ナイトプライド 1.派手にぶっとんだけしからん奴

 プロローグ:騎士の誇りを取り戻せ

 老人は、波の音に耳を澄ませた。ソルティコの浜辺は彼が幼子だったころと同じ波の音を今日も響かせていた。
 数か月前のこと、大空に悠々と浮かんでいた命の大樹が轟音を上げて墜落し、炎の熱風と燃え盛る岩が世界を滅ぼした。
 恐ろしい出来事だった。
 しかし、それでも人々は日々の営みを再開し、生きようとする努力をやめない。ここ、ソルティコでも被害が出たし、空は今もどんよりとしている。だが、聞くがいい、波の音は今も変わらないではないか。
 老人が杖にすがって立っているのは、ソルッチャ運河にかかる橋に近いソルティコ市の門の前だった。
 町の方から数名の旅人がやってきた。男ばかりの四人連れだった。その中の二人に老人は目を惹きつけられた。
 一人は七尺ばかりの上背のある大男で胸板が厚く、腕や肩についた筋肉から明らかに戦士とわかる。得物は両手持ちの大剣らしく、背中に斜めに負っていた。紫がかった長めの髪、同じ色の顎髭の男で、厳つい顔つきをしていた。
 もう一人はやや小柄だがすらりとした長身の男だった。どういうわけか背中に大きな飾り羽を背負い、奇抜な衣装を身に着けている。一人目より目立たないが、よく鍛えた身体つきをしていた。そして、はではでしい衣装に負けないほど華やかなオーラをまとう、目鼻立ちのはっきりした顔の男だった。
 飾り羽の男と、目が合った。彼は口元をほころばせた。
「お久しぶり、ベネディクトさま」
知り合いだっただろうか。道理で見覚えがある、とベネディクト老人は考えた。
「この年寄りをご存知か。なら、どうか話を聞いとくれ。メダチャット地方にある怪鳥の幽谷は悪魔の騎士という魔物がおってのう。ヤツらは以前名のある騎士じゃったが魔物になったことで誇りを失い悪さをはたらいているようなのじゃ。騎士の名を冠するのに騎士の風上にも置けん」
 四人の旅人のほかの二人は、年端もいかぬ少年と、飄々とした老人だった。その二人はどことなく顔立ちに共通点がある。家族、おそらく祖父と孫なのだろうとベネディクトは思った。
「ここはガツンとこらしめてヤツらに騎士としての誇りを取り戻させねば……。ふむ、そうじゃな。おぬしらならばあの誇り高き連携技を使うことでそれも可能かもしれん。なあ旅の方、旅の途中ですまんがひとつやってもらいことがあるんじゃ。わしの頼みを聞いてくれんか?」
大男の戦士と奇抜な衣装の男は顔を見合わせた。大男はにやりとして両手の指を組み合わせ、ボキボキと鳴らした。
「そうだな、やってみるか?」
派手な衣装の男は気取ったしぐさで片手を胸に当て、横目で大男をちらりと見た。
「パーティ復帰の手ならしにちょうどいいかしら」
彼は振り向いた。
「どうかしら、イレブンちゃん?」
問われたのは、少年だった。
「メダチャット地方は素材が豊富ですから、立ち寄るのは歓迎です」
「じゃ、きまりね!」
「おや引き受けてくれるとはありがたい。とある誇り高き連携技の名は」
と言いかけたとき、派手な衣装の男がすっと上体を折って人さし指を唇に当て、顔を近寄せた。
「だいじょうぶ、言わなくてもわかってるわ」
くすりと微笑んだ。大きな目、通った鼻筋のその顔をどこで見たのか、やっとベネディクト老人は思い出した。
「よく覚えていたの、坊や」
かつての“坊や”は、うふふ、と笑った。

第一話 派手にぶっとんだけしからん奴

 ごうごうと音を立てて荒野の中をソルッチャ運河が流れていく。運河には立派な石橋がかかっていた。かつてこのプワチャット地方を支配した古代王国の遺産の一つだった。石橋は古色を帯び、細かい彫刻はすり減っていたが、それでもメダチャット地方とプワチャット地方を結ぶ大事なルートとして今も機能していた。
