ヘンリーのゲーム 1.悪魔神官エンド

 そこは赤黒い石材でできた正方形の広い部屋だった。正面中央の祭壇以外、調度らしいものはほとんどない。ただ床だけはむきだしの石ではなく、魔法文字と幾何学図形を組み合わせた文様の絨毯が敷き詰められていた。
 その上に十数名の奇怪な人影が祭壇に向かって正座し、額を絨毯につけるようにして拝んでいた。彼らの衣装はすべて同じ白いローブだった。
 祭壇の両側と壁の窪みでは太いろうそくが燃えていた。香草をしこんであるのか、薄い緑色の煙をあげ、奇妙に甘い匂いが漂っていた。
 額づいた者たちは、聞き取りにくい声で詠唱していた。
 それは邪神ミルドラースへの賛歌だった。そこはミルドラースに捧げられた世界一大きな神殿の奥の院の一部、邪教の教祖イブールを師と仰ぐ高神官たちの祈祷所である。
 「勇者が来た」。その第一報は、教祖イブールの治める大神殿全体を震撼させた。
 大神殿の表にある聖堂ではすでにラマダが出て勇者のパーティと戦い、破れたらしいとも伝えられた。知らせを受けて、警備を担当するシュプリンガーなどの竜人たちは鎧をつけ剣を携え、いっせいに迎撃に出た。
 イブールその人は神殿奥の院の教祖だけの小聖堂へこもり、邪神ミルドラースに祈っている。表の聖堂が突破されたとしても奥の院はそもそも迷路だったし、竜人に加えて蛇神の術を使うダークシャーマンやさまよう霊の塊であるエビルスピリットなどが分厚い警戒網を敷いていた。
 そしてついに、教祖の直弟子たる神官たちにも迎撃命令がくだったのである。
 香華たなびく薄闇のなか、陰々滅々とした詠唱が続く。やがて詠唱が途絶え、彼らは絨毯の上で跪いた姿勢から身を起こした。
「コレヨリ我ラハ、侵入者ノ排除ヘ向カウ」
一番祭壇に近いところにいた神官長がそう告げた。
 神官長が立ち上がると、白いローブはくるぶしまであった。ローブの正面中央には牙を剥きだした黒いコウモリの大きな形象が描かれている。それよりも不気味なのは、彼らが顔を持たないことだった。
 顔ごとすっぽりと白い布で被い、顔の中央にあたる部分に緑色の真球がはまっている。まったくの無表情で、話す言葉もくぐもって聞こえた。
「我ラノ神、みるどらーす様ニ栄光ヲ。いぶーる様ニ仇ナス者ドモニ死ヲ」
おう、おう、とこもった声が室内に反響し、祈祷所の壁の窪みに置かれたろうそくをゆらめかせた。
 彼らは「悪魔神官」として知られる、イブールの直弟子たちだった。長年の修行をやりとげた証として緑の魔球をつけた面布と緑の手袋を与えられる。自我を殺し、すべてを神に捧げた者のしるしだった。
 神官長は赤紫のマントを取り、さっと羽織って喉元を金のメダルで留めた。配下の神官たちもそれにならった。儀式めいた仕草で一人一人壁際に寄り、とげのついた鉄球状の武器、モーニングスターをおろして手に取った。最後のひとりは神官長のために、二振りのモーニングスターを取って彼に差し出した。
 神官長は無言で受け取り、両手にひとつづつ構えた。振り上げると、ブン、と空気が鳴った。
「各自散開。勇者ヲ発見次第、魔球ヲ使ッテ他ノ者ヲ集メヨ」
大神殿奥の院の守りが、こうして動き出した。

 純白に輝く天空の鎧をまとってはいるが、勇者はまだ幼かった。とほうにくれた顔であたりを見回した。
「お父さん、ぼくたち迷子になったみたいだよ?」
