4.女子相続人

 さて紋章学上重要な概念のひとつに「女子相続人heiress」というのがあります。家名を継ぐべき男兄弟のいない娘のことで、女子相続人を妻とした男は、彼女の生家の紋章を自分の紋章に組み込む義務を負います。(これもその国によっていろいろあるらしいですが。)

★上記に関して補足:それなりの家系同士の結婚では、紋章の組み込みはおこなわれるそうです。女子相続人と結婚した場合、妻が死亡した後も、夫の家系の紋章から妻の生家の紋章をのぞいてはいけない、ということになっているそうで。

 ドラクエではローラ姫がまさにこれにあたります。あとは、DQ2のムーンブルグの王女、4のモニカ姫、それから7のグレーテ姫、そしてリーサ姫もいまやグランエスタードの女子相続人です。(追記 当然ながら8のミーティア姫も含みます。)

 さてローラ姫の生家、つまりアレフガルドの支配者ラルス王家の紋章はどんなものでしょうか?

 高屋敷英夫先生のオフィシャルなドラゴンクエスト小説によると、ラルス王家の紋章は「天翔の獅子」とか。ここで言う紋章はエンブレムのことだと思いますので以下のようなコートオブアームズを作ってみました。

妻の生家の紋章ラルス王家の紋章King Rals 16th of Alephgard
金の地に黒の後ろ左片足立ちの獅子(lion rampant)と赤の太陽

夫の紋章ロトの紋章Aleph, the Dragonslayer
青の地に金のスプレッドラーミア 金の縁取り

二つ以上の紋章を一枚の盾に組み込むことをマーシャリングmarshallingというそうです。やり方はいろいろあるようですが、代表的なものとしては、以下の通りです。

インペイルメントによる組みこみ
マーシャリングのひとつ、インペイルメント(impalement)によるローレシア王家の紋章 左側(盾を持つ人からすれば右側)に、主筋の紋章が来る。

クォータリングによる組みこみ
マーシャリングのひとつ、クォータリング(quatering)によるローレシア王家の紋章 四つに分けたパート(=「クォータ」)には順位があり、主筋の紋章は最優位の第一クォーター(左上)とその対照の第四クォーター(右下)にくる。

 しかし実際問題として(?)ローレシア王家の盾に天翔の獅子はありません。なぜでしょう?って、そういうゲームの設定なんであたりまえなんですが。が、強いて理由を見つければ、こんなものではないでしょうか。

 紋章を作るとき、新しい領土ができるとその土地を示すエンブレムなどを組み込むことがあります。また、すでに奪われた領土についても、所有権を主張するために組み込んだエンブレムをはずさないことがあるそうです。

 ならば。

 ローレシア王家の紋章にアレフガルドを示すエンブレムがないのは、アレフガルドに対して領土的な野心を一切持たないという主張ではないでしょうか。おそらく、ローラ姫の強い意志で……