップが自己犠牲呪文メガンテを放ったのは、一度しかない。五年以上昔テランにて、ダイが記憶を奪われ、本人の身柄も竜騎将にさらわれようとしていた時、非力な魔法使いにできる唯一の方法として実行した。
 ヒュンケルがうなずいた。
「マァムにわからなくても無理はない。彼女はあのとき、テランにいなかった。“おまえは誰だ”という問いの答えがメガンテ。ということは」
「バラン!」

 こうして使徒たちはダイの身体からヴェルザーを分離する計画を始めます。一番書きたいとこだけ書くって、なんて楽しいんでしょ。でもお話として完成するには、書きにくいところもがんばらないと。ちょっと前に「この進捗状況をPixivでまとめたい」みたいなことを言ってますが、絵師さんと違って文字書きが進捗報告をするってけっこう難しいなと思いました。とりあえず、近日「捏造魔界編」としてアップするつもりです。
 さて明日は5/27、ドラクエの日ですよ~。主人公たちの集合絵を描いてくださる絵師さん方、ほんと凄いと思う。明日は楽しみに見て回ろうと思います。

追悼ガンガディア(6/22)

昨日今日でちょっと感情がジェットコースターに乗ってるみたいです。まずはガンガディア対マトリフ、最高でした。ガンガディア、もともとラストダンジョンの中ボスとして、怪力の頭脳派という鉄壁の敵キャラでした。けれどそれよりも、最強の技を封じ(メドローア)、弱点を突く(魔法使いの体力)という、正統の戦い方そしてくれました。どちらもマトリフを正しく評価していなければできなかったはず。

しかし師匠のほうも、はったりかましてスキをつくらせ、千載一遇をとらえて勝負に出る。これもまた、攻撃に耐える⇒相手の心理を読んではったり⇒敵の技(ドラゴラム)を逆手にとっての勝負、という正統返しをやってくれました。

今回、絵面にも目を見張りました。一番欲しかったのはその時間(スキ)だ!と明かすマトリフの表情がすごく好きです。ダイ大本編の海千山千の師匠も好きなんですが、それよりも若くて(でも確か後期高齢者)熱いマトリフに胸が震えました。

ああ、濃い戦いだった。ガンガディア、あいつ最期にちょっと、笑ってやがったぜ……。

獣王会心撃!(6/25)

月に一度の捏造魔界編、進捗報告させていただきます。今回はクロコダインのお話。ご存じ、推定年齢30歳、メインキャラたちから年上のおじさん扱いされる男前の爬虫類系モンスターです。彼のセリフの一つ、「男子三日会わざれば刮目して見よ」、は三国志演義が出典だそうです。クロコダインの持つ古代中国の名将のような貫禄にずっと心を惹かれていました。恵まれた巨躯や怪力が生み出した余裕にも見えましたが、クロコダインの本領はダイたちに負けた時から始まるので、もともと潔い性格なのだと思います。理想的な「大人の男」像のひとつ。

 しかし、これを二次創作で再現するのはほんとに難しくて頭を抱えました。そこで考えたのが、クロコダインのすごさを文章で説明できないなら、他のキャラに「あいつはすごい」と言ってもらおうという計画です。下は魔界探索の一シーンです。クロコダイン、ヒュンケル、マァムというメンツで魔界のとある島にある酒場へ聞き込みに来ています。

 酒場の椅子は空き樽だった。クロコダインは悠々と腰かけると、悪魔系らしい店主にむかって機嫌よく話しかけた。
「この土地で酒が飲めるとは思わなかったぞ。何があるんだ?」
 褐色の肌に尖った耳を持つ店主は背後を指した。
「スパイス入りの麦酒に蜂蜜酒、あとは果物で作ったシードルだね」
「ほう。俺と連れに麦酒をひとつずつもらおう。ご婦人にはシードルを頼む。そうだな、肴はないのか」
「ここんとこ、めっきり物資が入ってこなくてね。手持ちのつまみで呑んでもらってるよ」
 店主はじろりと二人の人間を眺めた。
「お客さん方、地上から来たのかい?」
そうだ、とヒュンケルは短く答えた。愛想の悪い店主は肩をすくめた。それでも“出て行け”のようなことは言わず、カウンターに不揃いのマグを三つ置いた。

酒場での聞き込みの結果、隣の島へ渡ることになりましたが、橋の上で巨大な海蛇が襲ってきました。クロコダインは大蛇の頭部を斧で石橋に縫い留めます。ヒュンケルたちが助けにいきますが橋はこわれかけていました。

 視線だけ動かしてクロコダインは仲間を見た。
「ダイを助けろ、ヒュンケル」
 足元からぼろぼろと石が零れ落ちる。
「必ずダイを地上へ戻せ」
 その瞬間、クロコダインは斧を解き放った。白刃を三列に植え付けたような上あごがギロチンのように落ちかかる。抜いた戦斧を下から上へ、クロコダインはたたきつけた。
 声にならない怒号をあげて、海蛇が暴れた。断末魔の海蛇は、橋の残骸をついに砕いた。
「行けえええっっっ、走れえええええっっっ!」
 クロコダインの怒号が背中を押した。きつく目を閉じてヒュンケルが首を振った。物も言わずにマァムを促して橋を渡り始めた。
 マァムは一度ためらい、意を決したようすでヒュンケルの後を追った。
 海蛇がクロコダインの身体を口の中に呑み込み、大きく身を起こした。勝利に驕ったかのように頭部を高くもたげ、海上高く蛇身をくねらせた。が、くぐもった声が聞こえた。
「獣王激烈掌!」

からの、クロコダイン漂流、そして孤島の要塞での籠城戦に参加するという流れです。

それから、ダイ発見の段取りですがこんな感じになりそうです。パーティが橋を渡って隣の島へ⇒竜の谷で人間の子供を発見(ただし遠くからなので話しかけられない)⇒近寄って話しかけると「あ、ポップだ」とごくナチュラルに反応⇒ここから疑惑がつのり、前回(睡眠中にバランの魂がダイの口を借りてポップに救援を求める)シーンへつなげます。
↓は遠くから見た魔界のダイ。

 頭上の厚い雲は風に流されてふと切れ目ができた。その間から、太陽ではない何か不思議な光源から光が差し込んだ。湖に張り出した大岩の上に、スポットライトのようにひとつの人影が浮かび上がった。
 マァムは息を呑んだ。
 人間の子供に見えた。小柄な体、ふっくらしたほほの黒髪の少年だった。ポンチョのような貫頭衣を頭から被り、下はズボンとブーツ。目を凝らしても武器の類は見えない。
「おい、あれ」
 ポップの指がわなないていた。
「ダイ……」
 大声で呼べば消えてしまうと思っているかのように、ポップは低くささやいた。
 ポンチョの少年が腕を肩の高さに上げ、軽くひじを曲げた。ベビーニュートはそのひじのあたりに着地して、ようやく翼を休めた。
 もう片方の手で少年はベビーニュートから首輪のようなものを外してやり、ちらりと筒を見ただけで興味無さそうに後ろへ投げ捨てた。すぐに疲れきったベビーニュートをやさしく撫でてやっていた。ベビーニュートは鼻先を少年の耳のあたりにこすりつけて甘えた。
 少年が何かささやいた。目を細めて笑う顔は、無邪気そのものだった。
「ダイだ!やっぱりダイはいたんだ!おーい、ダイっ」
 距離がありすぎて対岸の少年は気づかない。くそっとポップはつぶやくと、猛然と走り出した。
「俺たちも行くぞ」
「ええ!」
 進めばまたシダの林に入るので、少年とベビーニュートは見えなくなってしまう。だがマァムは対岸のようすに心を奪われていた。
 光が雲上から柱のように降り注ぐ。大岩は古代の大地のようなコケやシダに覆われ、濡れた葉のふちが輝いて見えた。中心にいるあどけない少年も細かな光の粒子をまとい、幼竜に向ける笑顔とあいまって魔界に降り立った天使のようだった。
 ふとマァムは気づいた。三人のオークが天使に近づいている。槍を構え、数を頼みに、彼らは明らかに蹂躙しようとしていた。
「あいつら、よくも」
 思わずマァムがそうつぶやいた瞬間、異変が起こった。
 腕に幼竜を止まらせたまま少年は歩き出した。そしてなにげなくもう片方の腕を水平に払った。
 何が起きたのか、先頭のオークにもわからないようだった。きょとんとした顔つきのまま、オークは足を止めた。もう一歩踏み出した時、喉笛から体液が吹きあがった。
 愕然としてマァムは立ち尽くした。
「×◆▽◎□×××!」
 仲間のオークの叫び声と、空気を震わせる振動が同時だった。ごとんと音を立てて、猪頭がふたつ岩の上へ転がった。天使のような少年は、犠牲者のほうに視線を投げることすらしなかった。
「マァム、急げ!」
 ヒュンケルに名を呼ばれてマァムはようやく我に返った。対岸から目をそらせ、シダの茂みへ走り込んだ。
 紋章閃、とマァムはつぶやいた。人がうるさいハエを払うように、なにひとつためらうことなくオークの命をあの子は消し去った。
――ダイじゃない。ダイはそんなこと、しない!
けれど、ダイのほかにこの魔界で紋章閃を使える者がいるだろうか。どうかダイではありませんように、とマァムは祈りながら走り続けた。

ダイは本編ラストで上半身裸だったので、ポンチョを着てもらいました。はやくそこまで書きたいのですが、先は長いです。後半なんか、全然できてないし。それから先月Pixivさんに進捗報告をアップしたところ、大勢の方に見ていただけました。ありがとうございます。今回のもそのページを編集して付け加え、今月の月末まで全体公開します。よろしくお願いします。

桃色の髪のメイクーニャン(7/25)