大神殿の正面は、白亜の石材で造られた荘厳な聖堂だった。だが、聖女マーサの姿を借りていた醜悪なモンスター、ラマダを倒して地下に進むと、様相は一変した。
 地下の巨大な扉を開けるとその奥にあったのは怪しい迷路だった。邪な魔力を封じ込めた赤黒い石畳の通路が延々と続く。時に短い階段や梯子によって高低差がつくられ、通路の上に通路があり、通路の下に通路がある。
 頭上は吹き抜けの大天井。しかしひとつ隣の通路には誰がいるかわからない。実際、曲がり角を曲がったとたん、シュプリンガーやダークシャーマンなどに何度も遭遇した。
 少年勇者とその双子の妹は、肩を寄せ合い、不安そうな顔で父を見上げた。
「大丈夫。ぼくたちは正しい通路を進んでいるよ」
「どうしてわかるの?」
「警備が厳重になってる」
紫のターバン、紫のマントのグランバニア王は、冷静な目で迷路を見定めた。
「このまま行こう。教祖を倒せば、お母さんを助け出せるからね」
子供たちはぱっと顔を輝かせた。
「うん、もうちょっとだね?」
「あたし、がんばる」
王は子供たちに微笑みかけた。
「いい子だね、二人とも。行こうか。ビアンカを助け」
そうつぶやき、グランバニア王ルークは視線を険しくした。
「友達の仇を討つんだ」
さっとマントを翻してルークは歩き出した。傍らにキラーパンサーが寄り添った。
 子供たちはお互いの顔を見合わせた。
 いつも穏やかで優しい父が、人が変わったような表情になることがある。それが、この大神殿の建設現場から逃亡するとき、父とマリアの身代わりになってここに残った友達、ラインハットのヘンリーのことを思うときだった。
 樽に乗り込んだルークとマリアの目の前で、なだれこんできた大神殿の兵士の剣にヘンリーは右の肩先を切り下げられたのだとルークは言った。
「何やってる、早く!」
それが最後の言葉だった。やはり瀕死のヨシュア、マリアの兄が樽を流れに蹴り込んだので、ルークとマリアは脱走できた。
 マリアは今も修道女として兄とヘンリーの冥福を祈り続けている。ヘンリーの思い出のためにルークはラインハットを乗っ取ろうとしたモンスターをスライムナイトのピエールと二人だけで征伐したが、強い憎しみは今も変わらなかった。
ルークがふと歩みをとめた。
「あの上はなんだろう?」
そこは入り組んだフロアだった。柱や壁、階段で細かく分かれた部分がある。その場所はフロアから長い階段を上がった先で、独立した祭壇のようなところだった。
「宝箱があるかもね」
「いってみようか」
真っ先にキラーパンサーが身を躍らせた。そのあとをルークが上がっていき、途中でさっと身構えた。
「番人か!」
階段の上にはやはり大きな宝箱がひとつ。その前に悪魔神官がひとり立ちはだかっていた。白いローブに赤紫のマント、両脇にひとつづつモーニングスターをかいこんでいる。両足を肩幅より広く開き、腰を落とし、顔をうつむけていた。
 子供たちが父に追いつき、それぞれの武器を構えた。
 悪魔神官が顔をあげた。表情のない一つ目は、緑の魔球。そこに嫌悪の表情を浮かべたルークが映っていた。
「お父さん!」
「落ち着いて」
とルークは言った。
「他に仲間はいないみたいだから、ザオリクは心配しなくていい。警戒するのはマホカンタだ」
子供たちの判断は素早かった。スクルトとバイキルトがルークを被った。
「ありがとう。下がってて」
ルークはドラゴンの杖を構えて対峙した。
