衣装設定用原稿#1”狩衣”  第一話

 乳色の霧が立ち込めていた。
 朱色の太い柱と繊細な高欄が霧の中から浮き上がった。屋根は、鮮やかな青い瓦でふいてある。どこまで続くか知れない長い回廊だった。塵ひとつなく清められていた。目を下に転じると、春の趣を豊かに取り入れた庭が長くつらなっている。不思議なことに、梅、藤、桃、桜、つつじが同時に満開を迎えていた。
 やがて霧の薄れていく先に、豪華なつくりの寝殿があった。庭はその先で白砂の広い空間となっていた。鑓水がめぐらせてあるはずだったが、どこまでも広く、先にあるはずの池は霧に覆われていた。どこからか、滝の音がした。
 宴はすでに、寝殿で始まっていた。
 袿に赤い袴をつけた下位の女房たちが、ひっきりなしに瓶子をささげて客たちの間をまわっている。庭先では、白衣の仕丁たちが、せわしなく立ち働いていた。
 それは、かなり古めかしいが、都にはよく見られる風景だった。ただひとつ、この館の下人、下女は、常人ではなかった。一見、人間だが、頭部に犬耳を持ったものたちだった。
 客の一人、狩衣をつけた壮年の男が、そばに座った別の客に話し掛けた。
「これはこれは、中将殿」
「おや、溝が淵の殿様。あなたさまもおいでで」
溝が淵の殿、と呼ばれた男は、手にしたかわほりで口元をおおった。
「お館さまのお招きとあればな」
そう言って意味ありげに笑った。
 上座には、この館の主が座を占めていた。堂々とした長身の貴族で、くつろいだ直衣姿だった。白銀の色をした長い髪は後頭部でひとつにくくり、だが烏帽子の中には入れず、背中に流している。
 それこそが、この館に集う一族郎党を束ねる、強力な犬の妖怪、播磨の大将だった。
 妖怪の例にもれず、外見から年齢を推測するのは不可能だったが、見た目は雅やかな青年だった。屏風の前に片膝を立ててすわり、そばに侍る小姓に酒を注がせ、きげんよく口元に運んでいる。彼よりはるかに年上らしく見える一族の者たちが、かしこまって酒の相手をつとめていた。
 その日の宴は、一族の威勢を妖怪の他の種族に見せ付けるのがひとつ、また、一族の結束を固め、来るべき対決に備えるのもまたひとつの目的だった。
 そして、一族の主だった者は、さらに別の目的を大将が持っているのを知っていた。
「では、本当ですか。ご秘蔵にしておられた太郎君(たろうぎみ=長男)のご披露があると」
 一族の男子は、一定の年齢になり戦闘が可能だと見なされるようになると、童形をあらためて成人の姿となり、このような宴の場に参加して、顔と名前を一族の者たちに覚えてもらうことになっている。
 大将の長子は、宴に参加する資格はとっくに持っているのだが、なぜか今まで披露されていなかった。父なる人の寵愛があまりにはなはだしく、秘蔵子にしている、と言われている。そのため、いろいろな噂が先行していて、宴に集う客たちは、本物の太郎君を一目見るのを楽しみにしているようだった。
「それどころか。次郎君(じろうぎみ=次男)もあわせてご披露の由だ」
「いくらお館様でも、よもや次郎君を一族の前にお出しになることではありますまい。あの、半妖を!」
それはあからさまなあざけりの言葉だった。
「まったく、扱いの難しいことであるよ、あの次郎君は。本来なら生まれることすら許されぬ者。もし、生まれたとしても、人間の側に引き取らせてうち捨てるか、さもなければ一族に仕える立場をわきまえさせて養うのが、半妖の相場じゃ。それを」
「御愛子として御手元に置かれるとは。いくら己の血を分けたと言うても、お館さまのなされようは、わかりませぬ」