 今回の進捗報告の前に、Vジャンプの獄炎の感想など。魔王の最終ダンジョンの戦いですが、前回ガンガディアにはマトリフがあたり、今回キギロにはロカが対応します。
 ダイ大本編の状況からロカは早逝すると、わかってはいました。本編のネイル村にはレイラしかいないのですから。それもあって戦士ロカの戦いをいろんな意味で注目していました。
 魔王城最終ダンジョンで人面樹の亜種であるキギロの放つ呪いの木切れの破片を身体に打ち込まれ、ロカは動けなくなりますが、レイラとアバンを先行させ、自分はキギロの前に立ちはだかります。ロカの使う技はカール騎士団正統初撃、「豪破一刀」。
 今見たら初出は獄炎二巻、ほとんど最初からロカの必殺技でした。ところがこのキギロ戦においてロカはこの技を進化させます。自分の周辺に闘気を張り巡らせ、決死の覚悟で敵をふせぎ、スキを見て反撃する……その効果は次の回を見なくてはわかりませんが、キギロ討伐に成功してほしい、できたら生き残って欲しい。祈るようにそう思いました。
 もともとダイシリーズは己の技を磨きあげるための、血のにじむような工夫の積み重ねですし。技というと「小手先の」とかがつきそうですが、ダイ大キャラの使う技はそのキャラの人生や一番の願い、譲れない大事なものを全部乗せて放つものだと思います。現在ダイ大二次をやっていてそう実感しました。

 さて、今回の進捗報告はその流れで、マァムさんのお話。スタイルのいい健康美人で気持ちの優しい少女だが恋愛関係にはうぶ、かつ、かなり鈍い。捏造魔界編におけるマァムがどんな活躍をするのだろうと考えた時、ダイが竜の騎士になったときマァムが空戦騎になるのでは、と思いました。理由はシンプルで、空戦騎なら空に棲む竜の長であるはず、そして代表的な飛竜としてスカイドラゴンのようなオリエンタルドラゴンをイメージしてみたら、武闘家マァムが良く似合うと思ったからです。チャイナカラー、ロングスリットの武闘着を着てくれたらぴったりかも。
 だとすると、空戦騎に就任するために試練があるのでは?内容は今も考え中ですが、その試練のときマァムが使用する技が特別なものであってほしい。
 イメージでは、ガンガン襲ってくる攻撃をすべてはじき返して耐える、というもの。
 そんなときに獄炎最新話ロカの「豪破一刀」を見て、これか!と思いました。
 もともとマァムは武闘家なので、闘気をあやつることにはむしろ慣れていると思います。闘気をもって自分の周囲に円形の領域をつくり、その中に入ってくる攻撃を見定め、冷静に弾き返す。
 それでその領域の中心に立ち、両手を前に出して架空の剣に重ね、正統のかまえをしてくれたらいいなと思いました。
 しかし。マァムのこの技はとうとつに出てきちゃいけないのだと思います。そこに至るまでのプロセスがたぶんあるはず。その最初のとっかかりはこんなイメージです。マァムと話しているのはアバン先生。

「ネイル村を飛び出したあなたは稀有な体験をしてきたじゃないですか。ロモスからバーンパレスにいたるまでの戦いを思い返してごらんなさい」
「私、無我夢中で」
「みんなそうでしたよ。マァム、ですがあなたはその道のりで、当時最強の武闘家三人の戦いを見ていたはずです。一人は老師。次はハドラー。最後にバーン」
 マァムは目を見開いていた。
「ええ、ハドラーもバーンも体術に呪文を組み合わせて使用するスタイルの武闘家なのです」
 マァムは顔を上げた。
「何かわかってきました。私、考えてみます」
 いい顔だ、とアバンは思った。
「それならひとつアドバイスがあるのですが、聞いてくれますか」
「ええ、何でしょうか?」
 何から話せばいいか、とアバンは迷った。まっすぐに見上げる瞳の、ある意味不器用で傷つきやすく、それゆえに人の心を惹きつけるこの少女に、その父の話をどう始めればいいか。
「カール騎士団の正統の剣を知っていますか?」
「いえ」
「魔界へ出発する前に、カール騎士団の修練場へ行くべきです。騎士団正統の剣において、その初撃は他流にはあまり見られない独特のスタイルを持っています。『豪破一刀』と呼ばれるそれを、一度見学してください」

このあと魔界に入って雑魚敵(文中では「ラノ」)と遭遇。初めての実践はこんな感じ。

 ラノがとびかかった。人の身長の倍ほども飛び上がって自慢の爪を振り下ろした。
 時間が引き延ばされて、ゆっくり進んだ。
 ラノの爪を真下からマァムの手刀が受けた。
 モンスターであるラノの目にも追えないほどの速さで手刀が迫る。彼女の白い手は陽炎をまとっていた。
 手刀が爪をとらえ、押し上げ、はじき返した。
 弾かれた腕に強烈な衝撃があった。ラノの身体が一度浮き、次の瞬間、背中から地べたに激突し、勢いよく転がった。
「うっ!」
 背中どころか、全身が痛かった。ラノは痛みに耐えて脂汗を流した。
 マァム!と名を呼んで旅の仲間たちが駆け寄った。
「今の、フェニックスウイングか!」
「あれはバーンの身体だけができる技」
とマァムの声がした。
「今のはアバン先生のアドバイスで私が老師に相談して工夫したの。だからもうフェニックスウィングではなくて」
 ラノの視界の隅に、すらりと立つマァムの姿があった。左手で右手をおおっているが、どこかはにかんだような表情だった。
「武神流鳳凰掌、よ」
「よく、ここまで」
 ヒュンケルが短くつぶやいた。
「ピオラとスカラを、インパクトの瞬間に放つ。実戦で使ったのは今日が初めて。でももっと工夫しないとね」

これをなんとか工夫して、後のほうで再登場させたいです。

前回から引き続き、本題のダイ発見のほうですが、ダイの中にいたヴェルザーを追い出したとたん、ダイが逃げ出すという設定をしてみました。バーンの言葉に縛られ、地上へ帰ってはいけないと思い込んでいる状態です。ダイは、近くにあった城の廃墟(元・バーンの第七宮廷)へ逃げ込み、瓦礫の奥に隠れます。瓦礫の前まで仲間たちが追い付いてきて説得にかかる、というシーン。ダイは、仲間たちの姿は見えないけど声は聞こえています。冒頭でしゃべってるのはヒュンケルさん。

「竜の騎士は強さゆえに迫害される、とバーンは言ったそうだな。ヒトは恩知らずだ、ヒトは異端者を排斥する、と。そういう面も確かにあるだろう。だが、そればかりがヒトの姿ではないと、おまえは知っているはずだ」
「それは……知ってる。知ってた。でも、竜魔人になったときのおれは、ほんとに戦うことと勝つことしか頭にない生き物なんだ。こんなおれを受け入れてくれる世界なんてないよ」
「俺は罪人だ、ダイ。今でも償いきれてなどいないと思っている。だが、こんな俺でも地上は受け入れてくれた」
 ダイは両手で顔をおおった。
「ヒュンケルはれっきとした人間じゃないか。おれとは違うよ」
 昔の仲間の前でみっともなく泣き出したりしたくない。ダイは震えてくるあごを手でおさえた。
 ヒュンケルが何か言いかけてやめた。ポップの声がした。
「おれの出番だ」
 マァムがささやいた。
「どうにかできそう?」
「どうにかっていうか、あいつ、昔のおれとそっくりのこと言ってるんだよ」
「昔とは?」
とヒュンケルが尋ねた。
「おめぇの処刑場で、ミナカトールのための魔法陣を五人で描こうとしていたときさ。だからおれ、あいつが今どんな気分なのか、ちょっとわかるんだ。なあ、ダイ?話をしようぜ。五年ぶりなんだからよ」
「だめだ」
 弱弱しくダイは抗議した。
「おれにとってレオナもポップたちも、どんなに大事かわからない。でも、だからこそ、おれは地上の世界には触れられない。わかってよ。説得なんてやめてくれ」
「それじゃ、ひとつ教えてくれよ」
 背は高くなり、声は低くなったけど、ポップの口調は昔と変わらなかった。
「ダイ、おまえ、勇気って目に見えるか?」

今、いっしょうけんめいポップの説得にかかわるロジックを作っているところです。なんとか説得力のあるロジックを持ってこないと、このあと全部ご破算なので。がんばってみます。

白翼のドラゴノイド(8/25)

 Vジャンプでロカ対キギロの結末読んできました。ロカ、生きてほしい、ほんとに。ダイ大本編では出番少なかったのに「獄炎の魔王」でロカはほんとにいいキャラになりました。というか、好きだ。

 さて、今回の進捗報告はダイのほうから。クロコダインの籠城戦でヒュンケルが華々しく飛び込んできた直後、別の助っ人が来ます。一人はラーハルト、もう一人はクロコダインにとって見覚えのない若者でした。

 船は浅瀬の手前で止まった。そこから二人が飛び降りた。バシャバシャと波を蹴立ててこちらへ走ってきた。
「ラーハルトが来たのか」
 半人半魔のラーハルトは愛用の鎧を装備して槍を携えていた。その姿はクロコダインもよく知っていた。もう一人は十代の若者で、種族はおそらく人間だと思われた。
 クロコダインは首をひねった。全く見覚えがないというのに、この人間の若者はなぜかとても懐かしい雰囲気をもっていた。
「誰だ、あれは」
「誰だと思う」
 ヒュンケルが満足そうに尋ねた。
(略)
 その中から一人、あの人間の若者が突出した。走りながら抜刀してかまえていた。
 ラーハルトはその背後を守るように立ち、頭上で槍を無造作に回転させた。ハーケン・ディストールのひとふりで、黒いアンデッドのほとんどが木っ端みじんに砕け散った。
 そうしている間にも、若い剣士は走って海蛇に接近していた。たいていのヒトは足首が隠れるほどの水の中を走るのは苦手なはずだが、若者はものともせずに距離を詰めていく。
 魔界の上空にたれこめる厚い雲の中に、稲妻が閃いた。
「あいつが呼んでいるのか」
 右上段にかまえた刀身には、すでにバチバチと音を立てて雷がまとわりついている。
 大口を開けて海蛇は威嚇した。
 剣士は浅瀬から跳んだ。
 空中で剣を頭上に振りかぶって激しく振り下ろした。
「ギガブレイク!」
 稲妻が魔界の薄闇を裂いて白く煌めき、斬撃と共に轟音が鳴り響いた。
 跳躍、振り切り、着地、どの動作も百戦錬磨の戦士の余裕をそなえ、力強くも華麗だった。
 巨大な蛇体はほとんど頭部をつぶされ、ぐしゃりと砂州へ崩れ落ちた。そのまま自重に引かれて海中へ滑り落ちて消えた。
 クロコダインは、うなった。その技の威力は身をもって知っている。バラン亡き今、ギガブレイクを使うことができるのは、その息子以外にありえなかった。

というわけで、17歳のダイの初陣シーンでした。
話の展開上ダイにはいきなり竜魔人になってもらう予定です。相手は魔界を牛耳る三大勢力のうち、バーン、ヴェルザーに次ぐ第三のボスです。