 悪魔神官は両手にモーニングスターを掲げて襲いかかった。とげ付きの鉄球に比べるときゃしゃに見える杖は、しかしそれを防いでさらにはね返した。
「こいつ、強いよ、お父さん」
子供たちは父の実力を知っていた。むやみに殺しはしないが、変幻自在に杖を操り、モンスターに引けを取ることはめったにない。その父が、圧されている。二回攻撃のような早さで繰り出される二丁モーニングスターの乱舞に苦戦しているようだった。
 少年勇者は意を決した。天空の剣を構え、横合いから突きを入れた。
 こちらを見ることすらせずに悪魔神官はモーニングスターで天空の剣を跳ね上げた。
「プックル!」
反対側からキラーパンサーが襲いかかる。牙を避けてさっと悪魔神官が身を屈めた。
 三対一の乱戦は次第に効果を出してきた。悪魔神官が後ずさる。踵が背後の宝箱に触れた。そのときをルークは見逃さなかった。ドラゴンの杖が舞った。
「こいつ、右腕が弱点だ!」
左ほど高く腕があがらないのだ。わずかな差だが、ルークには十分だった。ドラゴンの杖は悪魔神官の右手から武器をたたき落とした。顎、胸、鳩尾と、稲妻の早さで突きが見舞った。
 悪魔神官は動きをとめ、がくりとうつむいた。左手の握りがゆるみ、武器がからんと床に落ちた。悪魔神官は宝箱の前にずるずると座り込んだ。
「やったね!」
少年勇者は剣を治めた。ああ、とルークは答えたが、視線は悪魔神官からはずれなかった。
「おまえ……どうして仲間を呼ばなかったんだ?」
答えはなかった。
「どうしたの?お父さん。宝箱開けてみようよ」
ルークはためらった。敗北した悪魔神官の前にひざを突き、じっと見つめた。
「何ヲシテイル。トットト行ケ」
初めて悪魔神官が声を発した。面布がじゃまになってよく聞こえなかったが、びくっとルークが身をふるわせた。
「君は誰だ」
答えを待たずに、ルークは悪魔神官の顔を覆う布を引きはがした。悪魔神官は弱々しく身じろぎしたが、逆らうことはできなかった。
 現れた顔は、人間のそれだった。青ざめた顔色、緑色の髪。
「ウソだ」
とルークはつぶやいた。ルーク自身も、血の気が引いていた。
「まさか、ヘンリー?」
死んだはずの友達の名を、ふるえる唇でルークは呼んだ。
 悪魔神官だったヘンリーは、なんとか目を開けた。
「ソウダ」
「どうして!」
「生キルタメニ、魂ヲ、魂を売ったのさ」
とヘンリーはつぶやいた。最後の突きで、神官のローブが裂けていた。その胸の部分を自分の手でつかんで引き下ろした。裸の胸には奴隷のしるしの焼き印が捺されていた。
「おまえが生き延びたのを確かめるまでは、死ねないと思った……」
ルークは早口でその独白を遮った。
「待って、すぐにホイミで直すから。ラインハットへ帰ろう!」
「直らねえよ。おれ、もう、人間じゃないんだ。最後に会えたからもう、いい」
魂を売った、とヘンリーは言った。モンスター化した以上、戦闘で負ければ成れの果ては決まっていた。手足の末端部分から、その体はさらさらと砕け始めた。マスタードラゴンの加護がない者の宿命だった。
「おまえ、強くなったな。パパスさんの遺言、がんばれよ」
すべて砕け散る前に、やっとそれだけ言葉を発して、ヘンリーだった悪魔神官は消え失せた。
 空中できら、と何かが輝き、ちゃりんちゃりんと音がして床の上にゴールド金貨の小さな山をつくった。悪魔神官を倒した報酬の117ゴールドだった。
「ヘンリーっ!」

 誰かの手が自分の肩をつかんでゆすっていた。