 橋が見えた時点で、対岸のプワチャット地方から何か所か薄く煙があがっていた。数か月前の、命の大樹が墜落した一件はロトゼタシア全土に厳しい爪跡を残していた。中には燃え盛る火山弾のために一村まるごと姿を消したところもあった。
「むう、北ほどではないが、ここもだいぶやられたようじゃな」
ユグノアの先王、ロウは水音を聞きながらそう言った。
 実はそれよりも恐ろしいことも起きたのだと、デルカダールのグレイグは知っている。ウルノーガなる魔物が勇者の力を奪い、それによって魔王が誕生した、と。
「困っている人がいるかもしれません」
当の、力を奪われた勇者イレブンが、前方を指した。
「ひとつプチャラオ村に立ち寄って、ようすを見るとするかの」
イレブンの祖父ロウは、意欲的な表情だった。
 ロウもイレブンも、諦めてはいない。冥府におもむいてまで新しい技を会得し、魔王に立ち向かおうとしている。グレイグはうなずいた。自分はどこまでも勇者を守りぬく覚悟だった。
「お?誰かいるようじゃ」
三人は運河にかかる石橋の上にさしかかっていた。
 橋の向こうは、最初、二人の男がいるように見えた。衣服から見て一人は明らかにこのあたりの住人だった。だがもう一人は、よく見ると長い尻尾を持ち緑の毛皮に包まれていた。その怪人は、とら男の上位種、ベンガルだった。村人は尻もちをついている。ベンガルは鋭い爪の前足をかざして、今にも攻撃しようとしていた。
「むっ、旅の者が魔物に襲われている!」
グレイグは背中の大剣を抜いた。
「おいイレブン、助けに行くぞ!」
橋の上を走りだしたとき、グレイグとイレブンは思わずたたらを踏んだ。
――音楽?
まるでサーカスのような、心を浮き立たせる音楽が風に乗って近づいてくる。
「これ、聞いたことがある」
イレブンがつぶやいた。グレイグたちは辺りを見回した。ベンガルも驚いたらしく、きょろきょろしていた。
 プワチャット地方は、周囲を岩山に囲まれている。一番高いのはプチャラオ村のある奇岩の塊だが、その一部が石橋のそばにせり出している。
 イレブンがせり出した大岩の上を指した。
「グレイグさん、おじいさま、あれです!」
グレイグは指の先に目を凝らし、あっけにとられた。
 やってきたのは、実ににぎやかな集団だった。恐ろしく派手な神輿の周りを、お祭りのようなかっこうの男たちが取り巻いていた。緑のチュニックの上に赤い上着だけでも目に鮮やかだというのに、腰の後ろにかなり長い真っ赤な羽を五~六枚とりつけている。ある者は笛、ある者はマンドリン、ある者は太鼓をならし、楽器を持たない者はおもしろおかしく腰を振りながら踊っていた。
 中央の神輿は、輪をかけて豪華だった。白馬を六頭立てにした戦車のような外観で下部に大きな車輪があり、上は半円形のステージになっていた。ステージの背景は金の星で留めつけた赤と緑の巨大な羽扇のように見える。白馬にもステージにも背景の羽にも、きらびやかな金の飾りをちりばめていた。
 どんな大スターならこんなド派手な舞台に立っても見劣りしないというのか。その答えは、両手に持った二枚の羽扇で顔を隠した長身の芸人だった。太い縦縞にポンポンをたくさんつけた道化衣装、黒と薔薇色の二重コステイロ(背負い羽根)、これまた豪華な水色の羽飾りを赤い宝石で留めた金縁の黒いヘルメットの、その男。
 二枚扇をさっと広げ、彼はポーズを取った。
「シ、シルビア!」
とイレブンが叫んだ。
「知っているのか、イレブン?」