 光の中にダイが立っていた。
 額にあった竜の紋章が青く発光している。紋章はバランと同じく兜の前立てのように華やかに広がっていた。
 ぴく、とダイが身じろぎした。苦しそうに上半身をねじって前かがみになった。両手で自分の服の胸のあたりをわしづかみにしてダイは一息にむしり取った。
 竜魔人と化したバランのような、見るからにドラゴンたる筋肉の流れはまだない。重量感も父に及ばない。あくまでベースは人間の若者のようだったが、肩から腕にかけて、バランと同じ竜の尾の剣板が並んでいた。
 ダイのむきだしの背で何かが動き出した。服の残骸をおしのけてそれは大きく伸びあがった。骨格の間に被膜を張った竜の翼だった。
 ヒュンケルは息を呑んだ。
「あれは、翼か!子供のころはなかったはず」
 うむ、とラーハルトがつぶやいた。
「竜魔人ならば当然だ。が、」
「なんだ?」
「バラン様とは、翼の色が違う」
 竜魔人バランは白い骨格に黒い被膜のある巨大な翼を備えていた覚えがある。だが、成長したダイの背には、淡い金の骨格に白い被膜の翼があった。
「ソアラ様の血か、あるいは、奇跡か」
 奇跡のほうだろう、とヒュンケルは思った。目の前の若きドラゴノイドは殲滅の使者であるはずなのに、どこか天使のような清らかさがあった。

 ダイも翼を持てたらいいな、というか、新アニメのEDのひとつに幻の金の翼をつけて走るダイがいて、↑はそのイメージです。ですがお約束として最初のボス戦は負けゲーです。敗れたパーティは海上で助けられるのですが、助けた方の魔族たちからダイは意外なことを聞きました。

 魔族の中でも年かさの男が進み出た。ヒュンケルは、ふとハドラーを連想した。青みがかった肌と尖った耳、立派な体躯の持ち主だった。何よりも鋭い目とかたくなな表情が、かつての魔王を思わせた。周りの態度からすると、その男はどうやら一族の長、船長格の者であるらしかった。
「あなたは、竜の騎士か」
 切りつけるような聞き方だった。ラーハルトが身構えた。
「そちらには関係ない!」
 じろりと魔族の長はラーハルトを見た。
「先ほどの戦いをこの船の上から見ていたのだ」
 半竜半人の姿、攻撃技、その威力。たしかに魔界の民なら一目で竜の騎士とわかったことだろう。
 ダイはその魔族に向き合った。
「おれの父は竜の騎士、母は人間だった。おれは、ハーフかな」
「父上はどちらに?」
「とう……父は、大魔王との闘いの中で戦死した」
「では、あなたが当代の竜の騎士なのだな?」
 魔族たちがざわめいた。そのざわめきを、魔族の長は手で鎮めた。
 やおら魔族の長は腰を沈め、甲板の上に片膝をついた。一族の者たちがいっせいにそれにならった。
「竜の騎士よ、我らを地上へ逃がしたまえ。我ら一族をあげて、かく願い上げる」
 そう言うと、ダイの前に深々と頭を下げた。

 さて今月のお盆のころに長年の相棒に捏造魔界編を見てもらう機会があって、グッジョブもらいました。そのときに話したのがきっかけで、ヒュンケルのパートが見えてきました。ダイ大本編では、ダイの行方不明と同じくヒュンケルには戦闘不能という形ですっぱりとカタが付けられていました。そこをあえて続けようとするからには、避けて通れない問題がありました。

 ヒュンケルは、戦えるのか?一案として戦士以外の職業、例えば魔法使いとか参謀として活躍するというのがありました。銀縁眼鏡のヒュンケルとか、これはこれでいいわぁ……などと思ったのですが、ポップがその役にいるので、活躍シーンを二人分作るのがとんぼには無理、という判断で見送りました。

 第一、不死身のヒュンケル兄さんには切った張ったがよく似合う。やはり戦士として再登場してもらおうと思います。ただ、「身体治りました~」といきなり参戦するのはなんか書けないと思ったので、クッションおきます。まず出発前の、アバン先生とのやりとり。ヒュンケルは歩く時は歩行の助けになる杖をいつも持っています。その状態ですがアバン先生から、自分の代わりに魔界へ行ってくれ、と頼まれます。

「そんな表情だと、子供のころのあなたを思い出しますねえ……ああ、わかりましたよ。からかうのはやめましょう。また嫌われてしまう」
 アバンは咳払いをした。
「ヒュンケル、あなたは再び武器を取ることをためらっているのではないですか?」
 水鏡のようなヒュンケルの闘気が、一瞬波立った。
「なぜ」
「なあに、勘ですよ。魔界へ行ってごらんなさい。ためらいを克服するきっかけが、必ずあると思いますよ」

 魔界でヒュンケル、マァム、クロコダインの三人パーティだった時、分断されて霧深い沼に誘導されたヒュンケルは、正体の判らない敵に襲われます。ここでヒュンケルが持っている杖は魔界出発前にラーハルトから手渡された餞別です。

 どれだけ気配を殺しても、物理的に質量はある。
――敵の足が沼に踏みこめば、水音がするはず。
 足元の感触を頼りにヒュンケルは無造作に動いた。水たまりの真ん中に立てば、敵は音を立てずに接近することはできない。
――これで攻撃が来たなら、相手は遠距離攻撃技を持っていることになる。
 それはそれでやっかいだった。が、少なくとも相手の情報は得られる。そう考えてヒュンケルは身構えた。
 ぴっ……という音をとらえた瞬間、ヒュンケルは杖の握りを顔の前まで斜め上に引き上げた。
 ガガッと音がして、杖に刃が連続してぶち当たった。
 その衝撃で留め金がはずれたようだった。歩行杖、に見せかけた鞘が壊れ、滑り落ちた。内部に仕込まれていた、定寸無反りの直刀がむきだしになった。

ただ、くどいようですがアバン対バルトスの戦いを見てからもう一度考える予定なので、今回持ってきたサンプルは書き直し前提のほとんど供養です。供養ですが、↓の部分特に最後のくだりだけは、たぶん決定稿まで生き延びると思います。

 沼の中に片足を踏み込み、一撃を放った刀を前方に保持したまま、ヒュンケルは背後の敵の気配を探った。
 乾ききった白骨が、ばらばらと砕けていくのがわかった。
 自分のあごから血の混じった汗がしたたり落ちた。
 ゆっくり体勢を戻し、ヒュンケルはようやく振り向いた。
 敗れた敵の剣士は、すでにひと塊の骨となっていた。見ている前でその骨は空気に溶けた。
 ふとヒュンケルは足元に白いものを見つけて、手に取った。掌でそれは二つに分かれた。自分が切断したものに違いなかった。
 金属だろうと思っていたそれは、軽かった。おそらく紙と思われた。しかもかなり古い、とヒュンケルは考え、次の瞬間、息を止めた。
 二つに分かれた紙片を手の上で寄せると、星の形になった。

でもいちおうヒュンケルのパートが形になってきたので、今度はいよいよ捏造魔界編の後半をがんばることになります。ここが悩みどころで、ダイ大本編のような強大な敵との決戦は、とてもとんぼには書けないのです。ならばどうするか。魔界からの脱出を書こうと思っています。後ろから第三のボスが追ってくる中、地上へ向けての脱出計画です。がんばる。

アバン流杖殺法(9/26)

月に一度の捏造魔界編進捗報告に来たんですが、今月の獄炎の感想から。
「元々人間は魔物みたいに長く生きられねえ。だから託すんだ、自分以外の誰かに……」
早死にを宣告されたロカのセリフです。本編最終決戦中のポップの述懐、ひとはいつか死ぬ、だからこそせいいっぱい、閃光のように生きる、に通じるものを感じます。ロカが想起しているのはレイラとマァムという彼の家族ですが、マトリフやアバンも含めて「自分以外の誰か」なんでしょうね。これがキギロが理解しえなかった一体感なのだと思います。
「だから今日のオレは勝者だ」
普通に生きて、未来がないと言われて、堂々とそう名乗る者がどれほどいるでしょうか。しみじみロカはいい男だなあ。
 さて、順番として次はアバン対バルトスかなと思っていたら、伏兵がいましたよ。しかし、もしかして、いや「勇者を無傷で魔王の元へ」戦略を守るとしたら、レイラ対フレイザードということになるのでしょうか。レイラさんはけして弱者じゃない。しかしこの次もハラハラしながら見守ることになりそうです。

今月は、実は、このあたりまでにアウトラインを仕上げてそろそろ原稿の仕上げ、と思っていた時期でした。アニメが終わって一年くらいになりますから。が、予想外の因子が出てきたこともあって、思いきりずれこんでおります。とりあえず、今月はポップの話をがんばっていました。ポップはパーティの中で特殊な存在です。ダイ大影の主人公の呼び声も高いこのキャラは、やる気も頼りがいもない雑魚キャラ⇒魔法で戦う戦闘要員⇒彼にしかできない魔法技術の持ち主⇒パーティの頭脳⇒最高の友だちという右肩上がりのルートをたどって成長していきました。

二次創作で活躍するとしたら、はたしてどんな役をあてればいいでしょ?と考えた時、最初に頭に浮かんだのが「参謀役」でした。ダイ大本編ではアバン先生の果たした役割です。キルバーン対アバン、ポップマァム組対ミストバーン(実際は援軍多数)、ダイレオナ組対大魔王。アバン先生による本編最終決戦のデザインはこんな感じだと思います。

 全体の勝敗を決めるデザインをする役、参謀というのはカッコいいなと思うのですが、これはクライマックスの時に輝く役です。しかしとんぼには最初っからクライマックスを書けるほどの筆力はありませんで、そこまでえっちらおっちらお話を持ち上げなくてはなりません。そういう通過点のひとつが、ダイの身体にとり憑いた魔物を落とすという筋です。破邪の秘法なら可能ではないかと思います。

