欲するはただ、汝が心

 とんぼはコミックス派ですので、最近のサンデーの”兄上皆勤賞”は、よそさまの感想でしか知らないのですが、いっとき”危ない”という情報を聞いて、ひやひやしていました。もっとも、最近の殺生丸人気を考えると(アニメで特別扱いだったり、映画でほとんど主役を張ったり)、この方がほんとに死んでしまって「犬夜叉」から消えてなくなる、という事態はほとんど考えられないと言っていいと思います。 しかし。

そうではない可能性も、実は過去にあったんじゃないでしょうか。

縁起でもないお話ですので、その方面のネタの苦手な方は、ここから下はご遠慮くださいませ。

 

 

 

 

われらが主人公、犬夜叉くんには、少年漫画の主人公としてやや奇妙な点があると、とんぼは考えていました。もちろん、"恋する主人公”としては、立派な王道を行く彼ですが、”戦う主人公”としては、ひとつ怠っていることがあるのではないでしょうか。

「パワーアップ」です。

サンデーさんではないですが、「努力と友情と勝利」が少年漫画の三大要素だとか。普通に考えても、戦いがさけて通れない主人公なら、強くなるための努力は不可欠でしょう。しかし、現実に犬夜叉自身は、パワーアップしていません。(鉄砕牙が代わりにパワーアップしています。というか、アビリティが増えています。)

その理由を考えてみました。つまり、もともとパワーアップが無理だ……ストーリーに最初から加えられた制約に四魂の玉という存在があります。そもそものことの起こりに犬夜叉が求めていたそのアイテムこそ、彼に究極のパワーアップをもたらすはずでした。が、そのアイテムがない今、パワーアップは不可能です。

じゃあ、どうしろと?実は「犬夜叉」には、このアイテム以外に、もうひとつパワーアップの方法が明記してありました。第4巻の雷獣兄弟のエピソードにある、心臓を食らう、というやり方です。

兄、飛天は、死んだ弟、満天の体から心臓を引きずり出し、食らうことで、弟の妖力を手に入れます。別に餌にしたわけではなく、これは飛天なりの、重い哀悼でした。

「あんちゃん、いつまでも一緒にいてやるからな…」(vol.4 p72)

このエピソードは、もしかしたら伏線なのではないでしょうか?もちろん、

殺生丸を死なせ、その心臓を食らうための

です。(上のセリフを頭の中で、犬夜叉に置き換えてみてください。)

本当に縁起でもない話ですいません。しかし、もし殺生丸が死ぬときが来るとしたら、その絶大な妖力は、よもや邪見に遺されるとは思えないのです。殺生丸の同意があるかないかはわかりませんが、犬夜叉が継承するのではないでしょうか。それによって、こと妖力に関しては、犬夜叉は大幅なパワーアップが可能となることでしょう。

もちろん、別パターンもあり。つまり、彼の心臓が別の存在、たとえば奈落に食われてしまったら、犬夜叉たちは一段と恐るべき敵とあいまみえることになります。

どちらにしても、物語が劇的に展開することは間違いありません。(この場合たいへんなのは、最強キャラ殺生丸をどうやって死なせるかですが、作者様はあらかじめ彼に弱点を用意しているように見えます。もちろん、りんのことです。)

ところが。

なぜかそのような展開はありませんでした。理由はいくつか思い当たりますが、その最大のものはおそらく、作者様のこのキャラに対する思いでしょう。

それと同時に、作者出版社の手を離れたところで起こった現象、つまり殺生丸人気が、そのような方向を阻んだのだと思います。もっと言うなら、りんがお話に登場することによって、殺生丸が、ただのパワーアップ用敵キャラから、独自の思いや複雑な背景をもつ、一人の”立っている”キャラへ変わっていったのではないでしょうか。

殺生丸ファンの皆様、ゆめゆめ、りんちゃんをおろそかになさいませんように。彼女は、そのあどけない手に、殺生丸の命さえも握り締めているのですから。

 

 

ここまでのこじつけ、暴言、まことに申し訳ありません。とんぼが作者様の構想をうかがい知る方法があるわけもなく、すべてとんぼが勝手に”こんな可能性もあるかな”と考えたことです。ご不快を覚えられた方、どうかお許しください。