ためいきがもれた。
「お扱いは、太郎君と変わらぬとかうかがいましたが」
「おお。太郎君は、故北の方様のお住まい、秋の館の北の対においでだが、次郎君はやはり、なくなったお方様のおわした冬の館の西の対でお育ちだ。強いて言うなら、北の対に仕える高位の女房は真妖ばかりだが、西の対には半妖が多い」
「なるほど。だが、そこまでは、よろしい。このお館のうちでは、お館様のお心のままになさるのもよろしいでしょう。しかしこのたびのお招きは、おそらく太郎君をお世継ぎとお決めになってのご披露ではありませぬか。そこに次郎君を同席させるとは、どういうおつもりか」
「ここだけの話」
「なにか?」
「あの太郎君をお世継ぎに戴くのはどうか、という長老もおわす」
「それは、また!」
「今、お館様の横にすわっておいでの、滝川殿のおおせでは、太郎君は、真にわれらの一族とは、言いがたいお方だそうな」
「妖力は申し分ありますまい」
「それは折り紙つきだが、確かにあの方の母君は……我々一族とは相容れぬお方だ」
中将は軽くせきばらいをした。
「そうでしたな。そう言えば、童形のお姿を以前ちらりと拝見したが、太郎君は、故き北の方に瓜二つでした。みめ麗しさにかけては三国一」
卑しげな笑い声がもれた。
「もしや、本性も」
「これ……」
一人が表情を改めた。
「結局お館様は、太郎君、次郎君ともに、われらと異なる一族の女性を母に選ばれた。お館様にもしものことがあったとき、世継争いとなったならば、われらとしても、どちらにつくべきか決めかねるわ」
 そのときだった。女房が一人、上座の陰にあらわれ、何事かを主に告げた。軽く酔いのまわった表情で、主人は笑い声を上げた。
「来たか。せがれども」
 五色の糸で飾った妻戸が下位の女房たちの手であげられた。庭の彼方、立ち込める霧をすかして、渡り廊下が見えた。
 この広い館……霧に覆われた庭園の中に寝殿造りの建物がいくつも点在する広大な“院”の、春の館と呼ばれる主要な建物、その寝殿で宴は行われていた。秋の館から渡殿は池の上を渡るそり橋になり、春の館へつながっている。その上を、人影が近づいてきた。
 無冠の若者二人だった。
 烏帽子はつけず、一族の最高位に属する種族の特徴、白銀の長髪を梳き流しにしている。二人ともそれぞれ色調の異なる二藍の直衣と、たっぷりした紫の指貫を身につけていた。
 二人のうち、前にいるのが、この館の太郎君だった。腰に厳めしいこしらえの太刀を佩いていた。
 寝殿に続く西の対から、ためいきがもれた。一族の女たちである。慣例として宴に直接参加することはできないが、宴の間の隣、西の対の庇の間にさげた御簾の背後から見物していた。御簾の下から、色とりどりに染めた高位の女房たちの袖や裾がいくつも見えていた。
 館の若殿は、その御簾の前をゆったりと歩いていく。
 ひそやかなようで露骨な嬌声がいくつも漏れ聞こえた。だが、女たちの期待をよそに、この太郎君の傍らにはどんな美女をもってきてもつりあわないのではないか、と思わせるものがあった。太郎君は、母方から受け継いだと噂される冷たく整った容姿を惜しげもなく見せて、優雅に歩いてきた。
 後から来るのが、この館の次郎君だった。太刀を佩かず、神妙に目を伏せていた。
 広間の客たちの間から、別の意味でどよめきがあがった。烏帽子をつけない次郎君の頭部には、まごうかたなき犬耳が見えていた。
「よくも半妖が、堂々と」
「お館様もお館様だ」
「大事な御世子といっしょになさるとは」