「ピロロが言うには、あんたは欲が深いんだって?」
ポップは額に汗を浮かべていた。魔力消費の激しいこの魔界で、莫大な魔力を岩の上の魔法陣へあとさきかまわず注ぎ込んでいるようだった。
「だから大魔王の宝って言えば釣れるとふんだ」
ダイの表情が変化した。あざといほど可愛らしい、幼く見える少年の顔を捨て、邪悪な本性を見せた。
「ええい、たばかりおったな!」
罵る声も、まだ高い子供の声から威嚇するような低音になった。
「最初にダイを騙ったのはてめぇじゃねえか。そして魔法陣の中に立たせちまえばこっちのもんだ。」
にやりと笑うとポップは呪文の仕上げにかかった。
「これぞわが師アバン直伝、破邪の秘法!」
ダイのまわりに、二重の円とその中央の五芒星が白く浮かび上がった。

ポップ+破邪の秘法、という組み合わせなので、魔界突入前にポップがアバン先生に破邪の秘法を授けてくれ、と頼むシーンが入ります。こんな感じ↓

「ただし、これには条件があります」
ポップは微妙な顔になった。
「スペシャルハードコースは覚悟してるぜ、先生」
「エクストラスペシャルですよ?」
くすくす笑ったあとに、アバンはすらっと言った。
「ポップ、破邪の秘法とは別に習得してほしいスキルがあるのです。魔界で役に立つかもしれません」
「なんですか?おれ、なんでもやります」
「長所を伸ばすのと同時に、弱点の克服も図ろうという話です。魔法使いは常に杖を携帯していますね?」
「杖ですか?まあ、たしかに」
「しかもポップ、あなたが好んで装備する杖は、スティックやワンドというよりロッドかステッキに近い。ということは」

上のサンプルの後半ですが、実は魔界に入ったばかりの章でマァムとヒュンケルに一つずつエピソードをつくったので、ポップにも欲しい、と思いました。どんなエピがいいかなと思った時、ちょっと気になったことがありました。一言「杖」で検索をかけるとワンド、スティック、スタッフ ロッド、ケインなど英語でいろんな訳がでてきます。
Wand ハリーポッターの世界の魔法の杖
Staff 指輪物語に出てくる、ガンダルフのもってるような魔法の杖
だそうです。記憶違いでなければガンダルフの杖はがっしりした木製で、旅の仲間が武器を預けなければならなかったときいっしょに取り上げられるほどごついものでした。

 肝心のポップの杖は、最終装備がたしか名工ロン・ベルク製の「ブラックロッド」だったはず。でもほかならぬ大魔王がまっぷたつにしてました。とりあえず、それに類するロッド系を身につけている、と仮定します。その杖を使った武術を身につけてポップは魔界に挑む、という設定を考えました。↓で戦ってるのは、やられ役に設定したリカントの「ラノ」。装備はやはりブラックロッド、つまり理力の杖みたいな効果のある装備ということにしてください。

 冷静にヒュンケルが声をかけた。
「潮時だ、ポップ」
よしっ、とうなずき、ポップは少し下がってロッドを構えた。
「アバン流杖殺法!なんてな」
ラノはポップを追った。間合いを取られて不利になるのは自分の方だった。
「魔界入りの前にアバン先生に杖術の稽古をつけてもらったんだけど、できるようになったのは基本技だけなんだ。けど、おれの魔法力を変換して食わせてやるよ。素人に毛が生えたていどなんで、手加減できねえ。恨むなよ?」
そう宣言して、なかば目を閉じた。
――なめやがって!
ブラックロッドの中央、黒い持ち手の部分が薄く発光していた。薄暗い魔界の山腹、重く垂れこめた雲の下、それはほの白く輝いて見えた。
「こんなもんか」
ロッドの下部を両手で握り、ポップは握った手を耳の高さまであげた。胸から下は襲ってくださいとばかりにガラ空きになっている。ラノは突っ込んだ。
 ポップの足が一歩踏み込んだ。気が付くと、ロッドの先端がラノの目の前にあった。
 次の瞬間、すさまじいスィングが顔面に来た。首をもぎ取るような勢いを受けて、ラノの足が浮いた。あらがうこともできずにラノは吹っ飛んだ。後頭部、背中、腰が岩肌にたたきつけられた。

↑とか書いてますが、記憶が正しければ原作のどっかにアバン先生の会得した武術が列挙されてて、そこに杖術は入ってなかったような気がします。このエピは、最終的にどうかわからないんで、ここで供養になるかもしれないです。供養ついでにもう一発。↓は魔界での回想シーンということにした捏造です。

「ミスト、もうよい。あれは逃げたようだ。落ち着くがいい」
老魔王がそう呼びかけた。
 ミストと呼ばれた白衣の男は、ようやく攻撃をやめ、息を整えようとした。
「私としたことが、つい取り乱しました。どうか、お許しを」
「珍しいことだな。ここまでおまえが乱れるとは」
それは、過ちをおかした家臣に対する主君の態度というよりは、気に入りの孫をあやす好々爺の口調に近かった。
 仕草で、ついてまいれ、と告げて、バーンは空中を動き出した。恥ずかしさにうなだれて、ミストがそのあとを追った。
 バーンは白いチュニックの大きな袖を交差させて腕を組んだ。
「あれの何が、そこまでおまえを苛つかせるのだ?」
そう言うと、腕組みをしたままミストのほうへ視線を投げた。
「……ご存じでいらっしゃいましょう、あの醜い、おぞましい者と私が、同族である、と」
ふふ、と大魔王は声を立てた。
「何のことかと思えば、また」
ミストは押し黙っていた。
 ふいに魔王は立ち止まり、手を伸ばして、無造作にミストのフードの中に手を入れた。
「おまえはあのような、おぞましい者とはちがう」
位置的に、ミストのあごを直接つかんでいるようだった。
「天地魔界に声をあげ、誰はばかることなく名乗るがよい、我こそは大魔王バーンの第一の側近、最も信頼厚き家臣なり、と」

今月は「インフィニティ・ストラッシュ」の発売があって、DQタクトではダイ大コラボイベントを復刻してます。で、今年の冬にはピサロ様が主役を張るDQM3と。目がいくつあっても足りませんがな、という状態です。タクトではガチャで竜の騎士ダイと魔法使いポップが来てくれました。イベントでは当然バラン戦もありまして、対するチームのリーダーはパパスさんだったので、お父さん対決となりました。チームと言えば、5王子とダイは手持ち、ここへDQ4とDQ3の主人公たちが来てくれたら勇者チームができそうなんですが、こればかりは運しだいです。

ドルオーラダンディ(10/25)

今月も獄炎感想からいきますね。地底魔城の戦いが佳境にさしかかっています。座り込んだまま呪文を放つレイラを見た瞬間、本編の一コマがありありと蘇りました。このシーンだったんだ、これが見たかったんだ、と気付かせてもらいました。言わず語らず、読者が受け止める二重情報。重なる情景。ダイ大ファンやっててよかったです。敵はフレイザードじゃなかったけど、双子みたいなやつですわ。ということは相当アレな性格なので、レイラ姐さん、思い切りよくやっちゃってください。開き直ったレイラが、乙女の本気を陽炎のようにゆらめかせている。それからついに勇者が地獄門へ到達しました。こちらも息を殺して見守りたいと思います。バルトス最後の戦いです。

さて捏造魔界編、今月の進捗報告なんですが広げ過ぎた風呂敷をどうやって畳もうかと考えていました。今のところこんな流れです。
魔界でダイが見つかってさあ帰りましょうとなったとき、魔界が第三のボスに支配され、魔界そのものも滅亡しかけている⇒ダイは魔界の住民を避難させようとする⇒ゲートキーパーが規則を盾に立ちはだかる。
↓はダイがゲートキーパーと直談判するシーンの直前で、レオナ視点です。

 ダイが見つかった、とパプニカに第一報が入ったのは、数日前のことだった。その日からパプニカのレオナは猛スピードで仕事をこなし、今日の半日の休暇をむりやりもぎ取った。
 宝石のようなその休暇は、マリンやアポロがレオナの仕事のかなりの部分を代行してくれたから手に入ったようなものだった。というわけで、レオナは賢者たちを宮廷に残し、数名の護衛だけをつれてヴィオホルン台地を訪れていた。
 半休は午後からだったので、時間はもう日没が近い。護衛兵があわてるほどの速さでレオナはカール王国が設置した天幕まで突進した。
 カールの天幕の前にアバンがいるのが見えた。手にしたアイテムに何か話しかけていた。
「そうですか。ダイ君らしいですねぇ、まったく」
 その名を聞いた瞬間、レオナは反射的に走り出した。
「別の世界ということについては、私に心当たりがあります。うまくいけば」
 よほど騒々しかったのだろう、アバンが気付いてこちらを見た。
「ポップ、レオナ女王がお見えです。『王女の愛』をダイ君に」
 アバンの手からレオナはアイテムをほとんどひったくった。
「ダイ君?ダイ君なの?」
 はるか遠い魔界から、息を呑む音が伝わってきた。
「うん。おれだよ」
「声が……」
 いかにも男の子らしい可愛い高い声が、低い、大人の男の声に変わっていた。
「ごめんよ。五年もたっちゃった。レオナに叱られる約束も、まだだった」
 ぐすっと鼻が鳴った。レオナはあわてて鼻を抑えた。視界の隅で、アバンが天幕の中へそっと引きあげるのが見えた。兵士たちも会話が聞こえない距離までさがってくれていた。
「マァムがね、地上へ戻る前に、おれにパプニカのナイフを渡してくれたよ」
「うん…。ダイ君、あたし」
 何か言うと嗚咽がもれそうで、レオナは歯を食いしばった。
「これ、きっとレオナに届けるからね」
「うん」
 そう答えるのがやっとだった。
「おれのこと、待っててくれる?」
「待ってる、に、決まってるじゃない」
 昔のように強気で言いたいのに、声がふるえた。
「は、早く帰ってきて。あたしを待たすなんて、最低よ」
 こんな蚊の鳴くような声で言うことじゃない。
「あのさ、おれ、レオナといるとね、世界を好きでいられるんだ」
 それは自分のほうだ、とレオナは思う。ダイがいるからこそ、地上のすべては美しく、愛しい。ダイを失ってそのことを思い知った。
「あたしもよ」
 がまんできずに涙があふれだした。顔が見えない会話でよかったと、心の底でそう思った。
「こっちでまだちょっとやることがあるんだ。でもそれが終わったらレオナに会いに行くよ」
「ダイ君のことだから、大事なことなのね」
 手の甲で目をぬぐい、レオナはささやいた。
「応援してるからね」
 あはっと笑い声が聞こえた。
「レオナが応援してくれるなら、おれ、なんでもできるよ」
 そうやって大魔王を倒してしまったのだ、この子は。ふふ、と笑いが出た。
「あの~」
 はっとして振り向くと、アバンが来ていた。
「申し訳ない。ゲートキーパーとの交渉が始まります。ダイ君に参加してほしいので、『王女の愛』を」
「あっ、すいません、先生!」
 魔界と地上の二か所から、ダイとレオナは同じセリフを言うはめになった。