「ルーク、どうしたの?」
ルークはあわてて目を開いた。真上から妻のビアンカがのぞきこんでいた。
「あ、」
「夢を見たの?」
ルークはベッドの上にゆっくり身体を起こし、片手で自分の顔に触れた。まだ涙で濡れていた。
 寝室の扉を誰かがノックした。
「何かございましたか」
夜間の当直兵士らしい。自分があげた悲鳴を聞いてやってきたのだとルークは悟った。
「何でもないわ。大丈夫よ」
ビアンカが声をかけると、兵士は失礼しましたと言って去っていった。
 あとには深夜のグランバニア城の静寂が残った。
「どうしたの?」
広い寝台に座ってルークは首を振った。
「嫌な夢を見たんだ。ヘンリーが」
「ヘンリーさんがどうかして?」
夢の中でヘンリーを殺した、といえなくて、ルークは口ごもった。
「……死んだ夢を見た」
「もう。ヘンリーさんならこのあいだラインハットへ行ったときぴんぴんしてたじゃない。マリア奥様と仲良しで、デール様からも国民からも厚く信頼されて。大丈夫よ」
ビアンカはそっと傍らにあったタオルを手渡した。ルークはそれで顔を拭いた。気がつくと背中まで寝汗をかいていた。
「ありがとう。ごめんね、起こしちゃった」
ビアンカはほほえんだ。
「気にしないで。まだ夜明け前よ。寝ましょう」
「……うん」
ルークはもう一度布団の中へもぐりこんだ。
「心配なら、明日見に行ってみるといいわ。子供たちもコリンズ君と遊びたいでしょうから連れて行きましょう」
「そうだね。そうする」
胸騒ぎを抱えたまま、ルークは無理に目を閉じた。
「お休み」

 数日後、ルークは一人で天空城を訪ねていた。マスタードラゴンにお目にかかりたい、とルークが言うと、天空城の有翼の兵士たちは丁寧に案内してくれた。
世界を見守る天の竜が現れるまで、ルークは巨大な玉座の前に立ち、ため息混じりに天井を見上げた。マスタードラゴンに何をどう聞けばいいか、自分でもよくわからないのだった。
 あの夢を見た次の日、ルークは家族と一緒にラインハットを訪れた。ビアンカがマリアと、子供たちがコリンズと話し込んでいるあいだ、ルークは親友の無事を存分に確かめた。
「おれが死んだ?」
宰相執務室の大きな机の前に座り込んで、ヘンリーは口角をあげて妙な笑い方をした。
「もうひと月この状態が続いたら、正夢になるかもしれないぜ?」
なんでもラインハット建国以来の大疑獄事件が発覚し、犯人追及のためにラインハット正規軍が盛大に動いているらしい。次々と大物が逮捕され、事件の規模はうなぎ登りにでかくなっているそうな。
「ちくしょう、あいつら、このおれの目をかすめてうまいことやりやがって!」
机に山積みの証拠書類を平手でたたき、ヘンリーは片手を腰に当てて宣言した。
「徹底的に追及してやる。おれをだしぬこうとした一件は高くつくぜ~」
死ぬほど忙しいわりには、けっこう楽しそうだとルークは思った。
「ま、君が元気でよかったよ。じゃましたね」
に、とヘンリーは笑った。
「じゃまじゃないさ。茶でも飲んでいけよ、おれも一休みするから。おまえら、おれが帰るまでにここまでかたづけとけよ?」
ヘンリーが振り向いてそう声をかけると、文官、秘書、従僕その他が一斉に青ざめた。その顔を意に介さずに、ヘンリーはにこにこしていた。
 というわけで、ルークは安心してもいいはずだった。だが心の底で何かがしきりに訴えている。助けなければ、と。
だが、いったい、何を?