グレイグの見るところ、イレブンは真面目な性質で、日ごろ口数は少ない方だった。本人は抑えようとしているようだが、その口元にじわりと笑いが浮かんだ。
「はい……ああ、シルビア、変わってない……」
イレブンは驚いてはいたが、同時にとても嬉しそうだった。
 シルビアと呼ばれた男は片手に持った羽扇をバサッと下して指さした。
「そこの悪い魔物ちゃん!無垢な民を襲うのはやめなさいっ!」
――魔物でいいだろう、魔物で。なぜ魔物にちゃん付けするのか。
あっけに取られていたベンガルは、どうやら我に返ったようだった。自分の獲物にあらためて向き直った。
 シルビアは眉を釣り上げた。
「……やれやれ、お仕置きしないとわからないようね」
二枚扇をかざしてシルビアは神輿の上からまっすぐに跳んだ。
「とうっっ!!」
左右の扇をモンスターの上で斜めに交差させて振り下ろした。
 グレイグは眼を剥いた。これだけの落差、これだけの距離を跳ぶには、どれだけの鍛錬をやったものか。
 隣でくす、とイレブンが笑った。
「ぼくはシルビアが、サマディーのサーカステントから城の前の広場までジャンプするのを見たことがあります。まるで大きな鳥のようでした。サーベル片手に飛び下りて砂漠の魔蟲の背面に正確にトドメを刺していました」
「まさか。ただの旅芸人にそんなことが」
できるものか、という言葉をグレイグは飲み込んだ。
「……ぐはっ!」
 今回も狙いは確かだったらしい。背中にX字型の傷をつくってベンガルは倒れた。
両手の扇を振り切って残心の気位のまま、シルビアは着地姿勢を保っていた。ベンガルが地に臥すと、シルビアは二枚扇を見事な所作で捌いて得意げに顔を上げた。
「こいつ、何者だ」
思わず声に出してしまった。
「この顔を知っている……」
ふぉっふぉとロウが笑った。
「そりゃそうじゃろう。おぬし、命の大樹であやつを一度見ておる」
それは、ウルノーガが勇者から力を奪い取ったあの破滅の時のことだった。
「いや、その、私はホメロスとウルノーガにばかり気をとられておりましたので」
ロウは人差し指を振った。
「そもそも天下に名高い旅芸人のシルビアじゃ。わしとて放浪の旅の途中に姫と一緒にステージを見たことがあるぞい。グレイグ、おぬしおおかた、シルビアのデルカダール公演のときの呼び込みチラシでも見たんじゃろうて」
「おお、そうですか。芸能にはとんとうといもので」
申し訳ない、という言葉は悲鳴じみた歓声にかき消された。
 キャ~っ!!と黄色い声が上がった。ド派手軍団の若者たちがシルビアめがけて駆け寄ったのだった。
「カッコイイ~っ!!」
しかし、とグレイグは思った。なぜ内股で走る?なぜ両手を拳にして口元を隠し、きらきらした眼で見上げる?
「さすがはオネエさま~っ!!なんて優雅な身のこなし!!美しいわん!!」
見事な一撃だったのは認める。だが、なぜ、“わん”?
 あっちこっちから起こる称賛の声に、シルビアはいちいち手を振り、キスを投げて応えていた。
 シルビアの視線がこちらを向いた。
 まぶたがぱちぱちと開閉した。
 シルビアが目を見開き、大きな両手で自分の頬を抑えた。
「……あら」
片手で眼を抑え、派手な動作で天を仰いだ。
 なぜか後ろ向きでつつつっと接近して、横を向いた。
「……ヤダ」
いきなり間合いを詰め、両手の人さし指でイレブンの顔を指した。
「もしかして……」
大きな口が、にまぁと笑いの形になった。
「イレブンちゃんじゃないっっっ!!!」
シルビアは、ぎゅうっとイレブンを抱きしめた。イレブンの方も、うれしそうに抱き返していた。
――信じたくない。このぶっとんだ言動の男が、勇者のパーティの一員だなどと、信じたくないぞ俺は!