滅びかけている魔界から住民を避難させてほしい、その願いを一度ゲートキーパーは退けますが、ポップの助けを借りて、なんとか避難の約束を取り付けます。ただし条件があり、それにはダイが竜の騎士として竜騎衆を従え、真魔剛竜剣を装備することでした。
ここまでは最初からあるていど決まっていたんですが、問題はここから。本編最終決戦に登場した真魔剛竜剣は以下の通り。(原作最終巻からほとんどそのまま写しました。)

 その女性は、光の中に立っていた。
 うら若い綺麗なひとで、大きな目でこちらを見ていた。
 夢の中でその唇が自分のもうひとつの名を呼び、微笑みかけてくれたことをダイは思い出した。
「か…、母さんっ…!」
 大気は澄んで冷たかった。日没から深夜にかけて続いた大魔王との決闘の結果、天魔の塔の玉座の間は、瓦礫を乗せ、鬼眼王を乗せ、ダイを乗せ、成層圏へ向かって静かに浮上を続けていた。
 眼下、丸く見える地平線の中央に純白の煌めきが現れた。曙の光はオリハルコンの刀身に反射して鮮やかに輝いていた。
「真魔……剛竜剣…!!」
 竜の頭部をかたどった握りの先にやや湾曲した片刃厚手の刀身が続いている。曙光は刃だけではなく、剣全体を美しい光沢でつつんでいた。
「そうだ。竜の騎士の正統たる武器!!」
 天空の戦場に幻が現れた。目の前の床に突き刺さった真魔剛竜剣のもともとの持ち主、竜の騎士バランだった。
「今こそおまえがこの剣を手にする時が来たのだ!!」
 幻のバランは無残に焼けただれた最期の姿ではなく、在りし日の姿、堂々たる騎士のいでたちだった。
 見下ろす大地のふちはいよいよ明るくなっていく。曙光を眺め、振り返って剣を見た。
――太陽の光…だったのか。なぜか…一瞬母さんに見えた……
 バランは目を閉じ、思い出を語った。
「…お前の母は…ソアラは…太陽のような女性だった。誰をも暖かく包みこむ力があった。ダイ…今こそおまえも太陽になるのだ!仲間たちを、地上を輝き照らす太陽に…!!」
 真魔剛竜剣が地上から飛来してバランが語り終えるまで、わずか一瞬だった。ダイはつぶやいた。
「太陽に……!!!」
 その意味するところは、はっきりとわかった。母のまなざし、父の導き、竜魔人の力、自分の覚悟、すべてそろって初めて発動する、ということが。
 地響きがした。雄叫びを上げて鬼眼王がばく進してきた。
「来たぞ、ダイ!!!剣を取れっ!!」
 ダイは身構えた。
「チャンスは一刀!!!いかに真魔剛竜剣とはいえ、今のおまえの全力とバーンの肉体との激突には何度も耐えられまい!!」
 鬼眼王の巨体が迫る。額に宿ったバーン本人の表情まで視認できる距離だった。
 不思議なほどダイの心は静かだった。さきほどまでの、鬼眼王の爪に脇腹をえぐられ、打ちのめされていた時の焦りや絶望から、遠いところにいた。
 一度だけのチャンス、どこを攻撃するべきか。ダイの視線がさまよい、ついに一点に到達した。
 鬼眼王のコア、腹部中央の巨大な眼。
「この一撃におまえのすべて…!私の魂をもこめて奴の鬼眼を叩き斬れッ!!!」
 ターゲットの選択が一致した。
「いいかッ、すべてを込めるのだぞ!!!」
 ダイはうなずいた。
「行けッ!!!ダイ!!!!」
 その号令を合図に床を蹴り、ダイは走り出した。鬼眼王をほとんど無視して、まっしぐらに真魔剛竜剣をめがけて。
――………さよなら…!…さよなら…みんな…!!…この一撃でおれは太陽になる……!太陽になってみんなを天空から照らすよ…!!!
 頭では冷静に戦略を構築しているのに、心には仲間たちの顔がひとりひとり浮かんでいる。
――さよなら…!みんなっ!!
 泣くな、感傷に溺れるな。今は、戦いの時。
 走りながら腕を伸ばした。真魔剛竜剣の柄、竜の長い首に指をかけ、斜めに引き抜いた。床面がえぐれて鋭い音を立てた。
 武器を手にしたダイは鬼眼王とすれ違い、背後へ駆け抜けて間合いを大きく取った。
 あとはトドメを刺すだけと思っていたバーンは、激しく振り向いた。鬼眼が見開かれ、三本爪の腕にチカラがこもった。
 ダイが飛んだ。鬼眼王も飛び出した。静寂の宇宙に風が巻き起こった。激しい風鳴りを伴って両者は激突した。
――勝利のふた文字のために……!!
――この一撃にすべてを込めて……!!
 無音の咆哮が重なった。鬼眼王の手刀と真魔剛竜剣の刃が真っ向からぶつかった。砕け散ったのは、鬼眼王の腕のほうだった。
 一瞬、鬼眼王がひるんだ。ダイは腕を粉砕した勢いで腹部の鬼眼へ迫った。
 その体は千年の英知を蓄えた老魔王のそれではなく、すでに一個の魔獣だった。攻撃された獣は本能的に反撃した。
 鬼眼は突然、激しく発光した。同時に熱線がダイを襲った。ダイが歯を食いしばった。刀身の柄に近いところに亀裂が走った。暴炎と激痛に耐えてダイはさらに刃を振り上げた。狙うは、間近にある鬼眼。
 バコンと音を立てて鬼眼の上にシャッターが下りた。鬼眼王のコアを厳重に守る堅い殻だった。
 ダイは減速できなかった。真魔剛竜剣は突進の勢いもそのままに、外殻にたたきつけられた。
 竜魔人ダイの力は、すべてを貫く矛。
 鬼眼王のコアシャッターは、すべてを防ぐ盾。
 その二つに挟まれた瞬間、真魔剛竜剣はすでに入っていた亀裂の部分から音を立てて砕け散った。

↑に登場のバランの話。
「ダイの大冒険」は1989年に連載開始だそうです。ということはちょうど平成の始まりだったわけですが、とんぼはなぜかバランに関して“昭和のお父さん”という印象があります。
おそらく設定でバランが主人公にとって「偉大な父」、「立ちはだかる存在」であり、これもストーリー上しかたがないのですが、「息子を強権で従わせようとする父」だからなのでしょう。バランが後にダイに味方して、ダイを守って命を落とすのも、昭和のお父さん像に重なるところがあります。「親よな、バラン……」。

それともうひとつ、ドラゴンファングがなんか片眼鏡に見えるのです。口ひげもあいまって、昭和の頑固おやじというより大正浪漫な紳士のほうかも。三つ揃えのスーツに片眼鏡、鬼滅の無残さまのような中折帽にステッキとかお似合いかもしれないと思います。でもって上着脱ぐと(アームバンドとサスペンダー装備のダンディ)超の付くムキムキ。4のライアンとか5のパパスとかと同じ、とても好きな系統のキャラです。

話がそれました。問題は、新しい真魔剛竜剣をどうやって手に入れるか? もともと真魔剛竜剣は折れても蘇るという特性がありました。一度バラン対ダイの戦いで折れたことがありますし、それでもちゃんと蘇りました。ただ、本編終了時点では粉々になってる感じです。やっぱり綺麗に元のままの剣としてよみがえる、というのは無理っぽいので考えないことにしました。

真魔剛竜剣もダイの剣もオリハルコン製だということは本編で確認しました。大魔王戦の時点で地上にはもうオリハルコンの原石は残ってないらしいです。けれど、魔界ならまだ可能性あり。そうじゃないと、新しい真魔剛竜剣のためにダイの剣をつぶさなくてはならないのです。いくら二次創作でもそれはやっちゃいけない気がするので、どこかに原石が見つかることにします。結果としてダイはオリハルコン製の剣二振りを所有することになります。はっ、二刀流ありですかっ!?

捏造魔界編とは関係ないのですがダイ大つながりで。先月「ダイの大冒険Infinity Strash」を始めました。アクションゲーム苦手なとんぼはなかなかクリアできず、今もムダに特技レベルだけ上がってます。クロコダイン戦のときにポップの言う「おまえはこんなのを何発も食らって戦ってたんだな」が、我がこととして実感できました。漫画とかアニメだと数コマの戦いですが、それがここまで大変だとは思ってなかったです。あまりにも進まないので、ドラクエタクトのほうへ逃避したくらい。で、その時の感想をXに投稿してたので、こちらに再録します。

IS(「ダイの大冒険Infinity Strash」)が四章半ばでにっちもさっちもいかなくなったので、DQタクト行って遊んでました。夏にグランバニア一家を、このあいだアバンの使徒のみなさんをスカウトできたので、あっちこっちの冒険で活躍してもらっています。バギ系が弱点という敵が多いステージで、5主(「伝説の魔物使い」)と竜の騎士ダイ(空裂斬持ち)が同じチームで出陣したり。バギが弱点だとデインにも弱いことが多いので、デイン技持ちの5王子(「レックス」)も入ってたり。ついつい、頭の中で台詞付けたりして楽しんでます。ダイ君が5主に懐いてくれるといいなと思うのです。ドラゴラムによる竜化が可能で、二児の父というお父さん属性ですから。5主、レックス、5王女(「タバサ」)に、バランとダイというチームを作ったときは、ドラゴン保護者会という単語が脳内に沸いて、戦闘そっちのけでした。

タクトの場合、戦闘はステージごとにオートにするかどうかを決められます。敵の弱点がドルマとメラで、こちらのチームには魔剣士ピサロと魔槍のヒュンケルがいました。オートにしていたため、二人ともMPをがんがん使って敵を殲滅していったのですが、最後にやっかいな敵が残った時、両者MP0。こうなったら接近して殴る!という状況になった時、後ろの方からメラが飛んできました。お年のせいで、後衛でゆっくりしていたバーンさまでした。このひとのメラは、ただのメラなんですがご存じの通りの威力で、一発で敵が棺桶入りになりました。
「……」
「……」
茫然としている気に入りの軍団長(ヒュンケル)と後輩の魔王(ピサロ)をよそに、「若い者は気が短いのう」とかつぶやいて去っていくお姿がまぶしかった……。
↑全部妄想です。

