女勇者パエリア
パエリアは顔を上げ、真摯な眼差しを女主人に向ける。
「腕の立つのを、紹介してくれ」
ルイーダは、くっと小さく笑った。
「アンタって、……相変わらずね。もうそろそろ、イイ年頃の女だってのに」
「……」
こんな風に笑われるのが、パエリアには、死ぬほど、辛い。
顔を真っ赤にしてうつむくしかない。
(「ごはんの冒険」より アリアハン)
戦士ライス
ライスが魔物を押し退けてパエリアに近づいた。
「貸しなっ!」
横から腕を伸ばして、ひょいっとセロリを抱き上げる。
「へっ、この程度でへばってらんねぇよなぁっ!!」
そう言うライス自身もあちこちに大きな傷を負っていた。
「助かる」
パエリアは薄く笑った。
「行くぞっ!!」
(「ごはんの冒険」より ピラミッド内部)
僧侶カシス
何年も前からルイーダの酒場に通い、もしも勇者が旅立つ時は一緒に、と頼みこんでいた。
世界を救う勇者とは、一体どれだけの者なのか。
もし腑抜けた奴ならば、自分は絶対に認めない。旅など出来ないようにしてやろう、と。そう考えていた。
カシスには、あこがれて成り得なかった『勇者』。
もし勇者にふさわしい人物ならば、自分は命を掛けて尽くそう。人を殺めた事もあるこの手でどんな汚い事でもして助けてみせよう、と。
実際に会った勇者は、可哀相なほど生真面目で努力家な少女だった。
(「ごはんの冒険」より)
魔法使い セロリ
「今日は、助かった。……ありがとう」
パエリアは至極まじめに言った。
「……あ、当たり前だろ。オレ、ずっと」
……ずっとパエリアの為に。いつかパエリアを助ける為に。
セロリは修行を続けて来たのだ。もうずっと。
「……助けてやるからな、いつだって」
(「ごはんの冒険」より)
孤島ルザミの夜、セロリは言いかけます。戦いが終わったら、アリアハンで、いっしょに… …
まだ14歳のセロリの、せいいっぱいのプロポーズでした。
「いいじゃねぇか、こんな時でもねぇと、ぶん殴られるからな」
ニヤリ、と笑ってライスはパエリアの肩を抱く。
カシスは呆れ顔でため息をついた。
「ど、い…っ」
一体どういうつもりだ、と言いたのに、パエリアは軽くパニックを起こしてしまって言葉にならない。
振りほどこうにも、重症のライスの身体をこれ以上傷つけるようなマネも出来ない。
パエリアが顔を真っ赤にして困り果てていると、ライスは耳元にささやいてきた。
「あんたがあんまり可愛い顔するからだぜ?」
……まるでからかっているかのような。
「こここここの野郎…っ!!!!息の根止めてやる!!」
セロリは涙目になって杖を振り上げた。
「セクハラですよ、ライスさん」
今にもライスに殴りかかりそうなセロリの前に、カシスは割って入ってパエリアの腕を引きあげ、助け起こした。
ちぇ、とライスは名残惜しそうにぼやいてパエリアを解放する。
なんとか立ち上がったパエリアは、ライスに背を向けてうつむいてしまった。
「――…っ」
カシスは、ライスの前にしゃがみこんだ。回復呪文を唱えるために手をかざす。
唱える前に、にっこり微笑んで言ってやった。
「今度やったら本当に殺しますから」
…冗談には聞えなかった。
(「ごはんの冒険」より ライスは3人を逃がすために、一人戦って牢に入れられました。それを救出に来て……という状況です)
『私は竜の女王。神の使いです…。…魔王と戦う勇気が、あなたにありますか…?』
「……」
パエリアは瞳を見開き、竜を見上げた。
――勇気。
大魔王ゾーマの出現により、パエリアの中の勇気は一度、消えかけた。
しかし。
「戦います」
キッパリと言った。
「……勝って、本当の平和を…手に入れます」
死にに行く戦いではない。勝ちに行くのだ。
パエリアは勇気を取り戻していた。それは仲間達の力によって。(「ごはんの冒険」より 竜の女王の城にて)
アレフガルドに朝の訪れたとき、パエリアはライスとともに残ることを選びました。二人はラダトームから遠くない小さな島で幸せに暮らしているそうです。少女勇者の旅は終わりましたが、ご存知の通り、ロト伝説はここから始まります。