一瞬、次郎君の足がとまった。その視線が正面を見据えた。
 上座にいた館の主が、息子の視線をとらえて、唇にひそやかな笑みを浮かべた。
 次郎君の足が再び動き出した。彼の目は、もう伏せられることはなかった。
「これへ」
播磨の大将の言葉は一族にとって絶対だった。上座にいた長老たちは、しぶしぶ退き、二人の若者に席を譲った。舞人のように優雅な足取りで太郎君は弟を連れて歩み寄った。鳥が翼を広げるように、大袖をふわりと広げて、彼らはその場にすわった。
「お呼びにより、参上いたしました」
 主は、どこか楽しそうに、目の前に座る息子たちを眺めた。
「ようまいった。ちょうど、じいどもに、次に打つ手をはかっていたところよ」
大将は笑った。
「じじいどもは、血の気が多くてな。すぐにも猿どもに戦をしかけよと言いよる。が、わしは一度、猿魅どもの誘いにのってみようかと思っている」
「お館様」
一人がとがめるような声をあげた。
「あやつらは、悪賢いのですぞ。みすみす罠にかかりにおいでになるか」
「だが、このままではらちがあかぬ。戦にかかる前に一度談合して、やつらが何を求めているのかを知っておくのもよかろうよ。場所は、小夜が丘」
大将は、くいと酒をあおった。
「そこでだ。約定により、供回りは二人までかまわないことになっている」
一族の者たちは、静まり返った。
 敵との話し合いに同行するということは、もしだまし討ちにあったなら、主人といっしょに殺されることを意味する。が、そのリスクを犯せば、一族のうちでも主人に近い立場を得ることにもなるのだった。
「それがしをお連れ下され」
即座に一人が言った。
「いえ、それがしがお供を」
すぐに大騒ぎになった。
 もしだまし討ちにあったとしても、この大将はおそらく一人でも悠々と切り抜けるはず。一族の、長への信頼は厚かった。
「まあ、待て。このたびは、息子たちを連れて行こうと思う。まずは、おまえだ、殺生丸」
太郎君が、顔をあげた。
「承知いたしました」
「これは、これは」
長老の一人が口をはさんだ。
「お館様もむごいことをなさる。このような、風にもあてぬように育てなされた若様をお連れになっては」
 あちこちから、忍び笑いがもれた。
「顔だけはなんとも綺麗なものだ。女狐のせがれが」
「見よ。あの細腰で、西国の雄、大将殿の後を継ぐ気か」
「花でも摘んでいるがよいよ。とても太刀は扱えまいから」
この一族は、高位になればなるほど、嗅覚聴覚が発達している。くさす声は主人にも、当の殺生丸にも聞こえているはずだった。だが、彼は耳をもたないかのような顔をしていた。かえって、となりにいる弟のほうが、険悪な目で声のあがったほうを見ていた。
「どうか、わがせがれどもを代わりにお連れ下され。多少は使いますゆえ」
客たちはまた声をひそめた。
「滝川殿か。売り込みのお上手な……」
「だが、滝川殿のお子方は、どれも手練といううわさだ」
「あちらに控えている、あれか」
庭に近い庇の間に、たしかにぎらぎらした目でようすをうかがっている青年たちがいた。筋骨逞しく、腕に覚えもあるような若者の姿だが、若い犬妖である。さきほどの陰口のなかで口汚い言葉は、そちらから出たもののようだった。
 大将は、だが、楽しそうに笑った。
「殺生丸、滝川のじいが、おまえでは不安だと申す。そこの庭でよい。見せてつかわせ」
そう言って、大将は、手を髪の元結にまわし、紫の紐を解いて差し出した。
 殺生丸は一礼した。父親の手から細紐を受け取り、その場で立てひざしてくるりとたすきをかけた。腕を動かす邪魔になる広袖が、きれいにたたまれて上半身に沿う。はっとするほど白い二の腕がのぞいた。