追記:竜の騎士関係で、ちょっと思いついたこと。バラン氏によると、子供のころの竜の騎士は人間の子供とあまり変わりがないけれど、成長して竜の力に目覚めると急速に変化するらしいです。バラン自身がこのルートをたどったと仮定します。さて真魔剛竜剣はどうやってバランに合流したのか。紋章と同じく聖母竜が預かって新たな命として生まれた子に渡したのか。あるいは、先代竜の騎士が聖母竜に迎え入れられたときは放置され、新しい竜の騎士が成長すると自力で新たな主のもとへ飛来するものなのか。とんぼとしては後者の説が好きです。ダイ大本編ラスト、鬼眼王との決闘のときに真魔剛竜剣がダイの元へ飛んできたのは、ダイが竜の騎士としての使命に目覚めたから、と考えることもできるかなと思います。

ほかにもひとつ、竜の騎士の特性に数えられるものがあるかも。いわば、「人たらし」。
「誰とでも仲良くなってしまう」魂の力を持つダイにその傾向は顕著ですが、ラーハルトの言動を見るとバランも部下たちの人望を得ていたと思われます。
親子だし、似てる~、と言ってしまえばそれだけなのですが、もし代々の竜の騎士たちが同じ特性を持っているとしたらどうでしょうか。
竜の騎士たちは、自分のために命がけで戦ってくれる仲間ないし部下を必ず持つとしたら。
魔族の魔力、竜族のチカラにもまして、ひとの心は最も強力なパワーなのかもしれないと思いました。

夭折の天才(11/6)

グランナード、こいつやっぱりフレイザード系だった。外道を隠しもしない性格とか、これで負けたらバカだぜ!と言いながら負けるとことか。

獄炎感想ですが、レイラさんのぶちのめしすごかったです。ダイ大本編のあれこれのパーツをちりばめた楽しさもさることながら、今回の戦法に目を見張りました。敵の“薄皮”を削って核を探し出すなんて本編でさえ誰もやってなかった!彼女がハンマースピアを振りぬく最後の攻撃の迫力、スピード感、動かないはずの白黒印刷のコマが躍動していました。美しく獰猛な獣の、これが最後の戦いなんでしょうか。惜しい気もします。

訂正:コミックスの9巻で確認したところ、このときの武器はハンマースピアではなかったようです。願望込みで見間違えてしまったようで、失礼いたしました。ご指摘くださった方、どうもありがとうございました。(2024年1月7日とんぼ)

今回のラスト、ついに勇者対バルトスですよ。待ってました。獄炎のバルトスはイケメンならぬ「イケ骨」なんだそうです。とんぼはダイ大本編のやさしげなバルトスも、イケ骨バルトスも両方好きです。バルトスは魔王ハドラーが禁呪法でつくったモンスターということになっていますが、あえて考えてみたい。獄炎バルトスの頭蓋骨に肉付けしたら、ハドラーに似てる、ってことはないかしらん。同じ禁呪法メイドモンスターのヒムの容貌が、特にプロモーション後、ハドラーの面影があるのでちょっとそんなことを考えてみました。とんぼの相棒は「当時のハドラーの性格がバルトスのそれと相反しているので、バルトスは素材になった骨(の生前の人柄)に似ているのでは」と申しておりますが、どちらでしょう。今回の敵、グランナードがバルトスを兄貴呼ばわりしてました。彼ら禁呪法メイドモンスターたちを、バルトスを長兄とする兄弟と考えると、バルトスの養子であるヒュンケルにとって、フレイザードや親衛騎団は叔父・叔母にあたるのでは。その伝でいくとハドラーは祖父ということになりますね。上官で祖父。仏に逢うては仏を殺し、祖父に逢うてはグランドクルス。あら、なかなか語呂がいいです。

捏造魔界編は最後の仕掛けをどうしようかと考えています。箱舟に魔界の住民を乗せて魔界からの大脱出を試みる、というのが最後の山場になる予定です。今の問題は、どうやって船を空中へ飛ばすか。ダイ大ワールドには自ら宙に舞う「トベルーラ」はありますが、モノを持ち上げる呪文はたぶんなかったと思います。ただ、師匠曰くルーラもトベルーラも魔法力を直接噴出する、という原理だそうなので、それをなんとか捏造して箱舟を飛ばすつもりです。

憧れのダイ大本編、特に最終決戦の緊張感がとても好きです。が、捏造魔界編ではラスボス戦は書かない、というか、書けないです。理由は、大魔王バーンより強くてカッコいいボスキャラを思いつけなかったので。要するにとんぼの実力じゃ無理。ではどうやって全編の緊張を保つか?そのために考えたのが、「呪的逃走」でした。「呪的逃走」は昔話のモチーフで、代表的なのが、山の中で山姥に食われそうになっている小僧が和尚さんに授けられた三枚のお札を使って山姥を妨害しながら寺まで必死で逃げるという民話「三枚のお札」です。だから勝利条件は討伐ではなくて、魔界の住民を引き連れての大脱走です。山姥にあたるのが魔界の第三のボス。小僧がダイたち一行。お札は、マトリフ師匠が造ってポップが仕上げをする予定。この辺の細かいところは今いろいろと考え中です。

で、捏造魔界編ではおそまきながら作戦進行中です。このアウトラインもそろそろ終盤にかかってますので、それにふさわしいキャラを投下していきたいと思います。まず、マトリフ師匠、ラストにアバン先生。(老師はどこかにひょいっと出てほしいので今は除外。)実は大魔導士マトリフは、大好きなキャラです。何が好きってセリフ回しがいい。ダイ大の令和アニメで声優さんがすばらしい演技をみせてくれました。古典的な江戸っ子の口調、我が道を行く天才の粋がうかがえました。
「いやな世の中だなぁ」と慨嘆したあと、口調が切り替わってぐっと凄みを増すあたり、うっとりします。獄炎の魔王登場の(比較的)若いマトリフさんもかっこいいのですが、やっぱり師匠は貫禄と偏屈としたたかさで裏打ちして、皮肉な笑みを浮かべていただきたい。さて、師匠はたしか自称百歳くらいだと思うのですが、実は百歳というのは、魔族にとって思春期に入るか入らないかの年齢ではないでしょうか。というわけで、↓は魔界のマトリフ。助っ人として魔界入りしています。視点はダイたちに味方する側の魔族の若者です。

 魔族の若者イジフは、隠れ家の島の周辺にある隠れ浜まで出てきた。隠れ浜とは島の縁にある砂浜なのだが、上からトンネル状に岩がかぶさって外からあまり見えないようになっている場所だった。
――やっぱり、マトリフさんか。
 先ほど、突然巨大な魔力で島全体が鳴動した。おおかた竜の騎士の仲間の仕業だろうと魔族たちは考えたが、船長に言われてイジフはようすを見に浜までやってきた。
 隠れ家の立ち上げから、十日近くが経過している。人間の魔導士マトリフは簡単なロッキングチェアを浜において、今日も寝そべっていた。本人は、“これでお日様が差してきれいなお姉ちゃんたちがいれば文句なしなんだがな”とうそぶいていた。
 ただの日光浴気分、というだけではないのだろうとイジフは思っている。肉体の劣化が進んでいるため、魔界の環境は耐えられるぎりぎりなのだ。人間は魔族に比べて脆弱で寿命も短い。魔族にも珍しいほどの魔法力と知識、魔法技術も、あっというまに失われる。たった百歳でこれほど老化する生き物は不憫だと魔族たちは感じている。「夭折の天才」というものだろうとイジフは思っていた。
 ふと、ロッキングチェアのそばに誰かいるのに気付いた。
「冗談じゃねえよ!」
 竜の騎士の仲間、ポップという若者だった。
「いくらなんでも犠牲が大きすぎる!」
 低い声でマトリフが応じた。
「ほかに船を飛ばす手立てがあんのか」
 うなったままポップはしばらく答えなかった。
「……でも、そんなことしたら、師匠の命が危なくなるじゃねえかっ。おれはそんなの」
 マトリフはロッキングチェアの上に座り直した。かたわらから煙管を取り上げ、一服吸って煙を吐き出した。
「おめえもまだ甘ちゃんだな。年寄りの命ひとつでことが成るなら、割り切って使い捨てろ」
「師匠!」
「あのな、オレは惚れた女をあの世に待たせてんだよ。あんまり遅くなっちゃあ可哀そうじゃねえか」
 バカなことを、とポップがわめきかけた。しっと言ってマトリフはイジフのいるほうを指した。
 イジフは振り向いた。竜の騎士ダイが隠れ浜までやってきたのだった。
「どうしたの?」
「あ、いえ」
 さきほどの不穏な会話は、ダイに聞かせてはいけないような気がした。

という流れから、このへんの進行状況説明。

「おまえら、計画はどうなった?まず、箱舟は?」
「箱舟建造班は順調だぜ」
とポップが言った。
「ベンガーナから、半完成状態で部材が届いてる」
 へっとマトリフは笑った。
「魔族の船大工の衆は、いやがりゃしなかったか?」
 くすくすとダイが笑った。
「最初は馬鹿にしてたよ。しょせんニンゲンの作るもの、って言って。でも魔法の筒からパーツがごろごろ出てきたら、目つきが変わっちゃった」
「親方なんぞ興奮して、これなら予定より早く造れそうだとさ」
 お、とマトリフが言った。
「そういやあ、箱舟はいくつか造るそうだな。この隠れ家は手狭じゃねえのか?」
 ダイがうなずいた。
「四隻造るんだって。たしかに、地底湖のドックだけじゃ狭いかもね」