「……おい、なんだ、コイツらは」
それでもグレイグは聞かずにはいられなかった。
「イレブンの知り合いか?いったい何をしているのだ?」
 今にもイレブンにほおずりしそうなシルビアが顔を上げた。
「なによ~見てわからないの?決まってるじゃな~い!」
さっとイレブンから離れてシルビアは二枚扇を手にした。
「世界に~~~」
すかさずド派手軍団がドラムロールをつけた。
「笑顔を取り戻す!!」
なぜか神輿の前で全員がポーズをつける。その前に立ってシルビアは二枚扇を大きく広げた。
「そんなワケで暗い世界に光を照らすためアタシ世界各地を練り歩いて世助けパレードをしていたの」
シルビアは両手を広げた。
「この子たちは大切なナカマたち♪アタシに共感して旅の途中でパレードに加わってくれたのよ!」
この子たちというのが派手な衣装の若者たちだと、ようやくグレイグは理解した。
「ロウさま、もしや、ソルティコで聞いた、悪魔めいた集団というのはこいつらなのでは!」
「あ~、うむ。ま、見た目がこれじゃ。多少うさんくさく見えても仕方あるまい」
「やはりうさんくさいですな!」
グレイグが断定するとロウはにやりとした。
「楽しそうでよいではないか。おぬしあいかわらず頭が固いのう」
 顎の前で指を組み合わせ、きらきらした目でシルビアは言った。
「……それにしても、あんなことがあったのにふたりとも生きてるなんて奇跡よね!イレブンちゃんとまた会えて感激だわ!」
ぽてぽてとロウが近寄った。
「それにロウちゃんも!」
「いやいや、世助けパレードとやらにはたまげたのう!わしもずいぶん長く生きとるがこんなものは初めて見たわい!さすがシルビアじゃよ!」
「アラ、うれしいこと言ってくれるじゃない」
シルビアは羽扇を広げて貴婦人のように顔の前にかざした。
「世助けパレードは、最初はアタシひとりだけだったけど、いろんな場所でみんなを笑わせているうちにパレードに参加したい人が集まってきたの」
イレブンは信頼を込めてシルビアを見上げた。
「ぼくもシルビアが無事でうれしいよ。ぼく、あのとき大樹で……」
言いかけたイレブンの髪をシルビアはそっと撫でてささやいた。
「積もる話はあとにしましょう。今はアタシ、ただただうれしいの」
 グレイグは、その横顔を穴が開くほど見つめていた。体格からして男だということは間違いない。だが長いまつ毛の大きな目を優しく細め、つややかな唇をかすかに開いて甘やかにささやくその顔に、グレイグはやはり見覚えがあると思った。
 先ほどベンガルに襲われていた男はやはりプチャラオ村の住人のようだった。バハトラ、と彼は名乗った。ひとまず全員でバハトラをプチャラオ村へおくっていくことになった。
そこまで決まったとき、片手の指をゆるく握って振りながら、シルビアが話しかけた。
「……ねえイレブンちゃん、これからのことはあとで考えるとして……」
親指と人さし指を少し離してシルビアはイレブンの眼前に掲げた。
「ちょこっとだけアタシたちの世助けパレードにつきあってみない?」
となりでロウが手を広げて停めなかったら、グレイグは怒鳴りだしていたかもしれない。
――きさま、勇者をなんだと思っている!