「マスタードラゴンがお出ましになります」
天空城の兵士がそう告げた。まもなく、金色の鱗を輝かせた竜が堂々と現れ、ぐっと背を伸ばしてルークを見下ろした。
「ようこそ、悩みある者よ」
ルークはじっとマスタードラゴンを見上げた。
「悩んでいるように見えますか?」
「見える。わしをあなどるでない」
と、世界を見守る竜は答えた。
「自分でも取るに足りないことだとはわかっていますが」
「本当にそう思っているのなら、ここへ来はすまい。話してごらん」
「……夢を見ました。恐ろしい夢を」
ルークは話し始めた。夢の中で子供たちと大神殿の奥へすすんだこと。そこで宝箱を守る悪魔神官を倒したこと。そのモンスターは実は、ルークを逃して死んだはずのヘンリーだったこと。
「最初からヘンだとわかっていました。だってヘンリーはぼくといっしょに脱出し、現に今もラインハットでちゃんと生きている。それなのに夢の中のぼくはヘンリーが脱出の時に死んだと思っている」
とルークは言った。
「二重におかしいんです。ぼくは……納得してしまった」
「何を」
ルークは言いよどんだ。
「もしヘンリーがあのとき一人で大神殿に残ったとしたら、きっとしぶとく生き残っただろうということをです。奴隷身分から管理する側になり、悪魔神官に加わって神官長まで出世するくらいのことはやってのけたでしょう。だから」
ルークは言葉を選びながら話を続けた。
「なんだか妙に現実的な気がする。まるで、あの悪夢が、本当にあり得た世界のひとつだったような」
マスタードラゴンは、ふん、とつぶやいた。
「人の身でそこに気づくとはな」
天空城の巨大な玉座にマスタードラゴンはゆっくりと身を預けた。
「確かに、ルークよ、現実はひとつではない。あり得た現実はいくつもある」
縦長の虹彩を持つ瞳がルークを見下ろした。
「たとえばおまえがビアンカではなくフローラを選んだ世界。たとえばエルへブンのマーサがグランバニアへ行かなかった世界。そのような状態を、おまえは考えたことがあるか」
ルークは驚いて竜を見上げた。
「そんな、それではうちの子が、勇者アイルが生まれなくなってしまいます!」
「勇者は生まれる。だが、"勇者アイル"ではない。そして、そのような勇者は、ミルドラースを倒すには力が及ばない場合があるのだ」
マスタードラゴンはうつむいた。
「グランバニアのパパスとエルヘブンのマーサの血を引いたおまえと、天空人の末裔である花嫁との間に生まれた男子でなくては、わしにとって必要な勇者にはならぬ」
はっとルークは気づいた。
「マスタードラゴン、あなたは、じゃあ、見て来られたのですか?力不足の勇者たちの戦いを、いくつも、いくつも」
そこに生まれたさらなる可能性をルークは口にしてしまった。
「そしてミルドラースを倒せなかったら、最初からやりなおした」
マスタードラゴンはうつむいたまま動かなかった。
「あなたは十分な力量の勇者を手に入れるために、それまで存在した世界を、見捨てたのか」
まぶたのない丸い目がルークの方を向いた。は虫類の顔をした神は、明瞭に答えた。
「しかり」
その一言にこめられた覚悟が、ルークの口を封じてそれ以上の非難を呑み込ませた。
「この時の流れの中で、わしは試行錯誤してきた。わしの力では如何ともし難い悪がこの世を被うとき、わしは時間さえも見守る力を行使して悪を滅ぼすことに成功するまで試行を繰り返す。絶対に失敗できないのだから」
ルークは議論しようとして、力なく拳を握り、また開いた。
「ルークよ、おまえこそわしの試行錯誤の上にできあがった最良の成果なのだ。パパスとマーサの結びつきは絶対に必要だった。そしておまえがくぐり抜けてきたいくつもの不幸は、ルークをルークたらしめるために絶対に必要だった」
「父さんが殺されたこと、僕とヘンリーが奴隷になったこと、サンタローズが滅びたこと、僕とビアンカが石にされてしまったこと。それが全部?」
マスタードラゴンはうなずいた。
「ひとつ欠けても今のおまえにはならぬ」
ルークは片手の指をぐっと伸ばして顔を覆い、身体のふるえを抑えるために数度深く呼吸した。