 太刀を手にして、殺生丸は階をおりた。白砂の広がる庭の前に彼は立った。
「用意のものを」
大将の言葉に、たちこめる霧が、静かに晴れていく。現れたのは、奇妙におどろおどろしい、岩の塊だった。
「ただいまこの庭は、摂津の国の青蛇岩とつながった。殺生丸、見事斬ってみせよ」
「……つかまつる」
つぶやくように言い、殺生丸は太刀の鞘をはらって正面に構えた。古代風の環頭を持つ、無反り両刃の刀だった。はっ、と短く気合を発し、じっと青蛇岩を見込む。
 宴の間から、おびえたようなつぶやきがもれた。純度の高い妖力が、目に見えるほどの勢いで高まっていく。半妖たちはふるえあがり、客はおろか、一族の長老格の妖怪たちでさえ、総毛立っているようだった。
 剣先が、軽く、ふれた。次の瞬間、殺生丸は一歩を踏み出しざま、一文字に斬撃を放った。
 妖力はそのまま刃となって、見上げるような岩の塊を切り裂いた。砂礫が細かく飛び散った。青蛇岩は真っ二つに割れて、片方がかたむき、地響きを上げて倒れこんだ。蛇の雑妖たちがあわてて飛び出し、そこいらを狂ったように逃げまどっていた。
 その狂態に目もくれず、殺生丸はきびすを返した。畏敬と恐怖のいりまじったどよめきが彼を迎えた。先ほど陰口をたたいた若い犬妖たちは、驚きのあまり杯を取り落とした者もいる。酒で膝をぬらしたまま、口もきけないでいるようだった。
「なんという、鋭さ……」
滝川殿と呼ばれた長老が、呆然とつぶやいた。大将はうれしそうに声を立てて笑った。
「さもあろう?自慢の世継だ」
自分の席へ戻った殺生丸は、たすきにした紫の紐を解いた。それを大将にさしだしたが、大将は手でおしとどめ、そばにいた小姓に何事か命じた。小姓はすぐに、何か長いものを抱えてきた。
「これをおまえに授けよう。わが牙の一つ、天生牙だ」
水浅黄の美しい錦の袋につつまれた刀を、大将は長子に与えた。殺生丸は、両手で受け取った。
「この刀の持ち主は、一族の生死をつかさどることになる。心せよ」
「承知いたしました」
後ろに控える一族の者たちから感嘆の声があがり、長老たちはお互いに顔を見合わせた。天生牙の持つ力の何たるかを知らない者は一族にはいない。このような形で、大将はこの若者を、自分の後継者と発表したのだった。
 大将は、おもむろに小姓の手から、もう一振りの刀を受け取った。
「そしてこれは、犬夜叉、おまえに与える」
その場に沈黙がおりた。
 犬夜叉はぽかんとしていた。さきほどまで彼は、まるで敵を付けねらうかのような視線で、兄の剣技をじっと見つめていたのだった。
 長老の一人が、あえいだ。
「お館さま、それは、もしや鉄砕牙では」
主は、にやりとした。
 そしてまた鉄砕牙を知らぬものも、一族にはいない。最強と仰がれるこの長の愛刀である。まさか、半分人間の血の混じった息子がそれを譲られるとは思いもよらず、一族の間からいくつも声がもれた。
「わが愛用の牙だ。受け取れ、犬夜叉」
犬夜叉の手が、地紋に菊唐草を織り出した韓紅の錦の袋に触れた。
「おれが?」
「そうだ」
犬夜叉の指が、白い緒をほどき、袋をすべらせた。鉄砕牙が現れた。
「使ってみるか?」
犬夜叉の顔が輝いた。
「ああ!」
 めんどうとばかりに直衣を脱ぎすて、鉄砕牙をわしづかみに、犬夜叉は立ち上がり、朱色の欄干を蹴って庭先へ飛び降りた。
 その瞬間だけは、妾腹の出生も半妖の宿命も、犬夜叉の喜びを翳らせてはいないようだった。強大な力を身に帯びる歓喜が、犬夜叉の全身から吹き上がった。