ちらっとイレブンがグレイグを見上げ、申し訳なさそうに小声でつぶやいた。
「あの、ダメかも」
シルビアは明後日の方を向いてバサバサと羽扇を振った。
「そんなこと言っちゃって~!ホントは好奇心でウズウズしてるくせに!ンも~、恥ずかしがり屋さんなんだから!」
イレブンの方に残した手も、ひらひらと動いていた。
「それじゃあ、新しい世界の扉を開くわよ!ちょっとこれ着てみて!」
これ、というのは、神輿をとりまくド派手軍団の衣装、の色違いだった。白タイツ、白チュニックの上に金の刺しゅう入りの紫のベストを重ね、さらに背中に紫の背追い羽根がついている。よく見ると、タイツはサイドに紫のダイヤ模様がつけてあった。
 本当に着るヤツがあるか、とグレイグは思ったが、もともと色白で人目につくほど顔立ちの整った美少女顔の勇者は、この、派手なデザインのわりに色数を抑えた衣装が驚くほど似合った。
「キャ~ッ!ステキ~ッ!アタシの目に間違いはなかったわ!」
さきほど内股でシルビアに駆け寄っていた若者たちが、また一斉にイレブンに寄ってきて両手を握り合わせ、憧れの目で見つめてきた。
「地味かと思ったけど、清純ぽいとこがまたいいじゃな~いっ」
「さっ、笑顔笑顔。可愛いお顔はスマイルよっ」
イレブンもまんざらではなさそうな顔だった。
「グレイグ、魂のぬけたような顔になっとるぞ?」
とロウが尋ねた。
「……………………」
おまえらそれでも男かっ。チャラチャラしたかっこうの上に口から出る一言一句、すべて女々しい!俺の部下だったら絶対に許さんところだ。だいたいシルビアとかいうやつ、おまえがそもそもこいつらを妙なふうに染めたのがけしからん!俺は断じて……。心中にほとばしった抗議をグレイグは舌先から出る前になんとか呑みこんだ。
「……すみません。シルビアという男となぜパレードをすることになったのか……。いまだに状況が飲み込めず……。何はともあれ仲間のひとりシルビアが見つかってよかった、としか」
しどろもどろにグレイグは応えた。
「よいではないかっ」
ロウは笑い飛ばした。
「十年若ければわしもパレードに参加したかったんじゃがのう」
ロウの目がきらりと輝いた。
「いや、まだ遅くはあるまい。わしもイレブンには負けておれんし、秘伝のドゥルダ踊りで宴に参加するぞい!」
「ロウさま!」
実はユグノア王家はお祭り体質だったのだろうか、と混乱しながらグレイグは考えた。
「みんな~っ!!この子がアタシと一緒に冒険していたかの有名なイレブンちゃんよっ!!」
シルビアが叫ぶと、パレードボーイズがまたわらわらと寄ってきた。
「アタシ、アルマンていうの。この子はレオン。わからないことがあったら聞いてね?」
「こんなかわいい子がナカマになってくれるなんてうれしいわっ」
アルマンは茶色の髪を横分けにして前髪をおろした若者、レオンは紺色の髪に紫のバンドを巻いて羽を一枚さしたくりくりした目の少年だった。
「あ、その、よろしく」
とイレブンは応えた。
「あの、こっちはぼくのおじいさまで、こちらはグレイグさんです」
ロウはにこにこしていた。
「楽しそうでええのう。今、わしも若ければパレードをしてみたいと言っておったんじゃ」
キャー、と声が上がった。
「話せるおじいちゃま、ステキ」
「おひげ、かっわいい」
「若さなんて、気の持ちようで変わっちゃうものよ!いっしょに踊りましょ?」
と言ったのは、どうやらパレードボーイズ最年長らしい男だった。金髪を七三にして、なかなか鋭い目に片メガネをかけている。
「ジョフロワちゃん、あいかわらずいいこと言うわね!」
とシルビアが言った。
「ロウちゃんの衣装、見繕っておいてね」
ふぉっふぉっとロウが笑った。
「よろしく頼みますぞ」
グレイグはあわてた。
「ロウさま、まさか本気で」
ロウはもとよりシルビアもパレードボーイズも、グレイグの意見に、はなもひっかけなかった。
「すいません、グレイグさん。ちょっとだけだから」
すまなそうに、だがうれしそうにイレブンが言う。グレイグは肩を落とした。
「まあ、お前がいいなら、俺はかまわんが」
グレイグは拳をあごにあてて考え込んだ。
「あのシルビアとかいう者、どこか引っかかる。ずっと昔に会ったことがあるような……」