続けて

「住民招集班はどうだ」
「チウが来たよ」
とダイが嬉しそうに言った。
「遊撃隊のみんなもいっしょに。魔界出身の隊員もいるから、その案内で魔界中避難民を探すんだって」
 ほう、とマトリフはつぶやいた。
「大丈夫か?だいぶ、物騒だぞ」
 ポップが肩をすくめた。
「そりゃまあ、魔界だし。でも獣王遊撃隊はみんなモンスターだから、黒い海の影響は受けにくいってよ。それにチウには用心棒にヒムがついてる。あとはグリズリーにバピラスか」
「まあ、餅は餅屋の例えもあるな。てことは、ダイ、あとはおめえの剣か」
「それなら大丈夫。ノヴァがすごくがんばってくれてる。それより、今は竜騎衆をどうするか悩んでるんだ」
「ラーハルトってやつがいるんだろ?」
 うん、とダイはうなずいた。
「陸戦騎はラーハルトに頼むことにした。ラーハルトが父さんのもう一人の息子なら、おれの兄さんみたいなものだからね。ラーハルトの話では、陸戦騎は陸棲ドラゴンを乗りこなす実力がないといけないんだって。海戦騎は海の、空戦騎はそれぞれ海空の竜たちのドラゴンライダーだって」

今回のサンプルは、その陸戦騎の話。
視点はヒム、説明役はチウ。

「見たまえ。先頭の一頭、あれが群れのリーダーだ」
 チウの指した先頭のドラゴンは体高、体長ともに大きく、前足のかぎ爪をむき出し、頭を地面に下げて警戒態勢を取っていた。濃い緑の鱗が全身を覆っている。長年群れを率いてきた成獣の雄と思われた。鼻孔からうっすらと白煙が噴き出しているのが見えた。体内にある炉で炎が生成されている証拠だった。
「このシマのアタマが、よそもんを見て出張ってきたってわけか」
「それがリーダーの役目なのだよ。そして、あのリーダーがラーハルト君を認めればこの群れ全体、いや陸棲ドラゴンのすべてが彼に従うはずだ」
「ラーハルト“君”ねえ。ま、お手並み拝見といくか」
 あいかわらずスカシた野郎だ、とヒムは思う。今もラーハルトは、ドラゴンから視線を外さないまま、かるく肩を回していた。
「装備なしで大丈夫?」
とダイが尋ねた。
 ラーハルトの強さは、速さと正確さにある、とヒムは考えている。ヒュンケルの強さ、破壊力と守備力の、ある意味対極にある。
 しかし、相手はドラゴンだった。速さだけでなんとかなるものだろうか?
「あのドラゴンを殺す気はありませんので」
とラーハルトは答えた。
「どうかお心安らかに。ドラゴン・ライディングを開始します」
 笑みさえ浮かべてラーハルトは宣言した。
 ドラゴン・ライディング、すなわち野生の竜を乗りこなす。竜騎衆とは、陸海空それぞれにおいて最も優れたドラゴンライダーだった。陸戦騎として名乗りを上げたラーハルトは、一度も鞍を置いたことのない野生の竜を乗騎として乗りこなさなくてはならない。
 地上の野生馬でも同じように初めて人間を乗せるときはひどく暴れるが、騎手は八秒の間振り落とされなければ成功とされる。
 そこまではヒムも、事前の知識として知っていた。
 トッと軽い音をたててラーハルトがその場で跳ねるような運動を開始した。おそらくバランの前でもラーハルトは一度ドラゴン・ライディングに成功しているはず。しかしそれは地上のドラゴンだった。この魔界のドラゴンたちを相手に、ラーハルトの技がどこまで通用するのか?
「無理は、しないで」
 ダイは声をかけたが、ラーハルトはかすかな笑みで応えた。
 ラーハルトが地を蹴って飛び出した。
 とたんにリーダー格のドラゴンは後ろ足で立ち上がり、大きくのけぞり、巨大な口を開いた。胸、喉、顎が真っ赤に染まる。頭部をふりおろすと、一直線に突進するラーハルトに紅蓮の炎が襲い掛かった。
 ラーハルトが消えた。ギャラリーからどよめきが起こった。
――あんなとこに。
 動きを目で追えるのは自分くらいだろうとヒムは思う。それでもラーハルトが真横へ跳んで退避したのが見えただけだった。
 ドラゴンは前足を地につけ、長い首をぐるりと巡らせてラーハルトを探した。ドラゴンの死角、前足のすぐ後ろにラーハルトが姿を現した。一瞬で緑の鱗の巨体へ飛びついた。
 怒りのあまりドラゴンが咆哮をあげた。そのままラーハルトを振り落とそうと暴れ始めた。
「がんばれっ」
 チウ以下、仲間たちがかたずをのんだ。
 ラーハルトは、笑っていた。鎧なしの身軽な姿は、守備力を捨てて素早さをあげるためのもの。振り落とされないようにドラゴンの背の剣板をつかみながら、手際よく長い首まで進んでいく。
 ドラゴンは後足で立ち上がり、上体をのけぞらせるような動作を繰り返した。この巨体で、と思うほど敏捷にジャンプし、旋回し、ランダムに首と太い尾を付け根から激しく振る。
 だがラーハルトは、ドラゴンのリズムを身体で理解しているようだった。自分の体を左右へゆすり、すべての衝撃をやりすごしている。
「おお、たいしたもんだ!」
とチウが歓声をあげた。
 竜を乗りこなすには竜の習性や動きをここまでのみこんでおく必要がある、いや、それができる者をドラゴンライダーと呼ぶのだろうとヒムは思った。
 ドラゴンの群れから、まだ若い竜が数頭でてきた。リーダーのために、首につかまっているラーハルトに炎を浴びせようとしているようだった。
 ラーハルトが眉をしかめた。炎の息を避けながらバランスを保つのは難しそうだった。
「ガウ!」
とリーダードラゴンが一声吠えた。若いドラゴンたちはあわててあとずさった。
「なんだあれ、『すっこんでろ!』ってか」
 遠目だが、ラーハルトの口元がゆるむのが見えた。
 リーダードラゴンはいきなり地に転がった。ラーハルトをつぶそうとしているようだった。ラーハルトは寸前で自分から飛び離れた。
 ヒムは目を見張った。リーダードラゴンが身をたて直したとき、ラーハルトが元の位置まで飛び上がったように見えた。すぐに、ドラゴンの首に巻き付けたロープをたぐって位置を戻したのだとわかった。
 最初見た時に体に巻いていたロープに違いなかった。
「いいぞ!」
 リーダードラゴンはまだ暴れ続けていた。8秒どころか、かなり時間がたっている。このドラゴンも本物のバケモノだ、とヒムは思った。
 ラーハルトは長い首をさらに上の方へ進んでいった。ついにその手で頭部の角の片方をつかんだ。
 いらだったリーダードラゴンが吠えた。そのまま頭を下げ、崖に向かってまっすぐ走り出した。絶壁の巨岩に頭突きする勢いだった。そのままいけばラーハルトは竜の頭と岩に挟まれることになる。ラーハルトはつぶれるだろうが、竜も無事では済まない。
「あいつ、何やってんだ」
 ラーハルトは逃げようとしなかった。角を抱え込み、ドラゴンの頭部にしがみついている。
「笑ってやがる」
 これはチキンレースだ、とヒムは気づいた。ドラゴンとドラゴンライダー、びびるのはどっちだ……?
 テントからダイとヒュンケルが飛び出したのが見えた。
 この瞬間だけは魔界の滅亡も箱舟計画も脳裏の外だった。
 チウと遊撃隊員たちがさまざまな言語でわめきたてた。
 そして、すべてが止まった。
 ドラゴンの巨体は激突寸前で停止していた。四肢を地にふん張り、長い首を下げ、荒い呼吸で肩を上下させていた。
 ラーハルトは、上からロープを差し出した。ドラゴンは口を開いて受け入れた。ロープを竜の後頭部へ回し簡単な手綱にして、悠々とラーハルトはドラゴンをこちらへ向かって歩かせた。その後ろから群れがついてきた。
 すとん、とラーハルトはダイの前に降り立った。
「ダイさま、いかがですか」
「すごいや」
 ダイは子供のころと同じ、素直な賛美の表情だった。
「おれの陸戦騎として認める。これからも頼むね」
 すかした笑みを浮かべてラーハルトが答えた。
「御心のままに」
 ダイはリーダードラゴンを見上げた。
「君もね」
 ドラゴンは頭部を下げ、顔をダイに近づけた。ダイは片手でその鼻先をやさしくたたいてやった。
 ダイ、とヒュンケルが呼びかけ、何か差し出した。液体の入ったグラスのようだった。
 ダイは襟元をさぐり、ドラゴンファングを引き出した。次の瞬間、思い切りよく手のひらをかき切った。
 手をグラスにかざすと、傷口からにじみ出た血がしたたり落ち、液体に交じった。
「ただの水だけど、これを」
 ラーハルトはそのグラスを受け取り、何のためらいもなく飲み干した。
「昔聞いたことあるんだけど、おれの血は父さんほど濃くないから、たぶんたいした効果はないと思う」
 ダイの血を呑んだラーハルトはグラスを返した。
「いえ、新たに竜騎衆と認められた者が竜の騎士の血を与えられるのは、決められた儀式の一部ですから」

↑この竜の騎士の血を与える~という設定、あたりまえですが捏造です。今月の日記はいつにもましてとりとめのない感じになりました。先月言っていた捏造魔界編の準備ページですが、現在制作中です。小説一覧からリンクはありますが、だいぶ変わると思います。同じくSS「起きろポップ」のほうは、小品集というページを造りました。一作だけではなんですので、だいぶ前に書いたダイ大二次「呪文返し」も同じページに置いています。アバンパーティの時代のマトリフの話ですが、だいぶ反省点の多い作品なので、そのうち撤去するか書き直すかする予定です。

決闘・地獄門(12/23)

「勇者アバンと獄炎の魔王」第37話「決闘・地獄門」描写の練習としてテキストに書き起こしています。以下は幼いヒュンケルの登場シーン。全文はダイの大冒険二次小品集にあります。