 二藍の直衣の下は、白の単。殺生丸のそれは肩口と袂に紫で亀甲を染めたものだが、犬夜叉のは胸から背にかけて瑠璃色の千鳥が飛ぶ。
 鞘から鉄砕牙が滑り出した。空気に触れたところから、使い手の妖気を得て一気に巨大化していく。
 小さく舌なめずりして、犬夜叉は地ずり下段に鉄砕牙を構えた。
 青蛇岩は、変容していた。大きく割り裂かれた中央から、丸い目が二つ見据えている。
「来いよ」
挑発するように笑った。その表情が、父親である大将によく似ていた。
 しゃっ、と音がしたのが早いか、巨大な蛇の首が現れたのが早いか。青蛇岩を住みかとする妖怪の長が、怒りを込めて妖気の渦を放ってきた。
「ちょうどいいや、礼を言うぜ!」
 まるで巨大な刀身を背中に隠すかのように犬夜叉は片膝を深く落としてうずくまった。蛇妖の放つ妖気をぎりぎりまで待ち、迎え撃つかのようにかまえ、そして、放った。
「巻き込めっ」
大きく振り切って叫ぶ。その声に呼応するかのように、一撃は蛇妖をからめとった。轟音が響いた。
 今度は砂礫どころではない、人の頭ほどある岩が八方へ飛び散った。広間の客には、広袖で頭をおおってその場に伏している者さえいた。その袖をとり、おそるおそる顔を上げた者は、小さく悲鳴をあげた。青蛇岩はあとかたもなくなっていた。
「そこまで」
何事もなかったかのように大将は言った。その傍らで殺生丸が、身を乗り出し、息を詰め、目を見開いて弟の技量を測っていた。
 鉄砕牙を手に、犬夜叉はうれしそうに庭から階を上がってきた。とちゅうで、先ほど殺生丸をくさしていた若い犬妖たちと目があった。彼らは、かちかちと歯を鳴らしてあとずさった。
「ふん」
つぶやいて通り過ぎる犬夜叉の背中に、一人が吐き捨てた。
「半妖!」
犬夜叉はにやりとした。
「それがどうした!」
高笑いして犬夜叉はずかずかと歩いていった。
 大将は、厳しい顔をしなくてはならないのだがどうにも笑いをおさえきれない、そんな表情で次男を迎えた。
「気に入ったか」
「ああ。これ、すげぇな」
何の屈託もない表情で犬夜叉は答えた。目が輝いている。
「まったくおまえは、いつまでも子どもだ」
わざとらしく大将はぼやいてみせた。
「このたびの談合に、供としておまえも連れて行きたいのだが、こうも礼儀知らずではこころもとないぞ」
う、と犬夜叉はつまった。横に座っている殺生丸が、脱ぎ捨てられた直衣をとりあげて、弟の膝に投げ出した。
「着ろ」
「……」
そそくさと犬夜叉は袖を通した。
「おまえの実力については、父は一度も心配したことはないが、行儀となるとはらはらする」
「おれは連れて行ってくれないのか?」
無意識に甘えるような目で犬夜叉は父親を見上げた。かわいくてたまらない、という表情で大将は犬夜叉のあごに触れた。
「すべて、兄の指図を仰ぐのだぞ?」
「ううっ」
犬夜叉は横目で兄に視線を走らせた。殺生丸は、じろりと弟をにらみつけた。勝手は許さんぞ……犬夜叉は肩を落とした。
「わかった」
「ならばつれていこう。おまえが二人目だ」
播磨の大将は、うれしそうに笑った。
「では、私たちは下がらせていただきます」
冷静に殺生丸は言った。奔放な弟をこれ以上のさばらせてはおけないと思ったようだった。
「もう行くのか?まあ、よい。ああ、殺生丸」
大将は腰を浮かせた息子に声をかけた。
「姿を改めたのはよい機会だ」
大将はにんまりした。
「本日より、妻問いを許す」
今度こそ、広間全体が大きくどよめいた。殺生丸は、結婚を許可されたのだった。