木箱の間の冷たい石の床に座り込み、石の壁に背をつけて、幼いヒュンケルは耳をふさいでいた。その部屋は地底魔城の倉庫として使われているもので、ヒュンケルはバルトスの手でそこに隠されていた。
 木箱の陰に何か落ちている。木でつくった練習用の剣のようだった。ヒュンケルはつぶやいた。
「これ、父さんが」
 物心ついたころにはヒュンケルは地底魔城にいた。どうしてそこで育ったのかなど、ヒュンケルは考えたこともなかった。自分がニンゲンだという意識も希薄だった。幼児だったヒュンケルにとって、地底魔城は宇宙の全てだった。
「父さん…父さーん!」
背の高いバルトスに追い付くには、幼いヒュンケルは走らなくてはならなかった。うまくマントのすそをつかんで引っ張ると、バルトスは気づいて足を止めてくれた。
「おれも父さんみたいに強くなりたいんだ。剣術を教えてよ!」
自分をニンゲンだと思っていなかったから、モンスターばかりの環境に疑問を持ったこともない。異質そのものの自分を、地底魔城のモンスターたちは受け入れてくれていた。剣を学びたい、と思ったのは、別にモンスターたちを従えたかったのではなく、純粋に父と同じことがしたいというのが理由だった。
 バルトスは口角をあげ、優しいまなざしをヒュンケルに向けた。
「ふふふ、まだおまえには早いのではないか?」
頭から拒否されなかったことで、ヒュンケルは勢いづいた。ヒュンケルは両手を握って力説した。
「小さいうちから覚えた方が強くなるでしょ」
ついにバルトスは笑い出した。
「それも道理。ならばまずは腕一本で相手をしよう」
 本当のことを言うと、もうちょっと小さかったころヒュンケルは、自分も大人になったら腕があと二本くらいは生えてくるんじゃないかと思っていた。どうやら違うらしい、とわかっても、剣士になることはあきらめなかった。だって、父さんは強くてカッコイイし。
「よーよー、がんばれっ」
 場所は地底魔城の闘技場だった。バルトスはその場をときどき、部下の訓練に使っていた。魔王軍最強の剣士としてバルトスの名はとどろいている。そのバルトスが、酔狂にも育てている子供の、剣の相手をしているとあって、そのへんの物見高いモンスターたちも集まってきていた。
小さなヒュンケルは、練習用の木剣をかまえた。
「おーい、ボウズ、がんばれよぉ」
「案外、さまになってんじゃねえか!」
 大好きな父が闘技場で模擬試合を行っているとき、ヒュンケルは観客席の陰からずっと見ていた。こっそり剣の構えをマネして、やってみたこともあった。
 身長に合わせた短めの剣を正面上段に高くかまえ、バルトスめがけてヒュンケルは打ちかかった。
 バルトスは六手のうち五手を組み、手一本で木剣ひとふりを握り、ヒュンケルの打ち込みを難なくさばいている。
「なかなか鋭い打ち込みだ」
褒められて、ヒュンケルはうれしかった。
「よーしっ、行くぞ!」
「いいぞ、その意気だ」
バッと飛び上がって剣をうちおろした。
 バルトスの反応は早かった。一手を前に長く伸ばして手のひらを広げ、反対側の一手を刺突の型にかまえ、襲ってくる木剣を、その刀身だけをピンポイントで狙った。
 もしバルトスが成長したヒュンケルの姿を見たら、自分の突きの型がブラッディースクライドとして養子の中に生きていることに目を細めたかもしれなかった。
 バキャッと音を立ててヒュンケルの木剣が砕けて折れた。その勢いで小さな体は仰向けに地面に倒れ込んだ。ギャラリーから悲鳴があがった。
「しまったっ!」
あわててバルトスが走り寄った。見物のモンスターたちもとんできた。
 地面に転がったヒュンケルは、目を丸くしていた。何が起こったかわからないという、驚きの表情だった。その目がぎゅっと閉じて、すぐにあけっぴろげな笑顔になった。
「おれの父さんは、やっぱり強いや!」
 安堵の声がいくつもあがった。バルトスは身をかがめ、片手で息子の手を引いて起こしてやった。
「よい度胸だぞ。剣士はそうでなくてはな」
ヒュンケルは嬉しそうな顔になった。
「もっかい!父さん、もう一回やってよ!」
「残念だが、木剣を壊してしまった」
あ……とつぶやいて、ヒュンケルは立ちすくんだ。
 よしよし、とバルトスは息子の髪を撫でてやった。
「もうひと振り造ってやろう。そうしたらまた、練習だ」
うん!とヒュンケルは力いっぱいうなずいた。
 バルトスの言葉に嘘はなかった。地底魔城の石床に座り込み、前の木剣と同じくらいの長さの木片を選んで、小刀で剣の形に削りだした。
 早くできるといいな、また父さんと試合をするんだ。そう思いながらヒュンケルはわくわくと父の手元を見守っていた………。
 こんなふうになるなんて、あの時は思ってもみなかった。地底魔城の壁は冷え冷えとして、モンスターたちのざわめきも、もう聞こえなかった。ヒュンケルは組んだ両腕の中に自分の頭を深く埋めた。
「父さん!勝って!死なないで!」
小さなヒュンケルの宇宙は、今まさに滅びようとしていた。

21日に獄炎の最新話見て、それから今日までずっと書いてました。もう感想とかじゃ、自分の中で間に合わなくて。アバン対バルトス、ずっと楽しみにしてたんです。なんか、すごく、満足です。バルトスさん、この上なくカッコよかった。
 獄炎登場シーンはだいたい六刀を背中に背負っていたので、実際に戦闘モードになったらどうなるかな、と思ってたら、期待以上でした。描く方はたいへんだと思いますが。単純に六振りの剣が襲ってくるだけでも怖いのに、達人六人分というプレミアムがつきました。
 ここからもう、両者が工夫を凝らしあって戦うという、いかにもダイ大な展開でとんぼは満喫いたしました。これが、見たかったんです
相対的に勇者アバンも一段と男振りが上がってました。勇者としての名乗りから、猛攻、真っ向勝負からの、にかっ。しみじみ自分、アバン先生好きだ。
 唐突ですが、ダイ大の旧アニメOPを思い出します。倒れた敵に手を差し伸べ~みたいなところ。ダイもそうですが、アバンとバルトスのこのシーン、ぴたりだなと思いました。

さて、捏造魔界編のほうですが、↑のおかげで今月しようと思った報告をとりさげ、ヒュンケルのほうへ回してます。
↓は魔界のヒュンケル。ダイ捜索隊として魔界にいますが、霧でパーティと分断され、死人沼にいたときに正体不明の敵に襲われます。

 ふいに耳の中に師の声がよみがえった。
――ヒュンケル、あなたは再び武器を取ることをためらっているのではないですか?
 先生はお見通しだったな、とヒュンケルは思った。自分が生きていることが正しいかどうか、ずっと疑問だった。自分がこの先も剣をふるっていいのかどうか、わからなかった。今でも答えは出ていない。
頭の上から刃が落ちてきた。
「ここで終わってたまるかっ!」
ヒュンケルは、敵の刃の下から飛び出して体当たりをかました。
 他のモンスターに比べてアンデッドの身体はもろい。そしてこの敵は、必ず同じ方向から最大六回の攻撃を放つ。
霧の中だが、相手の輪郭がわかり、黄色の点が所在を教えてくれる。四、五、六と攻撃の回数を数えて身をかわし、ヒュンケルは間合いを取った。
「このヒュンケルの見切りをなめるなよ」
ぎりぎりまで追い込まれて、身をかわしつづけるのはこれが初めてではなかった。
 そんなことがなぜできるのか、あまり考えたことはなかった。アバンやミストバーンの指導を受けていたころから、できて当然だった。
――おれも父さんみたいに強くなりたいんだ。剣術を教えてよ!
始めて父にそうせがんだのは、六歳のころだった。だが、その前も小さかったヒュンケルは観客席の陰から父が闘技場で模擬試合を行っているところをずっと見ていた。こっそり剣の構えをマネして、やってみたこともあった。
 地底魔城で過ごした子供時代、アンデッドの剣士たちの修練をずっと眺めていたころに、見切りの目は養われていたのかもしれない、とヒュンケルは思った。
 地底魔城、アンデッド。ヒュンケルは自分の手を見下ろした。
――闘魔傀儡掌ならアンデッドの剣士を抑えられるか?
暗黒闘気の糸を放てば、と考えてヒュンケルは首を振った。自分の中の暗黒闘気は、おそらく全滅している。
――まだだ、オレにはまだ、何かできる。
 光の闘気で。
 網を作る。
 もうすぐ激しい連続攻撃が来る。このアンデッドの襲撃者は、今まで戦ってきた敵の中でもずば抜けた実力者だった。とてつもない技を持っている、というより、基本的な剣技の水準がすべて高いのだ。
 あせるな、と自戒して、ヒュンケルは目を閉じた。闘魔滅砕陣のイメージは、頭に刻み込まれていた。
 光の闘気を糸のように細く伸ばし、さらに編み上げる。
 雨上がりの蜘蛛の巣のような繊細な光の網を自分の周辺に広げる。
 そこに、敵を捕らえる!

死人沼は「魔界と冥界の重なるところ」として設定しました。襲撃者の正体は、バルトスさんです。しめは当然、これ。

 敵の刃が頭上に落ちる。その動きを、半秒だけ、遅く。
――今だ!
 立てた方の膝に重心を移し、同時に闘気を爆発的に高め、仕込み刀を鞘走らせた。
 目指すは、先ほどから見えていた黄点だった。
 カッと音がして、不思議に軽い、乾いた衝撃があった。
 沼の中に片足を踏み込み、一撃を放った刀を前方に保持したまま、ヒュンケルは背後の敵の気配を探った。
 乾ききった白骨が、ばらばらと砕けていくのがわかった。
 自分のあごから血の混じった汗がしたたり落ちた。
 ゆっくり体勢を戻し、ヒュンケルはようやく振り向いた。
 敗れた敵の剣士は、すでにひと塊の骨となっていた。見ている前でその骨は空気に溶けた。
 ふとヒュンケルは足元に黄色いものを見つけて、手に取った。指で触れるとそれは二つに分かれた。自分が切断したものに違いなかった。
 敵の胸のあたりに見えていた黄色いものは金属だろうと思っていた。だがそれは、軽かった。おそらく紙と思われた。しかもかなり古い、とヒュンケルは考え、次の瞬間、息を止めた。
 二つに分かれた紙片を手の上で寄せると、星の形になった。
――これはオレが昔、作って、父さんに……。
アンデッドの腕利きの剣士。二刀流ではなく、六刀流だったのだ。
「父さん、父さん!」
あたりを見回し、ヒュンケルは迷子の子供のように父を求めた。
――ヒュンケル。
声にならない声がヒュンケルを呼んだ。
――強くなったな。それでいい。
地獄門の守護者バルトスは、そうささやいた。
「待ってくれ、父さん!」
――思い出を、ありがとう。
それを最後に、父の声は途絶えた。

夢中で書いたらさすがに疲れたし、気が付いたらクリスマス目前というこのシチュです。今月するはずだった報告は来月へ回そうと思います。でも今、すっごく幸せで、今晩寝られるかしらん……。